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お菓子業界の労働環境について

昨日から騒がれている有名店のエスコヤマさんに見る、お菓子業界の労働環境について。


僕たちお菓子業界は小山さんの様な一流パティシエが一時代を作ってきたのは事実で、『一人前になるまでは我慢』と言う意識で業界が成長してきた。

でも、生産性と価値観の変化という点で限界が近いと思う。
時代の変化に対応出来なければ、生き残れない。


まず生産性という点では、僕らみたいな街のお菓子屋さんはショーケースを埋める為に、早朝から「少量多品種」の生菓子を作らねばならず、どんな繁盛店でも閉店後一定数の廃棄が出る。

1種類のお菓子を100カット作るのと、10種類のお菓子を10カットずつ100カット作るのでは、それぞれの作業時間と現場オペレーションの習熟スピードが全く違う。加えて、接客もしながら季節ごとに新作を作ったり、イベントごとにオリジナルの盛付けを考えたりしていると、1日8時間労働では
足りないのだ。

物理的な商圏の限界もあるので1日の来客数も決まっている中、ビジネスモデル/人材育成という観点で生産性がとても低いと思う。

もちろんそれを承知した上で、好んで営業する街のお菓子屋さんはいる。

ただ、僕の肌感覚だと「このやり方しか知らないからこういう商売をしている」という言うオーナーシェフが多いと思う。

当たり前だけど、会社は利益を増やさなければ従業員さん達の労働環境を改善する事は出来ない。

一般的なパティスリーではパティシエとしての仕事を最低限こなせるようになる迄に、少なくても3~5年はかかると思う。一人前になるまでは5~8年以上掛かってしまう。

価値観の変化という点で言うと、幼少期からスマホが近くにあり、膨大な情報と触れ合ってきたZ世代が修行という価値観で8年間を費やしてくれるのか
という疑問を僕はこの1年間ずっと考えている。

うちのお店でも、創業者である父と2代目である僕の間で、本当に何度もこの話をしてきた。

そして、最近お互いやっとわかった事。

“この業界で育った人たちは「一人前になるまでは我慢」をさせる事が本人の為になる” とわりと信じ切っていること

↑これって、他人事として耳にするのと、当事者として向い合うとでは思った以上に色々違うんです(笑)

言葉では理解しても、腹落ちしていないし、経験もないから変わらない・・・

でも現場は変化を求めている・・・

そんな日々の中売上だけ上がっていくと、現場が悲鳴を上げ始める・・・

パティシエを目指す人は、10代のうちから修行としてパティスリーを回る。
長時間労働で休みも少ない為、物理的に他業界と接する機会が少ない。
構造として変化に対応する仕組みが弱いのかもしれない。

ある意味2021年まで業界がこうして成り立っているのは、働く側からも買う側からも需要があるからだと思う。

それでも、Z世代が社会人として会社に入ってき始めたこのタイミングで会社も変わらないとこれ以上の存続はないと肌感覚で感じている。

2021年新卒を3名採用して日々実感している事だ。

そこで僕たち洋菓子のプルミエールは、1年前から店舗販売の営業日/営業時間を週末の3日間まで減らし、ネット通販事業へのシフト本格的に進めている。

どんな綺麗事を言っても会社に利益が無ければ改革は出来ない。
だからまずは会社として利益を多く残せるネット通販事業に注力を始めた。

幸運にもコロナの波と重なりネット通販事業が大きく伸びた為、従業員数も3名から30名近くまで増えた。

そうすると、今度は交代で休みが取れるようになったので、(驚くかもしれないが)この業界ではまだ少ない週休2日制の実施と労働時間の短縮、有給消化100%、夏季/冬季休暇を長めにとる事が出来るようになった。

こうやって少しずつ労働環境が整ってくると、限られた時間内で仕事を終わらせよう!と言う空気も出てくる。

その繰り返しが全体的な生産性を底上げし、一人ひとりの責任感にも繋がる。

僕たちは今後も地元を中心に雇用を増やしたいと思っている。

その為には、『メンバーそれぞれがやりがいを感じ、活き活きと働ける職場』が絶対に必要だ。

うちのお店は僕と父以外は全員女性なので、『女性が活躍できる仕組み』も積極的に整えていくつもりだ。

こんな感じで、新しいお菓子屋さんのカタチを作っていければ面白いと思っている。

2021年11月4日

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