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経済

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2022年7月の記事一覧

円の相対価値は1ドル=360円の時代に逆戻り

円の他通貨に対する相対価値を示す実質実効為替レートが著しく低下している。 2022年6月とほぼ同水準になるのは1971年8月と9月の間だが、これはドル円では1ドル=350円に相当する。7月に入っても円安は進行しているので、直近では1971年8月15日のニクソン・ショック前の1ドル=360円程度にまで下落していると推測される。 ここまで円安になった一因は、この👇ような考え方が検証されないままずるずると続けられてきたことにある。 現実には、円安で数量増となった外需はインバウ

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人口減少が賃金上昇を抑制する

この「生産性が上がらない→賃金を上げられない」との見方は物事の順序を逆に捉えている。賃金を上げないから生産性向上のインセンティブが働かなくなっているのである。 これら👆はデータによって否定される。付加価値のうち株主資本の取り分は2000年代から激増している。 税引前の収益率も高度成長期並みの水準に上昇している。 日本企業が賃金を上げなくなったのは、人口減少のために国内市場の量的拡大(実質成長)が見込めなくなったという環境変化に適応したためである。 このような環境で生き

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積極財政学者の不確かな根拠

この経済学者はリフレ派から積極財政派に乗り換えた一人だが、金融に加えて財政の理解も怪しい。 純債務残高の単純比較は、「名目GDPが増えていないために、財政赤字は対GDP比では高水準が続いているが金額は一定」の国よりも、「高インフレのために名目GDPが急拡大しているので、財政赤字は対GDP比では小さいままだが金額はどんどん増えている」国を赤字依存体質と評価してしまうので適当ではない。 名目経済規模の変化を調整すると、「むしろ米英のほうが政府債務は増えている」わけではないこと

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国の一般会計税収

財務省から2021年度の決算見込みが公表されたので、先日の内容をアップデート。 税収や労働市場の動向は、2021年度の日本経済は不景気ではなく好景気で、財政支出拡大の余地は乏しかったことを示している。「深刻な不況なので国債を大量発行して民間にお金を配らなければならない」というのは見当外れということである。

日韓逆転?

購買力平価換算の1人当たりGDPは2018年から日韓逆転しているが、市場為替レート換算での逆転もあり得る状況になっている。 2021年には大韓民国の1人当たりGDPは市場為替レート1円=10.4ウォン換算で日本の89%だったが、9.3ウォンなら並んでいた。 直近のレートは1円=9.5~9.6ウォンだが、対ウォンでの円安進行と成長率の韓>日が重なれば、2022年が「歴史的事件」の年になってもおかしくない。それを回避したいのなら、賃金が上がる構造を回復させることである。