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マネー・MMT

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MMTのルーツは新左翼思想
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2021年12月の記事一覧

政府債務の持続可能性は残高ではなく利払費で判断

年末なのでお蔵入りになっていた記事を蔵出しする。 当noteでは政府債務(いわゆる国の借金)について、 国は永続的存在なので完済期限が無い(寿命がある個人とは違う) 国には徴税権があるので元利払いに充てる収入が滞るリスクが低い(業績悪化のリスクがある企業とは違う) ことから、その持続可能性は残高ではなく利払費の対税収比や対GDP比で測るのが妥当と主張してきたが、FurmanとSummersも1年前に同じ見解を発表している(違いはインフレ率を加味したreal inter

MMTとTMT

無料部分しか読んでいないが、大塚議員の現代貨幣理論(MMT)の理解は正しくない。 これ👇はMMT派を騙る日本の一部の論者が言っているだけで本家本元のMMTとは関係ない。 第一は、国は負債だけではなく資産も有しており、純資産(資産マイナス負債)で考えることが必要と主張する。 MMTでは政府の支出はそれに合わせた中央銀行の通貨発行で賄われているとされる(⇔納税された通貨は中央銀行が消却する)。国債は財源の調達手段ではなく、市中から余剰の通貨を吸収するツールである。 第二

プライマリーバランス黒字のデマ

また藤井聡が公共の電波でデマを叫んでいた。 ②のプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化のことを「借金ゼロにしようとしている」と言っているが、PB黒字が利払費を上回って①の財政収支が黒字にならなければ債務残高は減少に向かわない。そもそも、当面の目標としてPB黒字を目指すことを、1000兆円近い国債残高をゼロにすることだというのは超拡大解釈である。 この説明👇も正しくない。 政府の借金返済が恐慌の原因なら、ジャクソン大統領の在任期間(1929年3月~1937年3月)

MMTの教祖「トルコはゼロ金利政策を」「中央銀行総裁解任は正しい」

トルコ経済の混乱が拡大している。 混乱に拍車をかけたのが3月の中央銀行総裁解任だったが、MMTの教祖のモズラーはそれに賛成していた。MMTでは中央銀行には独立性はなく、政府の言いなりになるものとされる(→fiscal dominance)。 それどころか、高インフレにもかかわらず、ゼロ金利政策を推奨していた。 高金利はインフレを抑制ではなく促進するという論理である。 MMTはまともな理論だろうか。 モズラーがエルドアン支持なら、ミッチェルはベネズエラの故チャベスに好

銀行に預けた金の使われ方

銀行は預かった金に利息を払うのだから、その金を何らかの形で有効利用しなければ赤字の垂れ流しになってしまう。銀行への預金は「銀行の貸金庫に現金を預ける」とは意味が違う。自称貨幣論研究者は銀行システムの仕組みを理解していない。 証券会社の預り金は単に預かっているだけで分配金等は付かないが、MRFの口座に入金されると、安全性の高い公社債やCP等で運用される。証券会社は客に無断で運用しているわけではない。 銀行(正確には預金取扱機関)が預金を集めるのは、又貸しするためではなく、預

積極財政論とMMTは似て非なるもの

混同されがちな日本の積極財政論と本家の現代貨幣理論の違いを整理する。 積極財政派の論理は ①財政支出を増やし続ければ必ず需要超過→景気過熱→インフレ昂進に至る。 ②デフレ又はディスインフレが続いているのは需要が慢性的に不足して景気が冷え込んでいる証拠。 ③インフレ率が目標水準を超えるまで財政赤字と支出を増やせば需要不足が解消して経済が正常な成長軌道に戻る。 というケインズ的なものだが、日本のデフレ・ディスインフレは20年以上も続いていることから、最近では一段階上げた

国債費のデマ

藤井聡がまた口から出任せを言っている。 公債金収入を基礎的財政収支赤字と国債費に対応させるとこのようになる。国債費24兆円のうち利払費は8兆円である(2020年度実績は7.4兆円)。 通常、利払費は一般会計に計上される。 アメリカ(Net Interest from Debt, Trust Funds, and Other Investments) スイス(Finances and taxesに含まれるinterest expenditure) ドイツ(Intere

国債が広義流動性に含まれることを理解できない自称貨幣論研究者

「正しい貨幣観」を連呼する自称貨幣論研究者が無知を晒している。 日本銀行によるマネーストック統計の解説👇。 マネーストック統計とは、「金融部門から経済全体に供給されている通貨の総量」を示す統計です。具体的には、一般法人、個人、地方公共団体などの通貨保有主体(=金融機関・中央政府以外の経済主体)が保有する通貨量の残高を集計しています。 マネーストック統計には、通貨の範囲に応じてM1、M2、M3、広義流動性の4つの指標があります。 広義流動性は、M3に何らかの「流動性」を

市場に無視された「矢野論文」と日本経済の問題

「矢野論文」が市場に全く影響を与えなかったのは、サプライズになる新情報が何もなかったからである。「ギリシャのように粉飾決算していました」という告発なら(少なくとも一時的には)国債価格暴落を招いたかもしれないが、内容は財務省のこれまでの主張と変わりなかったので、無視というよりも無反応だったわけである。 この説明👇は正しくない。 国債は借金に例えられる。家計や企業が借金をたくさん抱えると、信用は悪化するものだ。借金過多の人や企業が借り換えをすると、貸し手は貸し倒れリスクを考慮

お札は中央銀行の借金ではない

パクリ屋の素人(自称貨幣論研究者)の理解の浅さがわかるツイート。 借金するとは借入金や債務証券(負債)を発生させて現預金(資産)を調達することだが、お札(銀行券)は中央銀行が発行した負債であり、それによって現預金を調達しないので、借金ではない。シェイブテイルは負債と借金の区別がついていない。 中央銀行は銀行券や中銀預金を返済する必要は無いが、通貨価値を維持するために、バランスシートをバランスさせる必要がある。中央銀行は資産価値が毀損して債務超過になっても業務は継続できるが