「適温経済」の実現は難しい
岸田首相が無能と言うわけではないが、この経済対策もアベノミクスと同様、期待外れに終わる可能性が高い。戦後最長と二番目に長い景気拡大期にも「適温」にならなかった根本原因は今後も継続する非婚化・少子化・人口減少だからである。
アベノミクスが期待外れに終わったのは、雇用拡大や所得上昇は実現したものの、企業業績改善に比べると労働者への分配が少なく、「経済の好循環」を起こすには足りなかったためである。
戦後最長の景気拡大が始まった2002年頃を境に、日本企業の行動は大きく変化し、キャッシュフローが設備投資を上回る資金余剰が常態化している。
余剰資金は主として現預金と対外直接投資に回り、世界大不況後はその増加ペースが上がっている。
この余剰資金が労働者・家計に回らなかったために「経済の好循環」が起こらず、岸田首相はそこを変えたいわけだが、非常に難しいと言わざるを得ない。
人口減少によって日本経済が量的縮小・低成長に向かうことは必至なので、個々の企業が昔のフォード社のように「賃上げしても売上増によって取り返せる」と考えることはなく、
①グローバル化した企業は海外シフト(→対外直接投資)
②国内残留企業は現預金の積み上げ
をするのが合理的行動になる。非婚化・少子化と同じで、個のレベルでの合理的行動が国レベルの不都合の原因となっているのである。
民間企業に頼れないのなら政府が代わるしかないが、それだけの能力があるとは考えにくい。アベノミクスと同様、景気拡大ができたとしても、非婚化・少子化・人口減少がどうしようもない以上、「強い経済」や「富国」が実現する可能性はほとんどないだろう。
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