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「いぶし銀のような」-エッセイ-

〜50音でつづるエッセイ〜
今週は「い」から始まるテーマでお送りします♪

きらきら輝やく銀に、硫黄のすすで曇りをつけると、表面の光沢が失われて、何とも味わい深い灰色になります。
それが「いぶし銀」の元の意味。

銀は時間をかけて燻すほど、渋く奥行きのある味わいとなり、独特の魅力がかもし出されます。

このことから「いぶし銀」という言葉は、きらきらとした華やかさはないけれど、魅力的な物や人などを意味するようになりました。

実力や経験を備えていることが前提の「いぶし銀」という表現は、ベテランと呼べるだけのスキル・能力や確かなキャリアを称賛したい場合などにも使うことがあります。

野球なんかでも、使われることありますよね。(とは言え、パワプロのゲームくらいしか野球知識がないため、それについては割愛します)

そんな「いぶし銀」という言葉ですが。
女性に対しては、年齢を重ねたことを感じさせてしまうためか、用いられる事がありません。
というか、おそらく褒め言葉のつもりで使っても、失言扱いされると思います。
あと、若い人に対してもあまり使わないですね。

そこで、ちょっと思ったんです。
もっと性別や年齢に関係なく、色々な経験を経て、その人にしかない魅力や味わいをもつ人を称賛する言葉があってもいいのではないかと。

「いぶし銀」の類語としては、例えば「渋い」。
これも……何となく、ダンディなオジ様に使うイメージが強い気がする。 
ジブリで言うと、ナウシカに出てくるユパ様的な。

他に……「苦み走る」「いい味が出ている」。
うーん。どれもピンと来ない。
そもそも、賞賛と受け取ってもらえるか微妙なラインの言葉。

そもそも「いぶし銀」という言葉自体は、とても美しくて素敵な言葉だと思うのです。
日常で使える相手が限定されてしまうのが残念なだけで。

銀という金属は、手入れせずに放っておくと、経年で黒ずんでしまいます。
それを敢えて燻してしまうことで、銀色の輝きは消えてしまっても、渋さや奥ゆかしい魅力が感じられるような味わい深い色になるのです。

年を経るごとに、躍動感あふれるキラキラしたエネルギーは少しずつ失われたとしても。
何かに傷つくことや人に言えない苦労を重ねたとしても。
さまざまな経験を経て生み出される、その人にしかない魅力や奥深さを讃える言葉なんですよね。

noteでも素敵な方が沢山いらっしゃって。
この場を借りて賞賛の言葉を送りたいのに、なかなかしっくりくる言葉がないのが悔しいです。

私自身はというと。
まだそんな深い味わいは出せないというか。
体は大人、中身は子どもみたいな逆コナン君状態で……。
なかなか年相応の落ち着きや思慮深い態度が身につかず、お恥ずかしい限り!

それでも、いつかきっと。

誰かに「いぶし銀みたいな女性ですね」と言われて「ありがとうございます」と微笑みながらも誇らしげに胸を張れる、そんな歳の重ね方をしたいなと思っています。

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