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経済

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2019年10月の記事一覧

まともな政治家の残念な誤解

もはや絶滅寸前の「日本国民のことを第一に考える国会議員」の一人である安藤議員が23日に内閣委員会で質問していたが、残念な点があったので指摘する。 誰かが借りることによって預金が創造される。 これは不正確で、正確には「誰かが銀行から借りることによって預金が創造される」である。誰かがノンバンクから借りても預金は創造されない。既にノンバンクの銀行口座にある預金が誰かさんの口座に移るだけである。 バブルの頃には企業がどんどん信用創造するのでバブルになってしまう。 信用創造する

デフレ・長期停滞とマルクスの窮乏化法則

1990年代後半からの日本のデフレ・長期停滞については様々な見方があるが、難しく考えなくても、構造改革がマルクスの窮乏化法則を発動させた結果というシンプルな理解で十分である。 労働生産性と労働コストの拡大→単位労働コストの低下は、生産力と購買力のギャップの拡大(→デフレ圧力)を意味する。 単位労働コストの低下→民間法人企業所得の増大 配当支払い前の民間法人企業所得の増加はさらに著しい(グラフのB-A≒支払配当)。 支払配当の増加は消費税を上回っている。 国内の購買力

「国には売れる資産があるから借金は問題ない」に騙されてはいけない

反財務省のポーズを取るレントシーカーの本音が出ている。 だから、高橋氏も私も消費税の拙速な引き上げにはずっと反対しています。そんなことより売れる資産がたくさんあるから売れと。 「資産」の大きさや「負債」の大きさが問題ではなく、「純資産」の大きさ=「純資産がプラスかマイナスか」が問題なのである” このロジックでは、財政赤字の分、国有資産を売却して穴埋めしなければいけないことになる。もちろん、売却先は「濡れ手で粟」を目論むレントシーカーである。 「国の借金」の大きさそのも

河川・砂防の土木費

台風19号で大きな被害が出た長野県の河川・砂防の土木費の推移を見る。 2000年代に急減している。 同時期に都道府県合計も減少しているが、 長野県の減り方が大きかったことがわかる。 2001→2003年度の急減と言えば…。 日本に公共事業のための金は無いのか公的固定資本形成は1990年代から約4割も削減されているが、削減を正当化する理由の一つが「日本にはもう金が無い」である。 だが、金はあるところにはあるもので、1999年度→2017年度に公的固定資本形成は-16

治山治水対策事業費~国を治める意思が無い

「水を治める者は国を治める」と言われるので、国と地方の治水関係費の推移を確認する。 経費別分類の治山治水対策事業費 目的別分類の国土保全費 地方の河川海岸費 対GDP比 国土交通省の建設工事費デフレーター(治水総合)で実質化 実質値は高度成長期末期の水準、対GDP比は民主党政権期を除くと1955年度以降で最低の水準にまで減らされている。 最近では災害が起こると民主党政権の削減が批判されるが、当時は多くの国民が「コンクリートから人へ」や事業仕分けを支持したことを棚

積極財政派国会議員の事実誤認

積極財政派の安藤裕議員のビデオレターについてコメントする。 ドル換算GDPの世界シェアだが、1995年は1ドル=79円75銭をつけるなど円が著しく過大評価されていたので、別の年も示した方がよいだろう。過大評価されていない年ではおおよそ14%程度である。それでも、20~30年前の日本の経済的プレゼンスは近年の中国にほぼ匹敵するものだったことになる。現在は変動相場制移行後の最低水準なので凄まじい凋落である。 「まだまだデフレ不況が続いている」とのことだが、現状はデフレでもなけ

観光立国はPIGSへの道

10月4日の所信表明演説で安倍首相は これからも、安倍内閣は経済最優先です。 と述べ、観光立国を推進していく姿勢を改めて示した。 地方への外国人観光客は、この六年で四倍を超えました。観光は、地方の新たな活力です。地方でも商業地の地価が二十八年ぶりに上昇に転じるなど、地方経済に活気が生まれています。 海外で急速にキャッシュレス決済が普及する中、日本を訪れる外国人観光客の七割が、キャッシュレスがあればもっとお金を多く使ったと回答しています。大胆なポイント還元により、キャッシ

新自由主義の毒が英米よりも日本に効いた理由

このタイトルのような見方(⇩)に対しては、新自由主義の本家の英米は日本のように衰退していない、という反論が予想されるが、 日本の衰退が英米に比べて著しいのは、新自由主義のマイナス効果を相殺するプラス効果がなかったことと、英米にはなかったマイナス効果があったことで説明できる。 金融セクターの影響力と民間の負債の増大英米の新自由主義とは、株主利益の最大化を目指す金融資本主義(株主資本主義)なので、はるか昔から世界の金融センターだったロンドンのシティ、ニューヨークのウォールスト

個人の借金と国の借金

池上彰が「池上彰のニュースそうだったのか!!」で「日本政府に借金があること自体は問題ではないが、増え続けることは問題なので、漸減させるために増税が必要」などと説明していた。 しかし、国債残高が増え続けて問題なら高騰しているはずの国債金利は逆に歴史的低水準にある(日本銀行による引き下げがなくても)。このことは、池上の説明に根本的な誤りがあることを示唆している。 ところで、ZOZOの前澤前社長の借金は「たった600億円」だそうだが、個人でこれほど多額を借りられたのは、年30億

残念な内容~日本衰退の元凶「新自由主義」

タイトルはその通りなのだが、内容は残念な記事である。 これは、1995年から2015年までの20年間の経済成長率(名目GDP=国内総生産の変化率)の各国比較である。日本だけが経済成長を止めているのが、一目瞭然だ。しかも、日本は20年に及ぶデフレであり、このような長期のデフレは、世界にも類を見ない。第2次世界大戦後、「奇跡」と呼ばれた経済成長を成し遂げた国が、90年代半ばを境として、突然、このような無残なパフォーマンスしか出せなくなった。なぜ、こうなってしまったのか――。