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「雨の匂い」-エッセイ-

〜50音でつづるエッセイ〜
今週は「あ」から始まるテーマでお送りします♪

雨の匂いって感じたことありますか?

特に、強く感じるのは雨の降りはじめの、土やアスファルトの地面から立ち上る独特の香り。

個人的にいい香りだなとか、大好きな匂いだとかまでは思わないのですが。
何となく懐かしいような、どこか切ないような気持ちになります。

私が以前、図書館で働いていた頃のこと。
雨の匂いにとても敏感な先輩がいたんです。
図書館の本は、湿気がとても苦手。
だから、換気のために窓を開けていても、雨が降ればすぐに閉めないといけません。

たいていの人は降り出しててから、慌てて館内の窓を閉めて回るのですが。
その先輩は「あ、雨の匂いがするから今すぐ窓を閉めなくちゃ」と、降り出す数分前に窓を閉めに行き、その後にザーッと急に雨が降り出すなんて事がしょっちゅうありました。

「よく降る前から分かりますね」と感心して言うと先輩は「なぜ、みんなは分からないんだろう?」と心底不思議そうに首を傾げていました。

「降りはじめの匂いなら分かるんですけどね」
「いや、あれは雨というよりアスファルトの匂いでは?」
「私は土の匂いだと思うんだけど」
など、みんなで盛り上がったものです。

そんな折にちょっと調べてみたのですが。
実は、あの雨の降り始めの匂いには、ちゃんと名前がついているんだそうです。

「ペトリコール」というギリシャ語に由来する”石のエッセンス”という意味の名前。

何だか、とても素敵な名前じゃないですか?
誰がそんなオシャレな呼び名をつけたの?って調べたら、なんと鉱物学者さんでした。
なるほど、どおりで……?!

もう少し詳しい話をすると。
この言葉は、1964年に鉱物学者のベアとトーマスという人が発表した論文の中で用いられた「造語」だそうです。

論文では、長い間日照りが続いた後の最初の雨に伴う独特の香りをペトリコールとして定義しています。

さらにその論文では、

“雨が降り始めたときに地面から立ち上る匂い”は、ある種の植物から発生した油が乾燥した土や石に付着し、その油が雨にあたった瞬間に細かな粒子となって舞い上がることで発生する

というふうに書かれています。

雨が降る前に予知できた(?)先輩は、もしかすると遠くの雨の匂いが風に乗って漂ってきたのを、敏感に捉えていたのかもしれませんね。

石のエッセンス……「ペトリコール」

普段の生活で、「あ、ペトリコールだ」とか使うことはなさそうですが、何となく雨が降ったときにでも、この話を思い出してみてください。

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