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第5章〜病舎看護係編 第1犯〜なにここちょっと楽しいんすけど(後編)※当時記録していたノートの写しアリ

お読み頂きありがとうございます。強盗致傷で7年の実刑判決を食らったムショくんと申します。
何話か書いていますが、今回は川越少年刑務所で病舎看護係として配役された初日の日記的ストーリーです。
宜しければ前編と合わせて呼んでくださいね。

そんなこんなで病舎に来てから早くも半日が過ぎた。
今はお楽しみのランチタイムである。
まず気が付いたのがUは食事をチョロまかしていることと、Nと神の子はしょーがなく付き合っている感じだ。
なんとなく察するに、今まで下っ端として耐えてきたUが一気にトップになっちゃったもんだからチョーシに乗ってしまったのだろう。
今んとこ私に被害はないのでヨシとしよう。

てことで食べ終わったら即座に片付けを開始する。各舎房を回って食器の回収だ。オヤジに許可を取り、大声で
「から下げ〜!」
と叫ぶ。すると房内の受刑者たちが食器口に食器と残飯を出してくる。
俺らはそれを回収して炊場に戻すだけだ。
病舎という場所がら、入院者の残飯もしっかり記録しておく
舎房番号・称呼番号・朝・昼・夕、と記録する紙も常備されている。
思いのほかしっかり管理しているようだ、さすが病舎。

などと感心していると今から運動の時間らしい。。。
え?食後に?と考える間も無く運動着に着替える。とても寒い。
するとお迎えの刑務官がやってくる。
我々は病舎の隣の建物である拘置区画の掃夫約10人と一緒にグラウンドに向かって行進を行う。もちろん「いっち に!」は絶叫に近い大声だ。
300メートルくらい歩くと大きなグラウンドがある。
サイズ的にいうとグラウンド部分の外周が400mちょっとあるらしい。
フルコートでサッカー大会もやれるくらいの広さ。

そこに
・経理Aチーム(炊場工場、営繕工場)
・経理Bチーム(掃夫全員、看護係、内掃工場、釈放前工場)
・経理Cチーム(洗濯工場、舎内掃工場、図書工場)

が集結する。各チームの人数は30人〜50人という感じ。
多い時でも総員150人くらいだったと思う。
トータル収容人数1500人くらいいる川越で、経理係の人数はこれしかいないので、いかに狭き門でエリートなのかお分り頂けるだろうか?
運動の時間はこのチームごとに運動を担当するオヤジがいるから指示に従って運動をする。
運動時の場所は
・200mトラック
・250mトラック
・外周

を毎日ローテーションしている。

当時運動場に着いたらまずオヤジの指示で軍事パレードの練習がある。
前にも書いたがこの軍事行進は工場対抗協議会みたいなのがあって、各工場命がけで取り組んでいる。なので毎日運動の時間に少し練習するのだ。
詳しくは別話で書いていますので良かったらどうぞ。

更新が終わったら各チームごとに集結して気合いの入ったラジオ体操をする。オヤジが厳しくチェックしており、元気がなかったり動きが三代目くらいキレていないとやり直しが延々と続く事になる。

俺の運動初日は外周だった。オヤジは終わりのないインターバル走を強制していた。5、6人くらいをひと塊りとし、L字型の周回コースをひたすら走らせていた。一旦休憩、なんて許されるはずもない。吐いて死んだら休憩だ。そしてビリには筋トレというオマケが付いている。トップなのに自ら筋トレしている変態もいたが気にしている余裕はなかったし、最終的には自分もそうなっていたので刑務所には己をストイックな人間にする何かがあるんだと思う。
そんな囚人のことには目もくれず、オヤジは次々とコースにミニ四駆を投入する子供みたいな感じで笑いながら囚人にゴーサインを出しまくっていた。

俺はハッキリ言って運動にはそれなりの自信があったが、逮捕されて10ヵ月も全く動かない生活をしていた人間がどうなるか予想していなかった。
まず想像の遥か手前で呼吸困難に陥る。正確な情報を書くと「全力で走ったら1周目で死にます」だ。脚は子鹿状態。
20を少し越えた男盛りの体力がおっさん並みになるのだ。
長い監禁生活は非常に不健康だから、今ニートで引きこもってる奴はちょっと考えた方がいい。

そんなこんなで瀕死の走りをしていたらテキトーなグループに分かれてリレーをやるとか言い出したが、無様な走りで抜かれまくった俺に対する目線は正直けっこうキツかった。
死ぬ寸前になってようやく運動が終わった。帰りの行進の足が上がらないほどに疲弊しきった後は、病舎に戻り午後の作業が待っている。細かい作業はたくさんあるが夕食の配当がメインだ。
昼と同じように炊場から食事が届くから分配して配って俺らも食べて食器を回収してまとめて帰る感じ。
俺が初めて宿泊する舎房は病舎の2階にあった。13号室だ。
看護係専用の部屋で、4人が布団を敷いても全く狭さを感じない。
テレビまである。チャンネルの主導権はUにある。
ここに着替えと検身を終えた4人がまとめて入れられる。
入院患者の点検は既に終わっているので、俺らだけの点検を実施する。
我々は一般受刑者よりも帰宅するのが遅いので、点検も別で行なっている。

ここからは21時の就寝まで自由な時間である。
ただサラとして気が抜けない時間なので、どうやったら3人の機嫌を損ねないか考えた行動をとる必要がある。
まず俺は作業的にモタになるのは嫌だったから、Nさんに洗濯仕事を教えてもらうとこにした。
ちなみに洗濯仕事はサラの仕事で、入院受刑者の洗濯物を回収したり配ったりする作業だ。あと食事の配当だったり、患者の入浴に伴う掃除だったり、たくさんの仕事を教わった。

ちなみにだがシャバの基準で仕事をしてはならない受刑者は何事にもルールをつくりがちだ。最終的に完成していればいい、のではなくプロセスにまでレールを敷く。なのでその意味分かんないルールに準じた手順を覚える必要がある

幸いにもNさんは丁寧に教えてくれたので覚えるのも早かった。
Nさんには翌日朝から行う医務回診についても教えてもらった。
洗濯仕事を早々に終わらせたら、今度は生産工場を回る先生の同伴があるらしい。

スクリーンショット 2021-04-08 13.15.17

きっとこんな感じなんだろう。
そのため、指示された医薬品を滞りなく配るために医薬品の名前などを覚えないといけないらしい。ちなみに実物は部屋にないから名称のみ記憶する。

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これは入所している時にメモったノートだ。
(メーカーは当時のものなので、今はどうなっているか知らない。)
出所してからやっと使い道が来た。

こんな感じでとりあえず作業内容や医薬品など、覚えられるだけ覚えていたら消灯時間になった。
部屋でのサラ仕事もたくさんあるが、それは次回以降書きたいと思います。

そんなこんなで病舎看護係としての初日を終えたわけだが、必死すぎてあっという間だった。
でもこれから出所までを考えたら長い月日を刑務所で過ごすことになるから、やっぱり自分はバカなことをしたんだと改めて実感した。

今回も最後までお読み頂き本当にありがとうございました。
次回からは同じ毎日が続くので、マンネリ化しないようにイベントやクラブ活動などをメインに書いていきたいと思います。

川越少年刑務所 病舎看護係 1434番 ムショくん

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