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思ったよりも

「思ったよりも寂しくない」という曲がある。
わたしの好きな、櫻坂46さんの曲。
(MVの天様が可愛いのでこれを読んでいる人はぜひ見てね)

この曲を狂ったように聞いていたのはいつだっただろう。

今夜、本当についさっき、勉強の合間に久しぶりにこの曲を流してみた。
特に理由はないけどなんだか聞きたくなった。
東京のじめじめとした夏の匂いと北欧独特の秋のひんやりした空気に一瞬包まれた気がした。


留学前、そして留学が始まってしばらくの間、人と関係性を維持することに苦手意識があった。
これを書いている今も、苦手だ。

一人でいることが楽だし、知らない人と何を話したらいいかわからないし。
友達になれないわけではないけれど、一度会って、二度目にまた会おう、となるような関係性をなかなか築けなかった。

留学前は、知り合いが誰もいない土地でも強く生きたいと思ってこの曲を聞いていた。
大学への道のり、バイトの帰り道、買い物の途中、電車での移動中。
出国日が近づくにつれて聞く頻度も増えた。

「覚悟してたより平気だったかも 意外に強かったんだ」
になりたいなと思っていた。

わたしには心を許せるような友達はできないだろうから、一人でも、孤独でも耐えられる強さがほしかった。
寂しがりで、だけど見栄っ張りで「寂しい」を素直に認められないわたしにいちばん必要なものだった。


留学先に来てからは、一人でも寂しくないということを自分に言い聞かせるためにこの曲を聞いていたように思う。

「思ったよりも寂しくはないよ 一人で歩いてたって」
この歌詞を、何度口ずさんだだろう。

留学前の自大学での事前研修では「家に引きこもっていないで、積極的に!」「友達を作ろう!」みたいなことを指導されていた。
こう見えて言われたことは真面目にこなす堅い大学生なので、こちらに来てしばらくはそれを実践しようと頑張っていた。
「友達を作らなきゃ」という強迫観念に駆られてしまうだけでただ疲れてしまい、徒労に終わった。

人間関係というのは多少の意図性はもちろん必要。
でもきっと、頑張って作るものじゃないんだなと悟った。
そんなわたしにもありがたいことに仲のいい友達は数名できたけれど、たくさんの友達を作って、いわゆるキラキラ留学生活を毎日エンジョイしている人たちを観測しては、劣等感に駆られていた。

そんな自分を無理に肯定するために聞いていた気がする。
その時はこの曲が心の支えでもあったけれど、今考えると相当に苦い思い出である。

そして今日、この曲を久しぶりに聞いてみた。
留学を通して「意外に強かったんだ」になりたいと思っていたけれど、7ヶ月目時点では到底なれそうもない。
でも、もしかしたらそれは幸せなことかもしれないな、と思った。

「意外に強かったんだ」になるためには孤独に耐える強さが必要で。
「思ったよりも寂しくはないよ 一人で歩いてたって」になるためには一人であることが必要で。

今のわたしの生活には大切だと思える人、帰国後も絶対に縁を途切れさせたくないと思える人、何かあった時に頼れる人、素直に甘えられる人がたくさんいる。
だからこそ、この歌詞に共感を求める必要もなくなったのだと思う。

7ヶ月の間で友達を作ることに固執するのをやめて、好きだなと思った人たちと自分のペースで関わるようになった。
無理をせず、背伸びせず、ちょっとずつ距離を詰めていくことにした。
疲れちゃったから。
そうしたらなんだか心地の良い人間関係ができていた。
頑張らないことが吉に出ることもあるんだな、ということを学んだ。

ずっとなりたいと思っていた「意外に強かったんだ」にはなれなかったけど、それはもうわたしが一人じゃないから。
孤独を感じなくていいから。
誰かがいてくれるから。
だからこそ成立する、前向きな「なれない」だなと気づいて、ちょっと嬉しくなった。
もちろんたくさんの人と知り合いなわけでもないし、むしろいまだに友達は少ない方だし、一人の時間もたくさんあるけれど、人間関係で「満たされている」という感覚が自分の中に芽生えている。

幼稚園の頃からシャイでひねくれた性格をこじらせにこじらせまくり、人間関係で
悩みが絶えない人生を送ってきたわたしにとっては新しくて、そしていまだに現実なのかどうかもにわかに信じがたい感覚である。

「思ったよりも寂しくない。」

今までは一人でいることを前提で聞いていたけれど、今は誰かがいるからこそこの言葉に共感できる。


ちなみにこの歌には
「今の幸せは過去と未来の途中」
という歌詞もある。

また時間をおいて聞いてみたら、違う捉え方をするようになるのかな。

未来のわたしは、どんな気持ちでこの曲を聞くようになるのか。
不安なような、楽しみなような。
知りたいような、知りたくないような。

とにかく、同じ曲を通して、自分が見ている世界が変わっていることに偶然気づけた日でした。

おわり :)














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