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マネー・MMT

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MMTのルーツは新左翼思想
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#お金について考える

MMTは財政金融政策ではなく雇用政策の理論

現代貨幣理論(MMT)がわかりにくい/紛らわしいのは、その本質が労使の勢力均衡と「インフレなき完全雇用」を実現する雇用政策の理論であるにもかかわらず、財政金融政策の理論のように見せかけていることが一因ではないかと思われる。 MMTでは、企業は労働者を安く雇いたいので、売り手市場にならないように常に失業者のプールが存在する状態を保とうとするとされる(→恒常的なデフレギャップの存在を含意)。 しかし、失業は本人にとっても経済社会にとっても損失なので、公的セクターが社会的に有益

MMTは地動説ではなく天動説

財務省が四半期毎に公表する「国債及び借入金」を「国の借金」と表現することを批判する論者がいる。特に、現代貨幣理論(MMT)を信奉するMMTerに多いようである。 批判の背景には、「国」という言葉が狭義では「中央政府」、広義では「民間部門と公的部門を合わせた総体としての国」の二通りに使われていることがある。本当は「中央政府の借金」であるものを、国民一人一人が返済しなければならない債務のようにすり替えた悪質な印象操作だという批判である。 この批判には一理あるが、実はMMTの根

国債発行と民間預金の関係のMMT的解釈

政府が国債を発行して調達したマネーをZ社への支払いに充てるとする。 銀行が国債を買う場合①国債をA銀行が買う→②政府がZ社に支払う、のプロセスを簡略化すると下図のようになる。中央銀行の決済では当座預金が用いられるが、ここではわかりやすさのために同等の現金と表示する。青は銀行の預金口座にある現金、赤は政府の預金口座(国庫)にある現金、✚の左が資産、右が負債、上が増加、下が減少である。 国債発行と財政支出の結果、B銀行にZ社の預金が出現しているが、現代貨幣理論(MMT)の信者

三種類のマネーと二つの場

マネーの分類マネーには銀行預金、中央銀行預金(以下、中銀預金)、現金(銀行券と硬貨)の三種類がある。 銀行預金は市中銀行(以下、銀行)、中銀預金と銀行券は中央銀行が発行する。硬貨(貨幣)は政府が発行して中央銀行に交付する。銀行は複数あるので、銀行預金は銀行の数だけ亜種があることになる。フェリックス・マーティン著『21世紀の貨幣論』では、民間部門由来の銀行預金をprivate money、広義の政府部門由来の中銀預金と現金をsovereign moneyと表現している。