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優れた交渉術とは?「強いフリーランス」になるための考え方を、年収1000万超えのフリーランスに聞いてみた!

こんにちは。
コンビニアイスのパッケージをいつも凝視してしまう、すだです。

私はライティングや企業広報のお仕事をしながら、イベントの企画・司会などもしています。

先日、下記テーマのオンラインイベントを開催しました。

この記事はイベントの内容をまるっとまとめたものです。

・フリーランスの方
・交渉が得意ではない方
・交渉したいけれど、どうアプローチしたらいいか分からない方

そんな方に読んでいただけたらうれしいです!

イベントゲストの「山田さん」とは?

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山田さんのプロフィール:
同志社大学哲学科卒業後、3年半の会社員生活を経て、2007年にフリーランスとして独立。独立当初は自己破産寸前になった経験もあるが、稼ぐための仕組みを身につけてからは1000万円を超える年収を維持。

専門分野はWebマーケティング。コンサルティング、広告運用、Web管理の他、自分の所用するメディアからの広告収入、セミナー講師、著者印税、イベント売上など複数軸の収入を持つポートフォリオワーカーでもある。

FIREも達成済み。

著書に
『フリーランスがずっと安定して稼ぎ続ける47の方法』(日本実業出版社)
『神速で稼ぐ独学術』他

収入源を複数持つ「ポートフォリオワーカー」

――山田さんの著書、愛読しています。お会いできてうれしいです。早速なのですが、普段どんな仕事をしていますか?

Webのマーケティング、コンサル、広告運用、宣伝会議の講師を定期的に務めています。SEO研究用に個人的なWebサイトを30個運営していて、その広告収入や米国の個別株による収益もあります。株式投資では様々な銘柄の組み合わせをポートフォリオといいますが、複数の収入元を持つ僕はさながら「ポートフォリオワーカー」といえるんではないでしょうか。

――うらやましい限りです。仕事の依頼は、どのように来ることが多いですか?

Facebookからの仕事の依頼が多いです。コロナ前はコワーキングスペースで仕事の依頼を受けることもありました。

――コワーキングスペース?

コワーキングスペースには、作業場だけじゃなく休憩室のような自由に集える場所がありますよね。そこで話す機会があったり、イベントのあとで「〇〇をされているんですか?」と話しかけたり、話しかけられたり。知り合った方から仕事の相談をされることがありました。相談ではお金をもらいませんが、仕事に繋がることもありましたね。

――コワーキングスペースの利用が仕事につながることもあるんですね…!依頼される仕事は「やってほしいこと」が細かく決まっていますか?

具体的に内容が決まっているものが7割、ふわっとした内容のものが3割くらいですね。

「変化のイメージ」を共有する

――新規のお客様と「一度仕事の話をしましょう」となったあと、最初の打ち合わせで意識されていることはありますか?

最初の打ち合わせで細かいお金の話はしません。一通り話を終えてから「じゃあ、見積もりを出します」と伝えて。費用感を聞かれたら「20万~60万円」と幅広く伝えます。話を聞いて一度持ち帰り、ゆっくり考えてから具体的な額を決めていくことが多いです。

――金額の幅、かなり広いですね…!

予算がすでに決まっているケースもありますが、それ以外のコンサルやディレクションの仕事はこのくらいの幅を持たせます。伝えるときはお客様にイメージしてもらうために「こういう業種のこんな仕事のときは月に30万いただいていました」とこれまでの事例を出します。

――なるほど。事例を出してもらえると、金額に幅が出ることが理解できますね。

そうですね。

――お話のあとで具体的な数字「見積もり」を出すと思いますが、金額って難しいですよね。低すぎても自分の首を締めるし、高すぎると依頼してもらえないし…。

意識すべきは、その金額が「自分の欲しい額」だと思われないようにすることです。

――え、見積もりって「このくらいもらえるなら、やります!」という額ではないんですか?

自分の欲しい額で値付けをすると、上手くいかないことが多いです。見積もりを出す前にひとつ考えてほしいことがあって。それは「自分が関わることで、どう変わるのか?」をお客様にイメージしてもらうこと。

――どういうことでしょう?

お客様は仕事を依頼することで、望む方向に行きたい。変化したいわけです。だから「どう変化したいのか?」を聞く。そのうえで「一緒に仕事すると、こんな変化が訪れる」とイメージしてもらう。そうすることで伝えた金額に価値を見出してもらうんです。

――関わることで、どんな変化が起きるのか。起こしたいのか。ヒアリングするんですね。

はい。このヒアリングをしっかりやるだけでも意味があります。お客さん自身、ごちゃごちゃしていた頭の中が整理されて、変化が起きそうな感じがしてくるんです。未来のビジョンをクリアに、ポジティブにしてあげる。初めての打ち合わせは、このヒアリングを意識しています。

「見積もり」は最低ラインから3割以上、上乗せ

――まずはヒアリング。そのあと、見積もりの具体的な金額は、どうやって決めていますか?

金額設定は経験によりますし、打ち合わせだけでは業務量がはかれないこともあるので正直難しい。だから「この金額であれば仕事したい」という金額を最低ラインとして、3割以上をのせた金額で提案します。

――えっ!「引き受けたい金額」に3割上乗せですか?

はい。10万円で受けたいなら、13万円。20万円で受けたいなら26万円の見積もりを出します。

――つ、強い……。お客さんから「なぜこの金額なのか?」といわれたときは、どんな説明をされますか?

先ほどもお伝えしたように、そこでも他社事例をお伝えしますね。

――他社事例がない場合は……?

リサーチしたり、人に聞いたりして「●●さん(企業の名前)やほかの業種では●●円くらいが相場です」と言い切るのがいいんじゃないかな。

――で、できるかな…

3割の金額を上乗せするのは「自分の見積もりが甘いから」です。「このぐらいで大丈夫」と思ったのに、実は大変だったということありませんか?

――ありますあります。フリーランスのみなさんは「あるある」な話ではないでしょうか。

僕らって、自分の能力を安易に見積もることが多い気がして。タスク通りにこなそうとしても、結局終わらないことがある。だから3割上乗せ。そこでようやく少し余裕が出るのかなと。もし「値下げ交渉」があっても、応じられますし。

――なるほど…

10万円というギリギリの価格設定をすると、下げられない。赤字というか、地獄案件になってしまう。でも13万円に見積もっておけば、1万円値下げしても仕事を受けられます。

――「見積もりは厳しく、3割上乗せする」。ちょっとハードル高いですが、覚えておきます!

「自分の成果」に敏感であれ

――ではここから切実な悩みに入っていきますが、仕事を受けてから想定以上に仕事が増えてしまったときはどうしていますか?

始まったものは、諦めています。少し多くなってもしょうがない。ポジティブな部分でいうと、僕は仕事のモチベーションが重要で。想定以上の業務が発生しても、お客様の売り上げに繋がる案件なら喜んでやってしまうときがあるんですね。純粋に結果に繋がることが楽しくて。だから仕事が増えても「まあいいか」となる。

――やりがいを感じて、逆に力が入ってしまうときもあるんですよね。

特に「今が勝負」なスタートアップ企業はプロモーションを増やしたい、コンサル増やしてほしい!と急なお願いが来ることも。そんなときは追加費用なしで引き受けることもあります。成果が出れば、自分の仕事の成果にもなるので。

――成果が出れば、また新たなお客様に費用感を伝えるときの事例として、紹介できますもんね。

そうですね。頑張ったことが成果になるかならないか、事例になるかどうか。そこは意識したほうがいい。僕はマーケティングの仕事なので、どれぐらい売り上げが上がったか?アクセス数が増えたか?はっきりしているので伝えやすいんですね。

――ほかの職種の場合は、何が成果になるでしょうか。

例えばライターの方なら、書いた記事が「検索エンジンで1位になりました」とか「30万PVあがりました」という事実は成果になります。その成果を次の仕事の糧にすればいい。だから「書いた記事はどのぐらい読まれてますか?」「よく読まれてる記事は何ですか?」など、どんどん聞いたほうがいい。お客さんも「一緒に考えてくれている」と感じますし、喜ぶと思います。

――私、ライターなのにアクセス数とか、まったく気にしてなかったです…!

ライターの方は自分が書いた記事の成果を気にしてない人が多いですよね。もったいないですよ。

――ぐはあ…、10年前に聞いておきたかった…

値段を変えずに、作業効率を良くする方法

――想定以上に仕事が増えてしまったとき、考えられる対応は「費用はそのままに作業量を減らしてもらう」あるいは「値上げする」がありますが、前者の対応として何かされたことはありますか?

複数事業を展開する企業のコンサル仕事をしていたとき、当時部署が6つあって、バラバラに打ち合わせしていました。そのミーティングを1部署15分にしてもらい、1日のスケジュールの中にまとめてもらえないか?と提案しました。

――打ち合わせをコンパクトにまとめて、お仕事効率化の提案をされたんですね。

はい。受け入れてもらえましたね。打ち合わせの数がまとまった時間に詰め込まれるので日程調整の手間も減り、一点集中で仕事をこなせます。当日はものすごく疲れますけどね(笑)

――「今日はやるぞ!」な1日になりますよね(笑)

さらにいえば、こうした仕組みで一度上手く回ると、お客様は他の人に頼むことがなくなります。なぜかというと6部署の業務内容をすべて理解して回してくれるから。一から同じ業務を請け負ってくれる会社(人)を探すのは大変なので「これからも山田に全部任そう」となる。

――効率化の提案をしたことで「この人でなければ」という状態を作り出す。そんなこともできるんですね。

「値上げ」を阻む、アンカリング効果

――ではここからは「値上げ」のお話を伺っていきたいです。山田さんは継続中の案件で途中から「値上げ交渉」されたことはあるんでしょうか?

あります。成功したこともありますし、切られてしまったこともあります。だから僕は切られる覚悟で交渉します。「値上げ交渉」って本当に難しくて。逆の立場で考えると分かるんですが、頼んだ仕事を途中から「もう少し価格を上げて」といわれたら嫌ですよね。値上げの理由がないと、難しいんですよ。

――山田さんが値上げして成功したときは、何か理由づけをされたんでしょうか?

7年継続してくれたお客さんに値上げ交渉して成功しました。それまではリーズナブルな値段でやっていましたが、さすがにそろそろ上げてもらおうと「今は他社でこのぐらいの金額でやってます。値上げさせてもらえませんか?」と交渉したら「いいよ」と承諾してもらえました。

――知識や経験が増えて、提供物の質が上がったと自己判断できれば、それを材料に交渉して成功することもあるんですね。

そうですね。ただ基本的に値上げ交渉の成功は難しい。引き継ぎの人を探すのが面倒とか、そんな状況でなければ成功しないと思います。代わりが簡単に見つかるなら「別にいいや」となるので。実はこれ心理学で「アンカリング」といわれているものです。

――アンカリング?

「この人はこの値段」とイメージがついてしまうと、そこから動けない。その人の無意識が「山田への発注は月5万円」というイメージになると、僕はもう5万円の人間になってしまうんです。そこで「8万円でお願い」といわれるとすごく高くなったように感じる。これが心理学のアンカリング効果です。アンカーがかかった人の頭の中を変えるのは、ものすごく難しいと一般的にいわれています。

――…だからこそ「最初の見積もりで上乗せ」になるんですね。

そうなんです。値上げは新規の案件でやっていくことが重要。新しい仕事のときに値段を上げる。まだお客さんにアンカリングが存在してないときに、どんどん提案するのがベストです。

――ということはつまり…

はい。最終的には「営業力」です。いいお客さんがいると値上げ交渉も余裕を持てます。切られても、ほかにいいお客さんがいると思えれば気持ちに余裕も出る。だけど切られる恐怖があると、強く出られない。自分が消耗しないために、僕らは強い立場になる必要があるんです。

稼ぐフリーランスを目指すための「3ポジション」の考え方

――むむむ…。どうしたら強くなれますか?

強くなるには「人より抜きんでたスキルを身に付ける」あるいは「お客様を変えてどんどん提案していく」の2つになるかなと思います。

――む、む、難しい…!

僕なりに「稼ぐフリーランス」の特徴を見つけようと観察していた時期がありました。スキルが高いのに仕事がない人もいれば、それほどスキルは高くないのに仕事が途切れない人がいる。不思議でした。単純な要素ではないのかも…と考えて分類したのが「職人ポジション」「相談役ポジション」「城持ちポジション」の3つのポジションです。

――3つのポジション…

3つのポジション

いちばんピンとくるのは「職人ポジション」ではないでしょうか。専門スキルや、新しい技術・知識を身に付けると発注単価は上がります。けれどスキルの高さが周囲に伝わってないケースもある。

――確かに「営業」や「自分からの発信」は苦手、という人が多いような。

質の高いデザインができるのに求めているお客さんに出会えなかったら意味がないですよね。実績が口コミで広がり、自然に仕事が舞い込むようになればベストですが、自分からの発信力が弱いと知られないまま宝の持ち腐れになることも。

――3つのポジションのどこかに属して、その属性部分を高めていけばいいんでしょうか?

稼いでる人は、ほかのポジションと掛け合わせている人が多いです。僕もこのタイプですが「相談役ポジション」と「職人ポジション」と掛け合わせで稼いでいる人は多いですね。

――相談役ポジションとは?

簡単にいうと「相談しやすい人」。とりあえず悩みごとを相談して整理したり、解決したり他の人を紹介したり。そんなことを喜んでやってくれる人は仕事の話が舞い込みやすい。いろんな人を助けていると、自分の能力とマッチする仕事になったときに仕事が舞い込むんです。

――人脈がある人のイメージがありますね。

とりあえず、あの人に聞いてみようかな?という感じの人です。この分野だったら、あの人に聞いてみようとか。ただ紹介するだけだと謎のフィクサーになってしまうので(笑)特定のスキルを持ってるといいですね。

――「城持ちポジション」のお話も聞いていいですか?

SNSのフォロワーが多い、ブログでPVを稼ぐ、YouTuberなどなど。多彩に情報発信する人たちが城持ちポジションです。これは向き・不向きがあって、再現性があるようでなかったりするので、このポジションで食べてる人は少ない。ただこういう人はお客様も自分で選べるので、価格交渉権が強いです。

――自分のスキルでは、どのポジションにもなれない…と思ったりするんですが、自分を過小評価しすぎないこともポイントですか?

そうですね。すごいことができなくていい。相談役ポジションなんかは、普通に人の話を聞いてあげるだけでいいと思う。例えば自分が応援したい、好きだと思うコミュニティや分野を手伝う。地域起こしのイベントに参加して友だちをつくったり、自分のスキルで手伝えることをしたり。応援したい領域を明確にして関わると、相談にも乗りやすい。自分は好きじゃないのに「ここは稼げる!」と思って近づいても、実は続かなかったりします。相手からも「本当は好きじゃないんだろうな」と見えちゃうので。

――そうか。欲を出さずに、身近なところでいいんですね。

はい。僕はスタートップの業界、まだ社員がほとんどいないところを応援するのが好きで、どう成長していくのかを研究したいと思っていて。応援したいからSEOの無料セミナーや検索エンジン対策の手伝いをしていました。当初はお金にならなくても5000万、1億、10憶と資金調達して成長していく。すると2、3年後にまた声がかかったりするんです。

――なんと…!好きな領域、応援したい領域にすすんで関わっていくこと。お仕事以外に得られるものもありそうですね。

ですね。

Q&A

――コワーキングスペースは話しかけづらく、繋がりをつくりづらいんですが、山田さんはどのように声をかけていますか?

コワーキングスペースは、自分が参加したいと思うイベントを開催しているかどうかが重要です。そのイベント後のタイミングで話しかけます。仕事してる最中に「ヤッホー」とか、声かけられないので(笑)自分の興味のあるイベントをやってるコワーキングスペースを探して、イベント後に話しかけてみるのはどうでしょう。

――ひと月ベースの場合、1日何時間お仕事をする前提で見積もりを出しますか?

時給や工数で考えてないですね。コンサルタントとインターネット広告の運用の仕事が多いので、時間で測らず「顧問料」という形で月額でもらっています。何かトラブルや質問があったときは、slackなどで答えて。労働時間を決めると収入が縛られてしまうので、できる限りそこから抜け出す工夫をしています。

――地雷案件は、どのように見極めていますか?

お客さん自身が「地雷」というケースは稀で、相性なんですよね。コミュニケーションがかみ合うか、かみ合わないかが重要。打ち合わせやメール、Slackのやり取りで「この人噛み合わないな」と思うことをシグナルの一つにしてます。伝わってない、もしくは伝わってないのに伝わってると思い込まれてしまうとトラブルになりやすいです。

まとめ

「フリーランスの交渉術」というテーマで開催された同イベントで私が学んだこと。それは

「値上げの必要がないように、新規の見積もりから金額を上乗せしておこう」

そして

「自分が関わることで、どんな変化が望まれているのかをきちんとヒアリングしよう!」

さらに

「応援したい!好きだ!と思える領域で貢献していくこと」

でした。

不安なく、自分の持っているものを役立てていけたらいいですね。

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