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「以前から意味も知っている:59% 以前から言葉だけ知っている:31% これまで知らなかった:10%」

2023年度にHR総研が実施したウェルビーイング&健康経営に関するアンケートのウェルビーイングの認知度に関する結果である。

調査の実施主体がHR総研であることを考えると、アンケート回答者の母集団と平均的な日本人の母集団の間には多少の乖離はあるだろうが、ウェルビーイングという言葉が十分に市民権を得ていると言っても差し支えない。

ウェルビーイングという言葉が広く普及しだしたのは、おそらくここ10年以内。コロナ禍を経て、一気に認知が広まった印象がある。

因みにWHOはウェルビーイングを

「個人や社会のよい状態。健康と同じように日常生活の一要素であり、社会的、経済的、環境的な状況によって決定される」

と定義している。

ウェルビーイングという言葉が普及したことにより、個人も社会も“みんなが良い状態を目指そう”という機運が高まっていること自体は良いと思うが、言葉の普及による弊害も出てきていると感じるので、そのことについて書いていこうと思う。

ウェルビーイングには客観的な指標(平均寿命や失業率など)と主観的な指標(人生への満足など)があり、大きく左右されるのは主観的な指標と言ってよいだろう。

一方で健康経営やウェルビーイング経営などの言葉に象徴されるように、研究やコンサルティングの領域が盛り上がってくると、便宜上、何らかのパラメーターを設定して測定したり、ウェルビーイングな人や組織のモデルを社会が勝手に生み出すということが起きてしまう。

世界的に有名な某調査会社はウェルビーイングを以下の5つの構成要素に分けて、その度合いを測定するサービスを展開している。

①キャリアウェルビーイング(仕事への納得感)
②ソーシャルウェルビーイング(他者との深い関わりや愛情)
③ファイナンシャルウェルビーイング(経済的な満足)
④フィジカルウェルビーイング(心身の健康とやりたいことをするエネルギー)
⑤コミュニティウェルビーイング(地域社会とのつながり)

ウェルビーイングは主観だ、と言いながらも、ウェルビーイングを普及させようとする力学は、その主体が意図せずとも、画一化の作用を孕んでいるのだと思う。

このことは、ウェルビーイングな状態像を人の認識の中で固定化させ、その理想像と今の自分の現状との差分の認識を生み出すという点で、大げさかもしれないが、ウェルビーイングという言葉・概念の普及がある種の不幸を生み出しているということも言えるのかもしれない。

“自分のやりたいことを仕事にしよう”や“自分の生きたいように生きよう”といきなり言われても困る人は多いだろう。就職活動や転職活動などのキャリアの転換点に立っている人で、「やりたいことを見つけないと。」と強迫観念に苛まれていることも少なくないと聞く。

これまでの日本社会は、大きな流れとして社会は画一的な価値観を押し付けてきた。そこからの脱却は必要だと思うが、いきなり梯子をはずすことも少し違うような気がする。それに耐えうる程には人間全体の精神性は発達していないのだと思う。

決してやりたいことではなくても、目の前のことを粛々とこなすことが後々の人生で生きてくることも十分に想定される。Wellな状態ではなくとも、その状況を受け入れて、好転を信じて耐え、行動を続ける、そういった姿勢を持つことこそが、ウェルビーイングな人生ではないだろうか。

最後に、ウェルビーイングの文脈で“生きる意味”について他者から問われたり、自身で問うこともあると思うが、もしその問いに苦しんでいるのであれば、以下の文章を知って欲しい。

「わたしたちが生きることからなにかを期待するかではなく、むしろひたすら、生きることがわたしたちから何を期待しているかが問題なのだ(『夜と霧』ヴィクトール・Eフランクル著より)」

僕はこの文章によって、“人生を引き受ける”という感覚を得た気がする。

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