C. ゴールディンと医師の男女差

今年のスウェーデン王国銀行経済学賞を受賞したゴールディンの研究内容から、男女の賃金格差が生じる原因は「子育ては女というジェンダー規範」だという言説が広まっているが、著書の『Career and Family』の第10章にある「医師のケース」には、もっと根本的な原因が示されている。もちろんだが、👇は日本ではなくアメリカの事情である。

女性医師と男性医師の数は、診療科目によって大きく異なる。若い医師では、精神科医の55%以上が女性、皮膚科医の62%、産婦人科医の75%が女性である。一方、循環器系は約20%、整形外科系は10%だ。女性医師は、週当たりの勤務時間が短い専門分野に多く分布している。例外は産婦人科医で、女性の割合が多いが労働時間が長い。一般論として、男性医師の労働時間が高い専門科ほど、女性医師はその魅力を感じない。つまり、男性医師の平均勤務時間と専門医の女性比率の間には強い負の関係がある。

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女性医師と男性医師の週あたりの労働時間に10時間の差がある主な理由は、女性医師が、ほぼすべての専門分野において、働く時間が少ないからである。実際に、20の大きな診療科目のうち、ほぼすべての分野で、若い女性医師の労働時間は若い男性医師よりも少ないのだ。

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女性医師が若いうちは労働時間が短いことが、後年になってから報酬が低くなる要因になっていると思われる。

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女性医師は、同じような訓練を受けた女性や、訓練年数がはるかに短い女性よりも、多くの子どもを産んでいる。しかし、彼女たちはいまだに代償を払っている。女性医師の年収は、病院や個人開業医の男性医師よりも低い。労働時間を考慮しても低いままなのだ。

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このような傾向は日本でも同じだが(その他の国でも)、女医は男医に比べると労働時間が少ないだけでなく労働強度も低いので、必然的に収入が少なくなる。

ゴールディンがおかしいのは、この差別とは無関係の自然な結果を受け入れず、個々の夫婦の労働所得が等しくなるように働き方も等しくせよ(→男は女のレベルまで労働時間と強度を下げよ)、という共産主義者もどきの主張をしていることである。

この思想は日本の霞が関と永田町(の一部)にも浸透しているようで、医師の働き方改革が国策として強力に推進されている。

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