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禁断の果実 超短編

 宇宙に数多溢れる星の1つ、その星である会議が行われていた。

 我々は地球を征服することに決めた。
 あの豊かな緑や海、大地は我々にとって非常に魅力的だ。
 だが、問題は諸君も知っての通り我々はそれという武力を持ち合わせてはいない、個々の力もひ弱だし正面から挑めば必ず負けてしまうだろう。
 そこで皆の意見を聞きたい。いかに策略を用いて、策略だけで、あの星を我々が征服出来るような術を。
 会議は長引いた。他者多様の意見が飛び交い結論に辿り着くまでには、かなりの月日を要した。

 それでは、この方法を用いて地球を征服する事に決定する。
 すいません。あの、最終確認だけ宜しいですか?まず、それは森羅万象問わず滅ぼすものとの事ですが、他の動植物への影響は本当に大丈夫なのでしょうか?
 あぁもちろんだ。それは、まずヒト以外が手にする事は無い。
 ヒトとは万物創世の時のバグのようなものだ。
 他の生き物は光合成や、爪や牙、毛皮などそれぞれ長所を兼ね備えているのに関わらずヒトは手先が少し器用なくらいで知恵が全くない。
 植物の声を聴くことはおろか、他の動物の声も一切理解出来ない。あの甲高い鳥の声さえもだ。
 知恵も無いくせに欲望のまま他人を傷つけたり殺したりする。全く理解に苦しむ種だ。つまりヒトさえ排除出来れば我々の計画は成功したも同然なわけだ。これさえヒトに与えてしまえば、後は勝手に自滅してくれるだろう。
 承知しました。それでは早速現地に向かい実行致します。


 そして、彼らは地球に行きアダムという青年の前で火を付けアダムにそれを与えた。
 アダムは初めて見る火に魅了された。
 他の動植物達はアダムにそれは危険だ、それを使用してはならないと皆で説得したが、ヒトとは知恵が無いもので他の生き物の言葉が理解できない。

 アダムは仲間の元に火を持ち帰り使用を勧めた。
 火はあっという間にヒトの世界で広がった。

 その後の経過はどうだ?
 はい。ヒトは我々が思うより愚かでした。
 火を与え自滅させるという計画自体は概ね成功です。が。
 が?なんだね?報告しなさい。
 はい。それでは、経過を要約いたします。
 ヒトは火を使いまず様々な物を加工しました。それは、やがて衣食住全てにおいて欠かせないものになりました。
 その便利さや豊かさに妄信したヒトはそれらを独占したいが為に、次に他民族を攻撃する武器として使用しました。見せかけの豊かさに踊らされ自らの命を絶ったりもします。

 そこまでは、概ね計画通りと言えるでしょう。後はヒト同士で勝手に自滅し合ってくれるのを待つだけです。

 ですが、問題が起こりました。ヒトの火の使用の方法がお粗末すぎたのか、木々や植物を枯らしそれでも火を燃やし続け生態系のバランスを台無しにしてしまいました。大気や海は汚染され、動物たちも多くが絶滅の道を辿りました。循環する美しい星の形は、最早見る影もありません。
 もちろんそうでない場所もあるのですが、全体的に見て地球の寿命はほぼ尽きかけています。
 なるほど。想像以上に酷いな。知恵が無いことを利用しようとしたが、ここまでとは。
 はい。想定の範囲外でした。正直我々にこの星はもう価値が無いかと思います。

 なるほど。火は、やはり禁断の果実か。少しばかり責任を感じるが仕方ないだろう。撤退しよう。

 こうして人類は宇宙に数多溢れる星の1つからの支配を免れた。

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