デフレ・長期停滞とマルクスの窮乏化法則

1990年代後半からの日本のデフレ・長期停滞については様々な見方があるが、難しく考えなくても、構造改革がマルクスの窮乏化法則を発動させた結果というシンプルな理解で十分である。

労働生産性と労働コストの拡大→単位労働コストの低下は、生産力と購買力のギャップの拡大(→デフレ圧力)を意味する。

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単位労働コストの低下→民間法人企業所得の増大

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配当支払い前の民間法人企業所得の増加はさらに著しい(グラフのB-A≒支払配当)。

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支払配当の増加は消費税を上回っている。

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国内の購買力が増大しないため、企業は海外市場志向になり、さらに賃金抑制と投資不足(→空洞化)が強化される。

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国内に比重を置かなくなる傾向は企業だけではなく政府にも及んでいる。これ(⇩)は安倍首相の発言だが、日本国民を外国人と同列に扱うと明言している。その意味は、日本国民の待遇を外国人のレベルに引き下げるということだろう(既得権益の打破)。

もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました。
日本を、能力あふれる外国人の皆さんがもっと活躍しやすい場所にしなければなりません。
既得権益の岩盤を打ち破る、ドリルの刃になるのだと、私は言ってきました。

「能力あふれる外国人」は安倍政権になってから倍増している。

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幼少年→老年に置き換えれば、労働市場の変化も「法則」通りである。

この相対的過剰人口の形成は、同じ可変資本量で同じ労働力量を過度に労働させ、成年労働を幼少年婦人労働によって、高級労働をより多くの低級労働によって駆逐する。そのことによって相対的過剰人口を生産過程の技術的変革よりももっと早く形成する。過剰人口は就業労働者の労働条件や賃金を圧迫する。こうして就業している現役労働者に比べ過剰人口の産業予備軍が大きくなり、貧困状態に置かれる過剰人口が増大し、受救貧民も増大する。

成年(男)労働→老年婦人労働

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高級労働→低級労働

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技術的変革→低級労働(資本装備率と労働生産性の引き上げが阻害される)

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1970年代後半から、日本の政財官学には「正しくない」ケインズ的経済運営からマルクスの時代の正しい資本主義に回帰するべきという思想が広まっていた。その思想を本格的に実践しようとしたのが橋本龍太郎で、財政構造改革と金融システム改革によって、それまでは封印されていた窮乏化法則が復活した。

1996年11月11日、時の総理橋本龍太郎は官邸に三塚博大蔵大臣と松浦功法務大臣を呼び、日本の金融システム改革(いわゆる日本版ビッグバン)を2001年までに実施するように指示したのでした。実はこの金融システム改革を仕掛けたのは、当時国際金融局長だった筆者と証券局長だった長野厖士でした。官邸での会合には筆者も長野も同席しました。

金融ビッグバンの仕掛け人の一人は、この1年後に山一證券を自主廃業に追い込んでいる。

構造改革の建前は「日本経済の歪みや停滞の根本原因は社会主義的構造にある→市場原理を貫徹することで活力を取り戻す」というものだったが、改革した結果が、ソ連のような転落だったわけである。

ケインズ理論の主たる帰結は、もちろん景気後退期における国家による投資であるが、それより目に付きにくいが構造に関わるものだけにより重要な帰結は、自国の労働者階級を豊かにすることが得策であるという考えを西側ブルジョワジーが受け入れた、ということである。経済発展期における労働者の賃金の持続的上昇は、消費の規則正しい上昇をもたらし、それが生産の総体を吸収する。
共産主義諸国のプロレタリアートの奴隷的境遇は、長期的にはいくつもの経済的帰結をもたらすが、その最も重要なのが技術的停滞である。東欧諸国とソ連の労働者は、いかなる自衛手段(組合、スト権)も持たない。その結果、賃金に関わる要求を実現することができない。賃金の上昇が停止していると、工業への技術的進歩の適用による機械の生産性の上昇も、[労働者の生産性が低いため]無駄に終わるのである。

構造改革のイデオローグたちの本音は、プロレタリアートを奴隷的境遇に落とすことだったようである。

私が、若い人に1つだけ言いたいのは、「みなさんには貧しくなる自由がある」ということだ。「何もしたくないなら、何もしなくて大いに結構。その代わりに貧しくなるので、貧しさをエンジョイしたらいい。ただ1つだけ、そのときに頑張って成功した人の足を引っ張るな」と。

フェミニストも日本の転落に大いに貢献した(フェミニズムは平等ではなく格差拡大を目指すネオリベラリズムの一派)。

現在20代や30代の若い女性たちも、ゆっくりまったりと生きていけばいいじゃないですか。・・・賃金が上がらないといっても、外食せずに家で鍋をつついて、100円レンタルのDVDを見て、ユニクロを着ていれば、十分に生きて行けるし、幸せでしょう?

国政選挙で改革派が勝ち続けていることは、多くの下級国民は何だかんだ言いながら、貧しさをエンジョイしていることを示している。

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それでも大半の人々はきわめて現実的で、この状況を「しようがない」といって受け入れていた。なにしろ、そうするしか手がなかったのである。

日中の経済力が逆転する「大逆転」のシナリオ(⇧)。不良中国人が「活躍」する一方で、多くの日本人は貧困に転落している。

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