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たのもーーーう!(ドンッ)

 かとうひろみ・UNI・3月クララ(わたし)は、文芸ユニットるるるるんとして、月一回ツイッターで掌編小説を発表しています。
 コンセプトは、ワン・スプーンの料理が三つ。ひと口で頬張れる小さなごちそう。あるいは、次の電車を待つあいだ。お風呂にお湯がたまるまで。コーヒーを一杯分。日常の小さなひとときに、ひと口でちょうどいい文学。

 それが、この『3spoons』です。

 ZINE発行を予定しているわたしたちの活動を広く知ってもらうためのプロモーションのつもりで始めた『3spoons』でしたが、回を重ねるごとに、書く筋トレ、文学の千本ノック、感受性のサウンドチェックの場に変容していきました。
 フォロワーから出される気ままわがままな「お題」を400字で打ち返す。受け身で拾ってすぐさま攻めに転じる。そんな瞬発力を磨かせてもらっています

 かとうひろみさんは、チェコ語の翻訳と長編小説を書くことををライフワークとする傍ら、SNSで展開されている「インディーズ文学Battle」で外国文学の翻訳物のように洗練された傑作の数々を編み出していて、すでに固定ファンがつくレベル。手芸品のような作品を、かとうひろみは編む、縫う、織る、染める、結んで、ほどく。
 会社勤めに向かず、「仕事できないウーマン」と自称しているかとうさんに、それなら一刻も早くプロの小説家になるしかないよ、と葉っぱをかける。実際そうなるだろうと信じている。

 UNIさんは、毎日noteを更新している。もし誰かがUNIさんの作風を真似したら。それはいかにも奇をてらった作品になってしまうだろう。UNIさんの突拍子のなさは、バグが起きたときのように困惑させ、ギターのフィードバック・ノイズのように耳ざわりが悪く、何が入っているかわからない異国の料理のような不穏さを帯びている。けれど、内臓を振動させる轟音やパクチーはクセになりがちだ。そんなおもちゃ箱のような文章で、自分を軽んじた人や事柄への抗議を中和しているように思う。UNIさんは怒っている。公平じゃない世界を、合成甘味料でベタベタにしている。
 UNIさんは料理が得意ではないというけど、その文学は超ワイルドでケミカルな創作料理のようだと、わたしは思っている。

 わたしはというと。もともとUNI、かとうひろみのユニットだったるるるるんに、マネージャー兼秘書として迎え入れられたのが始まりだった。そのあと書いた記事を気に入ったふたりから、書き手として参加してほしいと請われ、じゃあやっちゃいますかと小説を書いてみることにしたのだった。
 遊びで短い文章を書いたり作詞をしたりなどの経験はあったものの、月一回『3spoons』でふたりの作品と並んでも遜色のないものを書くのは大変なプレッシャーだ。
 これまで発表してきた「商店街」「カレンダー」「フルーツ牛乳」「アトマイザー」そして今回の「嘘」。たった400字の掌編小説に、どれもたっぷり一ヶ月弱かけてしまっている。かとうさんの「クララは慎重すぎる」という激励に、ごもっともです、としか返せない。

「文学の千本ノック」と言えるほど、まだまだリズミカルに捕球できてはいませんが、ここは文学の道場。
 「たのもーーーう!」と門を叩き、わたしたちは出されたお題と向き合い、道場破りをして参りたいと存じます(ドンッ)




 

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