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経済

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2021年3月の記事一覧

ものづくり大国の落日

日本の製造力の縮小について確認。 米独の生産指数は1990年代半ばから約1.4倍になっているが、日本はやや下回っている。 2019年の国内要素所得は1997年から2割強少ない。 日本の得意分野だった電気電子情報の減少が著しい。 情報・通信機器は繊維製品よりも少なくなっている。 一方で利益は激増している。 "Made in Japan"が世界を席巻した1980年代の快進撃が反転した背景には、内外の環境の激変と、変化への対応の失敗があると考えられる。 変化に重大な影

脱藩官僚の日本経済分析は嘘だらけ

自分たちが関与した「改革」の悪影響がバレないように、全力で日本銀行を犯人に仕立て上げているようだが、中央銀行による金融政策でかなりマネーをコントロールできないことは、日本だけではなく他の先進国の事例からも明らかになっている。主犯は日銀ではない。 ここで、重要なことは、中央銀行による金融政策でかなりマネーをコントロールできるのだ。要するに、デフレの時代、失われた時代の犯人は中央銀行が主犯であると、筆者は30年近くも言っている。 賃金は1人当たりGDPと同じ概念ではない。雇用

アメリカの「接客業不況」と定額給付金の非合理性

これはアメリカの話だが、日本でも事情は似ていて、打撃は飲食や観光などの対人サービス業に集中している。 現在の経済危機は、低賃金労働者たち、とくに飲食業界で働く人々に集中的な打撃を与えているため、一部の経済学者たちは第一波「接客業不況」と呼んでいる。 「現在、経済において特定の層が徹底的に被害を受けている一方で、給与がまったく減額されていない労働者が多数います」と米シンクタンク、経済政策研究所の責任者ハイディ・シアホルツは指摘する。 であるなら、日本でも「大打撃を受けてい

『ウォール街』と構造改革

ウォルト・ディズニーの兄の孫がアメリカ企業の株主至上主義(shareholder primacy)を批判している。 「ビジネスの社会的責任はその利益を増やすこと」と唱えたフリードマンの影響で、1970〜80年代にかけてアメリカ経済界は、「利害関係者から株主へと優位性が移行してしまった」。 この記事の基になったNPRのインタビューでは、1987年にニューヨークの映画館で『ウォール街』を観た時のことを語っている。 What's stunning is how quickly

反緊縮派与党議員の不正確な認識を検証

反緊縮・積極財政派の自由民主党の安藤裕衆議院議員の認識が不正確なので二点を取り上げる。 一点目が7:05~に登場するUSドル換算のグラフで、1995年以降、日米の差が拡大する一方であることを「我々が認識すべき/閉じるべきワニの口」と呼んでいる。 1980年まで遡ると下のグラフになる。 米/日比率は1995年は1.4倍だが2019年は4.2倍と3倍になっている。 ドル換算GDPを①1人当たり実質GDP、②総人口、③実質為替レートの3要素に分解すると、①1.20倍、②1.

ハイパーインフレーションの誤解

生半可な知識に基づく煽動的な経済漫画を描いている漫画家が、今度はハイパーインフレーションについてデマを拡散している。 ECBの"PRICE STABILITY: WHY IS IT IMPORTANT FOR YOU ?"にあるように、 ハイパーインフレには統一された定義はない。 A situation in which the rate of inflation is very high and/or rises constantly and eventually be

MMTの教祖の日本経済分析は落第点

MMTの教祖の一人Randall Wrayが先月のワーキングペーパーで日本経済を分析しているが、知識不足と分析力の低さを示すことになっている。 MMTerがMMTの正しさを論証する方法として多用するのが、主流派経済学では想定外の現象がMMTでは説明できるというもので、このWPでは日本の国債残高が激増する一方で国債金利とインフレ率がゼロ近辺に低下したことが挙げられている。 We also argue that Japan is the perfect case for de

日本の賃金上昇率はヘルコリアより下

一つ前の記事に補足。 このような記事には「韓国は最低賃金を無理に引き上げたので雇用が減った」などと論破したつもりの人が湧いてくるが、そうではない。 OECD統計の失業率には大差はない。 実質雇用者報酬の伸び率の差は歴然としている。 事実は事実として認めなければならない。

相対的に貧しくなった日本人

日本の購買力平価ベースの平均賃金(average wages)が相対的に下落している。 OECD(経済協力開発機構)が行った賃金に関する調査は衝撃的だ。2019年における日本人の平均賃金(年収)は3万8617ドルだったが、米国は6万5836ドル、ドイツは5万3638ドルと大きな差を付けられている。 それだけではない。かつては途上国というイメージの強かった韓国ですら、4万2285ドルとすでに日本を追い抜いている。日本人の賃金は米国の6割程度しかなく、韓国よりも低いというのが偽

2013年から10年間で1人当たりGNIを+150万円

安倍首相(当時)が2015年9月に「2020年頃に名目GDP600兆円」を宣言していたことは先日の記事で取り上げたが、政権発足から半年後の2013年6月には「10年後に1人当たりGNIを150万円以上増やす」としていた。 2013年の1人当たりGNIは当時の2005年基準では390万円なので、2023年に540万円になるには年率+3.3%成長が必要だった。 この成長率を現行の2015年基準に当てはめるとこのようになる。 2019年には8%、2020年には14%の遅れとな