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「幸福になる科学」edX×Coursera比較

 コロナ禍を機にオンラインセミナーが普及、一般化しつつあります。その先駆けであり、現在も中核にあるのがMOOCsといえるでしょう。MOOCとは言ってみれば、時空間、国籍、民族を越えた高品質のオンライン教育サービス。アメリカで2012年にスタートし、日本では2013年にJMOOC(一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会)が設立され、日本語によるMOOCの提供及び普及拡大が進められています。※注:参照

 世界中のMOOCsの双璧といえるのが、edXとCousera。前者はハーバード大学とMIT(マサチューセッツ工科大学)によって創設され、2020年8月現在、140の教育機関によって2500講座を提供しています。一方、後者はスタンドード大学の2人の教授によって創設され、51ヵ国の215パートナーとともに4071講座を提供しています。

 両者ともに、私がキャリアの専門家として動向をおいかけている「幸福になる科学」の講座を開設していて、それぞれを受講しました。「幸福学」はこのところ注目される分野ですので、これを学ぶ皆さんために、両者をざっくりと比較してみようと思いたちました。

 まず、edX「The Science of Happiness(幸福になる科学)」は私にとって、初MOOC講座でもありました。当時、オンライン講座の最先端だったMOOCを特に意識したわけではなく、PHP新書「ハーバード流 幸せになる技術」執筆にあたっての資料調査として受講しました。「幸福とは何か」「幸福な人の特徴は何か」「幸福になるには、どうすればよいか」などを体系的をみっちりと学べました。

 第1講から心理学、社会学、哲学から脳科学、神経科学まで、広範かつ膨大な研究データが紹介されているうえに、翻訳ソフトでは訳しきれない専門用語もあって、なかなか手ごわい受講体験でした。執筆という切実な課題があるにも拘わらず、1度目の受講では落第。再度、受講して、やっと修了するという厳しさでした。

 一方、Couseraはこの7月1日に登録し、全10週のうち9週が終わるところで、8月中には修了できる見込みです。きっかけは、親しい編集者からの情報提供でした。コロナによる自粛期間に入って間もなく、彼女からの依頼で、日経ARIA有料会員記事「幸福学 ウィズコロナの不安な時代に必要な3つの心得」の取材を受けました。その取材をとおして、Couseraで「The Science of Well-Being (包括的幸福の科学)」を知ったのです。

 幸福になる研究のウォッチャーとして、受講せずにはおれず、早々に登録し、4週目までを2週間ほどで修了。ここまではedXの復習という印象で、拙著「ハーバード流 幸せになる技術」で紹介した知見がほとんど。我ながら驚くほどサクサクと理解できて、試験もラクラクでした。しかしながら、5週目は情報量が各段に多くなり、研究者へのインタヴューや学術論文の読み込みもあって、理解に苦しみました。試験も1回では及第とならず、教材を読み直して、再チャレンジは満点でパスできました。

 折しも、翻訳ソフトをdeepLに変え、分かりやすい翻訳が手に入るという邂逅がありました。それまでは、google翻訳を中心にwebrioで補い、それでもイミフ(意味不明)な時には、単語を調べて自分で訳していました。edX講座を受講した時から感じていたのですが、googleもwebrioは授業のスクリプトや学術論文の翻訳に弱いようです。Cousera講座のスクリプトもイミフの翻訳が多く、訳し直しの手間がかかってイライラしていました。元をただせば自業自得、英語の勉強をもっとすべきだったわけですが…。

 ともあれ、長時間の講義やインタヴューの多い5週目に苦戦しながらも、DeepLに助けられて、6週目に突入。ここからはコンテンツの理解よりも実践が問われます。つまり、幸福になる科学が実証した「幸福になる活動」から一つを選んで、その習慣化をめざし、日々の実践を記録して、9週目まで実践報告を続けます。私は「自分の強みを活かす」活動を選びました。明日、9週目の実践報告をすれば、いよいよ最終週。修了試験が待っています。

 まとめると、edX「The Science of Happiness」もCoursera「The Science of Well-Being」も、受講者が「幸福になる活動」を実践して、それぞれの幸福度を高めることをめざしているものの、前者はより学術的な視点から受講者を動機づけし、後者はトレーニングという視点から習慣化を促しているといえそうです。さて、10週を受講した後に「強みを活かす」という幸せ活動が習慣化されているかどうか。そして、強みを活かした仕事をとおして、より幸福を感じ得ているかどうか、受講後が待ち遠しい昨今です。


注:ムークとは(平成30年度 教育白書から抜粋

教育分野のICTについては、近年、Education(教育)とTechnology(技術)をかけ合わせたEdTech(エドテック/エデュテックとも)という造語で知られるように、様々なものが開発されるようになってきている。

EdTechの中でも最近着目されるようになったもののひとつが、Massive Open Online Course(MOOC、ムーク)である。MOOCは、インターネット上で誰もが無料で受講できる大規模な開かれた講義である。MOOCでは、オンラインの講義によって学習者は自分の都合の良い時間に受講できるだけでなく、試験やレポートなどもオンラインで実施することで理解の度合いを測ることが可能になっている。また、ディスカッション可能な掲示板などもあり、学習者がオンラインで疑問を解消できるようになっている。全てのプログラムを終了し、一定の条件を満たしていれば講座提供者が発行する修了証が発行される。2012年にアメリカで始まったMOOCの学習者は世界で9,400万人以上と言われている。日本でも、2013年に一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)が設立され、日本語によるMOOCの提供及び普及拡大が進められている。

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