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経済

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2023年12月の記事一覧

C. ゴールディンと医師の男女差

今年のスウェーデン王国銀行経済学賞を受賞したゴールディンの研究内容から、男女の賃金格差が生じる原因は「子育ては女というジェンダー規範」だという言説が広まっているが、著書の『Career and Family』の第10章にある「医師のケース」には、もっと根本的な原因が示されている。もちろんだが、👇は日本ではなくアメリカの事情である。 このような傾向は日本でも同じだが(その他の国でも)、女医は男医に比べると労働時間が少ないだけでなく労働強度も低いので、必然的に収入が少なくなる。

アイドルマネーと賃上げ

これ👇の続き。 「内部留保は賃上げの原資に使えない」という会計士が書いた記事を時々見かけるが、これもstrawman論法のも一つと言える。 「内部留保を減らして賃上げを」論者の言う内部留保とは利益剰余金に対応する資産全体のうち、稼ぐ生産資産ではなく遊休資金(idle money)のことだからで、どんどん積み上がっているのも紛れもない事実である。 アイドルマネーが増えているのは、2000年前後の構造改革を経て、企業の稼いだキャッシュの使途(優先順位、分配の基準)が大きく変

プラザ合意よりもクリントン円高

この内容には若干の修正が必要。 この👇ような見方が多いが、プラザ合意は高金利政策によって全面高になっていたUSドルの水準を修正するためのもので、日本円・日本企業を狙い撃ちにしたものではなかった。 日本潰しの円高を仕掛けたのは1993年1月に就任したクリントン大統領とベンツェン財務長官である。 円高が製造業に与えた打撃の大きさは1985年よりも1993年の方がはるかに大きい。「バブル崩壊~円高~金融危機」と「ICT革命・韓台中の台頭」が日本の製造業の競争力を低下させた。

賃上げ不足と人口減少

賃上げ不足で岸田首相が責められているが、賃上げの主導権は企業にあり、政府は「お願い」しかできないのだから、ちょっと気の毒ではある。 賃上げ不足が日本経済の問題の核心であることと、政府の施策には限界があることについては、ポール・クルーグマンも1年前にこの👇ように言っていた。なお、同書では、他の三人の経済学者(ヤニス・バルファキス、ランダル・レイ、ラグラム・ラジャン)も、温度差はあるものの、賃上げ不足について言及している。 企業が賃金を抑制する根底には人口減少がある(この👇辺