マガジンのカバー画像

経済

471
運営しているクリエイター

2023年9月の記事一覧

持続的賃上げに必要なこと

持続的賃上げに必要なことについて考えてみる。 企業が持続的に賃上げするためには、 供給側では持続的な労働生産性向上 需要側では持続的な売上増 が必要になるが、人口減少のために経済全体では持続的な売上増の実現可能性は小さい。 しかし、マクロレベルでの売上が増えなくても、個々の企業レベルでは他社のシェアを喰って持続的な売上増を実現することは可能である。投資→労働生産性向上と競争優位の実現→他社のシェアを喰って売上増→賃上げ、というシナリオである。 戦国時代末期には各地

「適温経済」の実現は難しい

岸田首相が無能と言うわけではないが、この経済対策もアベノミクスと同様、期待外れに終わる可能性が高い。戦後最長と二番目に長い景気拡大期にも「適温」にならなかった根本原因は今後も継続する非婚化・少子化・人口減少だからである。 アベノミクスが期待外れに終わったのは、雇用拡大や所得上昇は実現したものの、企業業績改善に比べると労働者への分配が少なく、「経済の好循環」を起こすには足りなかったためである。 戦後最長の景気拡大が始まった2002年頃を境に、日本企業の行動は大きく変化し、キ

消費税の過大評価

消費税についての事実確認。 税収の対GDP比で比較しても、日本は大半のヨーロッパ諸国よりもVATの税負担が少ない。 「日本が経済成長していない」というのも事実ではなく、人口1人当たり実質GDPの成長率は先進国の中では並の部類に入る。していないように見えるのは主として人口減少とインフレ率の低さのためである。 消費税導入(1989年4月)→株価暴落始まる(1990年1月)→バブル景気が終わる(1991年2月) 1997~98年の急激な景気後退は11月に発生した金融危機によ

池上の「日本経済低迷の背景」に足りない点

バブル期に日本銀行の利上げが遅れた説明として足りないのは、ドイツと日本では実効為替レートの過大評価の度合が大きく異なっていたことである(利上げは円高要因)。 資産価格は高騰したが、財・サービスのインフレ率は低位安定しており、景気は非常に良かったので、当時の空気と経済の常識では利上げする理由を見つけにくかったこともある。 バブル崩壊後、不良債権問題を抱えながらも一旦は回復していた日本経済が完全に壊れたのは、1997年4月の消費税率引き上げ(3%→5%)ではなく、11月から始

何でもありの財務省批判

財務省批判にも某市前市長と同様の「嘘・大袈裟・紛らわしい」が多い。 この基礎的財政収支とは一般会計の「税収+その他収⼊-基礎的財政収⽀対象経費」として簡便に計算したもので、財政運営の目標値として用いられているSNAベースのものとは異なる。SNAベースでは2020年度の赤字は80兆円ではなく50兆円である。 支出は70兆円も少なくない。コロナ禍対策としての大盤振る舞いを経済社会が正常化してからも続ける方がどうかしている。そもそも、日本の景気は悪くない。悪いと感じるのは「老化