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悪魔襲来 超短編

 私は魔界で産まれた。

 私は幼い頃から如何に人間が愚かで卑しい生物なのだと言うことを教えられ育てられた。

 成人した時、私は人類を根絶やしにする事に決めた。そして私はその為の努力を怠らなかった。

 基本となる体作りは勿論のこと、様々な文献を読み漁った。学ぶ事により合理的に人類を根絶やしにする事が出来るし、人間のことをより深く憎む事が出来た。

 更に私は塾を開き若者たちを教育した。

 私の元で多くの若者が学び、日々鍛錬を重ねた。

 長い時間、人類の事を憎み続けた私は人類に恐怖を与えないといけないと思った。ただ滅ぼすだけなら馬鹿でも出来る。

 恐怖に震え自らの過ちを悔いながら死んでいってもらわなければ意味が無いと考えるようになった。

 
 満を辞して私は自ら育て上げた選りすぐりの精鋭部隊を率いて人間界に来た。

 悪戯に人類を滅ぼすような事はしない。

 自ら現地に赴き調査をし、綿密に計画を練る。

 人類が一番恐怖する事を考えなければならない。


 調査を終え私は驚愕した。

 私が今まで考えていた計画が些末に見えるようなものを人類は既に完成させていた。

 ボタン一つで全て消し飛ばし無に帰せるものを自ら作り上げているではないか。

 これを利用すれば当初の予定通り人類を恐怖に震え上がらせ、その恐怖の中滅ぼすことは容易いと思った。


 だが、人類は誰も恐怖していない。こんなものが身近にあれば恐怖のあまり日々の暮らしもそっちのけになり、もっと破壊的な生活を送りそうなものだが、そんな風には見えない。

 ボタン1つで全てが無に帰えるのにも関わらず。

 私には理解出来なかった。なぜこんな危険な物を自ら作ったのか、なぜ誰も絶望していないのか。

 どちらにしても、これ以上の恐怖を私には創造する事が出来ないだろう。

 私は全ての計画を無に帰した。もはや人類には私が手を下す余地は無い。

 核の抑止力は絶大だ。

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