今日から『バカ』になる(致知23年11月号)
月刊致知は今年で創刊四十五周年を迎え、九月十六日に東京・ホテルニューオータニで記念大会が開かれた。
会場を埋め尽くす人たちの表情は、どれも幸福そうであったという。
そんなエピソードを皮切りにして、総リードでは本号のテーマである『幸福の条件』を謳う数々の名言・金言が紹介された。
安岡正篤氏をはじめ、八木重吉、坂村真民、平澤興、森信三、稲盛和夫氏と、お歴々の言葉が心に染みる。
勿論ではあるが、それぞれの言葉は違い、多種多様な解釈ができよう。
しかしながら、並べられたそれらの言葉を眺めていると、その中に共通するものがあることに気付かされるのだ。
私がそこに見たのは『不幸は”不幸”ではない』というものだった。
言葉面だけで見ると、最近巷でよく使われる「ピンチはチャンス」と同じことのように思われるだろうが、これはそういう意味ではない。
その身に降りかかる災難を「不幸だ」と嘆くのではなく、ただ目の前のことに全力を向けて努力していく。そうすることで、いつしか災難が過ぎ去り、後には全力でやり切ったという喜び・充足感が残るのだ。
もっと砕けた表現で言うならば「バカは風邪を引かない」が意外にも、これを如実に表しているように思う。
俗に「バカは風邪を引いたことにすら気づかないから、結果的に『風邪を引かない』」と言われているが、正にそういうことなのではないだろうか?
風邪を引いたこと、不幸に見舞われていることに対しては一切の気を向けず、只ひたすらに己が成すことだけを正中心に置いて日々を生きていけるのならば、確かにそこに『不幸』は存在せず、むしろそれこそが『幸福の渦中』にあると言えよう。
何せ、その人の心の中は『不幸』が身を置く場所など、どこにもないほどに充足しているのだから。
不幸が好きという人はいない。誰もが常に幸せでいたいと思うのは必定。
私自身、そう願ってしまう俗物である。
もし、あなたもそうであるならば、勇気を出して今日から『バカ』になってみるのはいかがだろうか。
きっとその先には、楽しい人生が待っているに違いない。
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