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2話・1話完結 使われない部屋 怖い話シリーズ

 姉のしょうもないが電撃的な話から始めてしまったシリーズだが
次は私の友人Sから聞いた話だ
人から聞いた話なので実話かどうかはわからないが
ここに書く全ての話は一応「実話」のていをとろうと思う
聞かせてもらってる以上、それが礼儀だ
余りにも創作じみた話はしないでおく

さて、Sは私の高校の頃の同級生で当時は仲良く話すもののそれほど親密ではなかった
卒業して、お互い結婚して、彼女の夫がとんでもないDV野郎だったことから相談に乗り
離婚に至るまでの間に仲良くなったのだ

子供がいる身でシングルマザーになった彼女は恐ろしいくらい前向きな女で
そのバイタリティは見ている者を圧倒する

素早い働きで子供らを保育園に突っ込むと、はや正社員の仕事に就いた
まさに瞬く間というべき速さだった

「働いてお金さえ貰えりゃいいの
水商売だと子供が何言われるかわかんないし、見つけられただけでも幸運!
さすがハローワークなだけあるわー、まさにこんにちは仕事だよ!」

ハローワークを日本語訳したあと快活に笑うSをみて私も安堵していた
彼女が忙しく働いている同時期に私も乳飲み子を抱え育児に奮闘
あっという間に半年が過ぎ、その間ほとんど付き合いはなかった

そんななか突然
「聞いて欲しい話がある」
とSからLINEが

私はすぐさまSに電話をかけた
こちらの心配をよそにSは元気いっぱいに
「あんた怖い話まだ聞きたい?」
ときた
大分前のやり取りでそんな話を振っていたのだ
二つ返事で答えると……

ここからはSの喋りにお付き合い願いたい

前にあたし、就職したじゃん?
そこ清掃請負業なんだけど、基本的には直行直帰なわけ
でも正社員だと会社に寄らなきゃいけないことも多いから
しょっちゅう入り浸ってたのね
で、他の社員さんやパートさんとも仲良くなったんだけど

……なんか変なのよ
違和感つうか、アレッて感じで
最初はどこから違和感を感じるのかわかんなかったんだけど、しばらくして気づいたの
アレ?誰も触らないドアがあるなって

対して広くもないオフィスに、使われてない部屋があるって変じゃない?
だから社員さんに
あのドアの部屋ってなんですか~
って軽いノリで聞いたら

あ、Sさん知らないのか
あの部屋は使ってないんだよ
入っちゃダメだよ

てさ
答えにもなってないし、変でしょ
気になったから古株のパートさんに聞いてみたわけ
そしたら「あそこは入らない方がいいよ……ヤバいから」
ってね
もうそこからは俄然興味わいちゃうじゃん

でね
社員さんやパートさんいない昼時を狙ってとにかく見てみようって……

ドアノブ握ったら拍子抜けするくらい簡単に開いてさ
中を覗いたのよ

そしたら……
ブラインドもない狭い四畳半くらいの薄暗い部屋の真ん中に
部屋の大きさにはそぐわないバカでかい木製の祭壇があってね
ナニコレ?
ってな感じで近寄ると、真ん中に集合写真が飾られてて
それが古い、高校生くらいの子達の集合写真でね
写真の左側には丸くてデカい鏡が立てかけてあって
右側にはとっくりと透明な液体の入った盃があって……

その時点でこれはヤバいなって思ったんだけど
その集合写真ね
よく見てみると
数人に赤いマーカーでバツ印が付けられてるの
顔にね
ゾッとして身を引いたら……
左側にあった鏡に女が映ってた
間近に覗き込むみたいにして私を睨んでた

……いや、若くはなかった
お婆さんなんだけど、鬼の形相で……

あんまり怖くて抜けそうな腰、無理やり立たせて
すみませんすみませんって謝りながらヨロヨロ扉閉めた瞬間
会社の、社長の席の電話が鳴ってさ
ドキドキする心臓抑えて留守を告げなきゃって必死に受話器を耳に当てたら

「明日からもういいわ」

ってお婆さんの声でガチャ切りされたの

見てたんだなってわかった
あの鏡の婆さんなんだなって

Sがひとしきり話し終わって
私は質問した

で、辞めたの?

そう、辞めたの
事情はわかるよね、とか社長に言われたわ
最後まで目も合わせてくれなかったけど

パートさんも見てたのに、なんもなかったの?

いや、後から聞いたらさ
部屋入ってないんだって
ちょっと開けて覗いたら祭壇があって怖くなったみたい

へえ……そんなんならカギ掛けりゃいいのに

本当だよね
でもそうやって、好奇心旺盛な人間を見張って辞めさせてるのかも

え?何でよ

多分……そういう人は鍵かけても入ろうと首突っ込むし……
やってること邪魔されたくないんじゃない?
あの婆さん
あの部屋じゃなきゃ完成しないんでしょ



完成ってなにが?



……呪いが

Sは事も無げに言い放ち
笑っていた



今現在Sはなんの影響もなく
元気にキャディーさんとしてゴルフ場を駆け回っている








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