【読書】時間は存在しない

●感想

重力の説明で「時間がゆっくり経過するほうに移動する」というのは初めて聞いた気がする。物質が薄まって一様になっていくと重力は無くなる=過去と未来の変化が無くなる=時間の変化が無くなる。
ただそれも人間がその部分に着目しているからで、違う視点だとエントロピーの変化が無かったりもする。人間も人間の環世界の中で生きているわけで、すべてを見ることはできないし、たまたま見えてる世界に着目した時にエントロピーの増大を感じ、その結果時間というものが生まれている、ということか。
「今」を共有できるのは地球規模というのは興味深い。これは宇宙のどの場所でもそうなのか、地球に住んでいるから=地球の重力での時間変化の中で生きているから地球規模なのか、どっちだろう。
分かったようで分からないが、時間に関して新しい考え方を知れた。

●アクション

●気になったポイント


時間の流れは山では速く、低地では遅い。数センチの差によって生じるズレも計測できる。
物体は周囲の時間を減速させる。地球の質量は巨大なので周りの時間の速度は遅くなる。平地のほうが地球の中心に近いから減速が大きい。
物が落ちるのは時間の減速のせい。時間がゆっくり経過するほうに向けて動く。
平地と山の時間tはどちらが正しいか。ドル円のように相対的なもの。本物の時間は存在しない。無数の時間がある。
相対性理論には無数の時間がある。
物理学は事物が「時間の中で」どのように進展するかではなく、事物が「それらの時間の中で」どのように進展するか、「時間」同士が互いに対してどのように進展するかを述べている。

物理法則は過去と未来は区別できない。熱が絡んでいる時だけ過去と未来の違いが表れる。ボールは落ちたあと跳ね返り勝手に戻ってくることができるが、熱はそうはいかない。
転がる球が止まるのは摩擦によって熱が生じるから。それにより過去と未来の違いが出る。
一方通行の不可逆な熱工程を測る量がエントロピー。
熱は熱いところから冷たいところへ流れる。逆は無い。
トランプのカードを秩序だった順番=エントロピーの低い状態から切っていくとエントロピーが増大する。ただ「秩序だった順番」というのは例えば前半の26枚が赤、後半が黒という場合「色」に着目するから。それが「昨日と同じ順番」などを考えると全てパターンが同等になる。事物のミクロな状況を観察すると過去と未来の違いは消えてしまう。
ボルツマンは世界を曖昧な形で記述するからこそエントロピーが増大するということを示した。過去と未来が違うのは自分たちの視界が曖昧だから。

動いている人間はあまり年をとらず、時計の刻みが遅くなり、考える時間が少なくなる。
例えば4光年先の惑星にいる人の「今」というのはいつのことなのか明確に分からない。今ここでの「現在」に対応する特別な時間は存在しない。
人間がかろうじて識別できるのは1/10秒くらいで、地球全体は「現在」として認識できる。それより遠くに「現在」はない。

時間には最小値が存在する。その値に満たないところでは時間の概念は存在しない。時間は連続ではなく離散的。

この世界は物ではなく出来事の集まり。
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宇宙のエントロピーが最初は低く、そのため時間の矢が存在するのはおそらく宇宙そのものに原因があってのことではなく、わたしたちのほうに原因がある。
天空が回転しているように見えるのは地球上のわたしたちが特殊な動き方をしているせいで視野に影響が生じているから。時間の矢についても同じことが言える。わたしたちは宇宙の性質の極めて特殊な部分集合を識別するようにできているせいで時間が方向づけられている。
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必要なのはエネルギー資源ではなく、低いエントロピーの資源。低いエントロピーが無ければエネルギーは薄まって一様な熱になり、世界は熱平衡状態になって眠りにつく。過去と未来の区別は無く、何も起こらなくなる。
地球に入ってくるエネルギーと出ていくエネルギーの量はほぼ一緒。
過去の痕跡があり、未来の痕跡が無いのは過去のエントロピーが低かったから。過去と未来の差を生み出すのはエントロピーが低かったという事実以外に無い。痕跡を残すには動くのをやめる必要がある。これは非可逆でエネルギーが熱に劣化する時に限って起こる。

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