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経済

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2020年8月の記事一覧

アメリカのエリートが安倍首相をべた褒めする理由

アメリカのエリートが安倍首相をべた褒めしている。 こちら(⇩)は1~28まである。 べた褒めしている理由は簡単で、安倍首相が国際標準ではリベラルあるいはプログレッシブだからである。 当初はアメリカが押し付けた歴史観や戦後体制を見直して対米従属からの脱却・自主独立(日本を取り戻す!)を目指すナショナリストではないかと危険視されていたが、蓋を開けてみれば軍事面でも経済面でも対米従属を一段と深化させる事大主義者で、リベラリズムの教義の基本の男女平等と移民にも積極的だったので、

日本の帝国主義化と円高傾向

松尾匡がまた妙なことを書いている。 東南アジアにかぎらず、この間、企業の海外進出はどんどん進んできました。その結果、海外子会社からの利潤の送金が年々高まっています。これは将来的にも増える一方になるでしょう。 これは外貨で送金されるので、日本では円に換えなければなりません。ということは、円高になります。つまり日本経済には長期的に通奏低音として円高圧力がかかり続けるということです。 当面見通せる将来は、一生懸命政策的に抑えることのないかぎり、円高傾向が自然であると見込まれます

「知の巨人」のお粗末な財政金融論

「知の巨人」の知識不足を検証する。 その前に権丈だが、高資産家・高所得者は中・低所得者に比べると、低リスク・低リターンの国債よりも高リスク・高リターンの株式や不動産等の保有ウェイトが大きいことや、増税も累進課税の選択肢もあることからは、国債費が「高資産家・高所得者を助けて中・低所得者を挫く」ものとは必ずしも言えない。 なんらかの理由で金利が上昇した場合、財政を持続させるためには、政府は増税か給付のカットを行い、そこから得たお金を国債費(元利払い費)に振り向けることになる。

左派ポピュリズムに騙されるな

松尾匡が左派やリベラル派が先進国の労働者の敵であることを明らかにしている。 発展途上国の労働者の賃金が上がれば、企業が海外移転することもなくなり、先進国の労働者は雇用が守られます。移民や少数民族の賃金も、先進国主流民族の労働者と同じレベルに上がれば、雇用が取り替えられることはなくなります。 新自由主義のもたらした悲惨を真に解決することは、移民や少数民族や外国人の一般大衆を敵認定する右派ポピュリズムにはできない。民族が違っても「われら」の仲間とみなす左派ポピュリズムにこそそ

「児童手当の財源に企業の内部留保」は的外れだが一理あり

これ(⇩)は少子化対策としては的外れだが、一理はある。 「私がやりたいことを集計すると3.5兆円ぐらいかかる」と述べ、財源は固定資産税や相続税の増税、企業の内部留保を例示した。 「内部留保を財源に」と言うと嘲笑する輩が湧いてくるが、そのような見方が皮相的であことを(立場は違うものの)よく理解しているのが、株式投資のアクティビストである。 日本経済を停滞させてきた大きな原因というのは、お金の流れが病的なまでに滞っているという問題です。お金というのは社会の血液であり、お金の

池上彰の誤解説(前):デフレ

池上彰が8月15日放送の「池上彰のニュースそうだったのか!!」で誤った解説をしていたので、経済に関する二点について指摘する。今回は前編。 「今の日本はインフレorデフレ?」との問いにゲストの若手芸能人5人中4人がインフレと回答していたが、池上は「デフレから抜け出せないまま」「デフレが深刻だったのでなかなかインフレにならない状態」との説明をしていた。 しかし、消費者物価指数は緩やかながら上昇基調にあるので、持続的に下落するデフレが続いているとは言えない。 デフレが良くない

家計消費と輸出主導の景気後退

4-6月期の国内総生産は実質原系列が前年同期比-9.9%、実質季節調整系列が前期比-7.8%だった。 今回のコロナショックと2008年9月のリーマンショックを比較する。グラフでは説明を省略しているが、横軸は2020年Q1と2008年Q3を0として前後の±12四半期を示している。縦軸は-6~-1の6四半期の平均が100である。 リーマンショックでは2四半期かけた落ち込みが今回は1四半期で生じていることが、その急激さを示している。 リーマンショックの景気後退は企業部門が主導

給与所得と配当等所得

国税庁の統計から、所得税(源泉+申告)の給与所得と配当等所得の推移をグラフにする。 バブル崩壊~ITバブル崩壊の約10年間は、給与よりも配当が相対的に減少した。この「失われた10年」は企業が不振の典型的な不景気であり、実質賃金も1996年をピークに減少に転じた。 実質賃金の減少は2015年まで続いたものの、マクロ経済は2002年には「失われた10年」を脱して戦後最長の景気拡大入りした。2002年から2018年にかけて給与所得は1.2倍だが配当等所得は5.9倍となっている。

消費税と社会保険料

政府が消費税減税に慎重なのは、基幹税としての存在が大きくなっているためである。 1989年の導入以降、法人税と入れ替わる形で消費税の存在が大きくなっている。 社会保険料は消費税以上に大きい。 対GDP比で見ると、所得税・法人税の負担は1980年代に比べて低下しているが、社会保険料・消費税は増大する一方である。 このような課税政策の背景にあるのが金融資本主義である。「労働に対する税金である所得税」は社会保険料に相当する。 国家は課税政策のバランスをとる能力を失っている

転向リフレ派の理解不足

財政拡大は不要のはずのリフレ派が転向して大規模財政出動を主張しているが、この講演を聞くと現代の貨幣制度の構造と日本経済について理解していないことがわかる。 「企業と政府が投資を拡大することで生じる資金不足は日本銀行がマネタイズする」と何度も言っているが、市中で用いられるマネーを作るのは民間銀行の役割であって中央銀行ではない。銀行券は交換される銀行預金がなければ市中には出現できない。また、中銀預金は銀行間決済に用いられるもので、企業や政府の投資をファイナンスするものではない。

女性解放と賃金低下

参考になる記事を見つけたので紹介。 これは単に需給と価格の関係だけではなく、賃金決定における暗黙のルールが変更されることでもある。ロナルド・ドーアも「女性運動とジェンダー革命」にこの(⇩)ような効果があることを指摘している。 「一家の稼ぎ手モデル」が組織内での賃金決定における要因として持っていた規範的な力を失わせ、一般効果として市場個人主義の推進力として働きます。 「一家の稼ぎ手モデル」を労使が共有していた時代には、使用者側にも「労働者の家族が生活できる給料は支払わなけ

反緊縮派は消費減税に拘り過ぎ

また中野剛志がミスリーディングな記事を書いているので、繰り返しになるが問題点を指摘する。 消費税率を5%から8%へと引き上げた2014年も、日本経済は未だデフレ脱却に至っていない時期であった。そして、そもそも日本経済を長期のデフレ不況へと陥れる契機となったのは、1997年に実行された消費税率の3%から5%への引き上げであった。 グラフの薄紫色の縦線はそれぞれ1997年4月(3%→5%)、2014年4月(5%→8%)、2019年10月(8%→10%)だが、2014年にはデフ