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化学者の分子量計算に特化した計算機アプリ-開発者インタビュー #03

今回は「元素の分子量計算機 molQulator」の開発者、篠原さんと福間さんにお話を伺いました。

molQulator(モルキュレーター)
化学専攻の学生や教員が行う分子量計算に特化した、iOS/Android向けの計算機アプリ。2017年に開発し、現在はAndroid版のみ提供。

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対談メンバー
篠原雅貴@shino-tp):PrAha Inc. CPO/エンジニア。クロスプラットフォームなアプリケーション開発を探求して早5年。cocos2d-xから始まり、Xamarin、Unityを経験。最近はFlutter。将来の夢はプロトランペッター兼プロ個人開発者。インストバンド空間工房(https://kukan.tokyo/) のトランペットを担当。
福間(ふくちゃん:都内のWebエンジニアとして働くしがないサラリーマンエンジニア。インストバンド空間工房のドラムを担当。

インタビュワー
松原(@dowanna):PrAha Inc. CEO/エンジニア。private修飾子が好き。


元素の分子量に特化した計算機

松原:まず、MolQulatorについてご説明いただいてもよろしいですか?

福間:元素の分子量に特化した計算機ですね。高校の化学で皆さんも習ったと思いますが、例えばH2Oの場合、水素の原子量(1)x2 と酸素の原子量(16)を足し合わせた18が、合計の分子量です。もともと僕は化学の研究室で電池の研究をしていたのですが、分子量の計算で苦悩することが多かったので、専用の電卓アプリを作りました。

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松原:めちゃくちゃニッチですね…(笑)素人質問で恐縮なんですが、分子量ってどうして計算する必要があるんですか?

福間:いい質問ですね〜。

松原:(池上さん…)

福間:例えば、電池の良し悪しってどう評価すればいいと思いますか?

松原:えっ…例えばスマホの充電池なら、一回の充電で携帯を何回フル充電出来るか、ですか?

福間:それじゃあ例えば、100回フル充電出来る巨大な電池と、10回しか充電できないけど凄まじく小さい電池。どちらの電池が欲しいですか?

松原:ズボンを突き破るくらいの大きなデンチが欲しいです

福間:それはさておき

松原:はい

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福間:電池の性能を評価したいとき、容量だけでは純粋な比較ができないので、1グラム当たりにどれだけの電気を蓄えられるかという指標を使います。これを放電容量と言うのですが、この値を算出するときに分子量を計算します。

松原:へー!実際、どんな化学式なんですか?

福間:例えばLi-Ni系の電池ならLiNiO2=97.631みたいな分子量を計算して、この分子量を使って比較しますね。

松原:たしかに、いちいちLi、Ni、Oの分子量を調べるのは大変ですね…。

福間:そうなんです。当たり前ですが研究においてデータは重要なので計算ミスは許されない、でも計算式が長くなるほど電卓だと打ち間違いが起きやすいし、毎度調べるのも時間がかかります。同じ研究室の仲間も「うわーまた間違えたー」とか叫んでたので、どうにか解決したいなと。既存の分子量電卓もあったのですが、PC前提だったり、いまいち見た目がイケてなかったんですよね。

松原:PC前提だと何か不便があるんですか?

福間:ノートに色々書きながら調べることが多いので、片手で操作したいんですよね。あと頻繁に起動するので、その度にPCを開いて、ブラウザでアクセスして・・・というのは億劫でした。

松原:なるほど!だからアプリなんですね。実際、作ってからの反響はいかがでした?

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福間:研究室の仲間には非常に好評でした!今でも使ってくれてます。それに色々とフィードバックをもらえたので、作っていて楽しかったです。

松原:例えばどんな意見があったんですか?

福間:同じような化学式から分子量を計算することが多いんです。それなのに、一度計算したら結果が消えてしまうのは手間なので、履歴機能を追加しました。こうすれば前回の計算結果が残るので、再度同じ計算式を入力する手間が省けます。

松原:おおー!これは分子量計算機ならではの機能ですね!

福間:あと、iPhoneの電卓に似せたUIにしてみました。普段使い慣れてるツールに似たUIにしておけば、学習コストが軽減できると思って。やっぱり身近にアプリを使ってくれる人が居て、すぐフィードバックをもらえるのは個人制作の楽しさですよね

松原:他には何か言われました?

福間:広告がウザいって言われました。

松原:聞かなかったことにします。

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Xamarinでクロスプラットフォーム開発

松原:今回のアプリは企画が福間さん、開発が篠原さんで分業していたんですか?そもそも二人はどこで出会ったんですか?

篠原:当時同じ大学に通っていて、ビッグバンドサークルが一緒だったんです。学部は違ったんですが、彼が「こんなアプリを作りたい」と相談して来るようになって。話をしているうちに気が合い、彼が僕の家に居候し始めて、気づいたら開発を手伝ってました。


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松原:個人開発してたら先に同居人が出来るって、なかなかハードコアですね。でも同じ屋根の下なら、色々と会話しやすそう。

篠原:そうですね。企画は主に福間に任せ、僕はロジックやUIをXamarinで実装しました。

松原:へー、Xamarin。珍しいですね

篠原:ちょうど学生時代にインターン先でXamarinを使って開発していたので、知見を流用しやすかったんですよね。あとクロスプラットフォームで開発できるので、iOS版をリリースした翌日にはandroid版をリリースできました。

松原:やっぱりクロスプラットフォーム開発は良いですよね。iOS版を作り終えた後に、全く同じものを作り直す気力は個人開発だと起きない…。

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篠原:もし今から改めて作るとしたらWEB版のPWAを出したいなーと考えています。分子量計算したい研究者が困ったら、まずWEBで検索しますよね。もし見つけたら、使い勝手イマイチなPC版でも我慢して使ってしまうのでアプリストアまで来てくれない

そもそも「アプリがあるんじゃないか?」と考えてくれる研究者は少ないので、ASOしても効果が薄いというか。PWAならホームボタンにも追加できるし、使い勝手も悪くないので、アプリへの入り口もかねて用意しておきたいです。

松原:でも片手で使えたり、すぐ起動できたり、履歴が残ったり、化学研究者が起案しただけあって、痒いところに届く良いアプリだと思うんですよ。大学の研究室とかに売り込まなかったんですか?

福間:僕はこれが初のアプリだったので、「初のアプリができた!」という喜びで止まってましたね。今思えば売りに行けばよかったな…

松原:今からでもいけるんじゃないですか?このアプリなら言語も関係ないし、海外の化学系研究室に宣伝メールを送ったら「cool JAPAN! Beautiful!」とか言って使ってくれると思います!

篠原:「(世の中を舐めてるんだよなぁ)」

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福間:でも確かに「もっと現場を改善しよう、効率化しよう」って気概が薄い業界だと、プッシュ型訴求の方が有効かもしれませんね。向こうから調べてもらうのを待つのは難しそうです。

松原:これからの展開に期待ですね。では、最後に読者の皆様に一言お願いします。

福間&篠原:ダウンロードしてください!

松原:すごく潔い

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