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戦略PRとは

PRとは「世の中を舞台にした情報戦略」であり、その本質的な意義は「合意形成」を生むことにあると言われています。

PRの目的は「行動変容」であり、「合意形成」とは人々の認識を変え、行動を変えることです。パブリシティを獲得することは単なる手段であり、その先にいかにして認識変容を起こし、行動変容へとつなげていくかがPRの仕事であり、これこそが戦略的なPR、すなわち戦略PRであると言えます。そして戦略PRでは、いかに「買う理由」を生みだすかが鍵となります。

情報洪水と消費飽和の時代には、「買う理由」そのものを世の中に創出する必要があります。商品のスペックよりも「なぜそれを買う必要があるのか」という理由の方が消費者にとっては重要だからです。

この「買う理由」を生みだすには、「いい〇〇」を再定義し、社会常識をアップデートする必要があります。そして「いい〇〇」を再定義するためには、「関心」に目を向けなければなりません。売る側の関心、世の中の関心、買う側の関心、この3つの関心を見いだし、その3つの接点となる「関心テーマ」を設定し、その解決策として、売り出したい商品やサービスを当てにいくのです。

ここで、関心テーマを見つけるためには売る側の関心に対して、買う側の関心を紐づけて関与度を上げ、世の中の関心を紐づけて顕在度を上げる必要があります。言うなれば、「社会関心」をいかに料理するかという発想を持つということであると言えるでしょう。

関心テーマを見いだし、それに売り出したいモノを結びつけ、行動を変えるためには、6つの法則を使う必要がある。それが以下の6つだ。

1. 「おおやけ」の要素(社会性の担保)
 2. 「ばったり」の要素(偶然性の演出)
3. 「おすみつき」の要素(信頼性の確保)
4. 「そもそも」の要素(普遍性の要素)
5. 「しみじみ」の要素(当事者性の醸成)
6. 「かけてとく」の要素(機知性の発揮)

当メディアの3つの研究室においても、この6つの要素を軸に分析や考案を繰り広げていきます。ここでは、6つの要素についてそのポイントを簡潔にまとめてお伝えします。

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「おおやけ」の要素(社会性の担保)

社会課題解決をめざす「ソーシャルグッド」の視点。
「社会インサイト(=世の中の空気)の見極め」と「ソリューションの有言実行」がキーポイント。社会を深く洞察し、多層な社会課題をとらえることができるか、そしてそれに対するソリューションが明確に提示され、かつ有効性を持ったものかを担保できるかが重要な論点となる。

「ばったり」の要素(偶然性の演出)

コンテンツが演出する、偶発的な「セレンディピティ(=幸運な偶然)」の視点。
人は自然なかたちで出会った(と思える)コンテンツや偶然見つけた(と思える)コンテンツに価値を見いだす。情報洪水・行動ターゲティングの時代だからこそ、「ばったり(=情報接触の偶然性)」が生活者の受容性を高めるのである。「この情報にばったり出会ったのには意味があるのだろうな」と思わせる、偶然性の演出ができるかがキーポイント。ばったり感のあるコンテンツや導線設計ができるかが重要な論点となる。

「おすみつき」の要素(信頼性の確保)

多様化する「インフルエンサー」の影響力の視点。
人はいつの時代も「おすみつき(=第三者の「支持」や「推薦」)」を求める。
権威の存在や自己判断の限界は、どの時代にもあった普遍的なものなのである。
誰もが誰かのおすみつきを求めているからこそ、生活者の情報選択や行動変容においてインフルエンサーの力による信頼性の確保ができるかがキーポイントとなる。
「事実のおすみつき(=専門分野の実証や実行)」と「共感のおすみつき(=心理的なフォロー効果)」という2つのインフルエンサーの役割を押さえ、いかに自由に起用や活用を設計できるかが重要な論点となる。

「そもそも」の要素(普遍性の要素)

「よくぞ言ってくれた」を引き出す本質的な価値転換の視点。
世の中にじっと目を凝らしてみると、みんなが忘れていたり無意識になっていたりする原点や普遍的な何かが潜んでいるかもしれない。
本当に大切なことがおざなりにされて、表面的なトレンドや議論が横行しているかもしれない。それをPRチャンスに変え、「よくぞ言ってくれた!」を引きだす大きな価値転換がキーポイント。
社会で明らかになりすぎていることでもなく、誰も思いつかないような斬新なことでもなく、その間にある「潜在的にみんながそう思っていること」を突けるかが重要な論点となる。

「しみじみ」の要素(当事者性の醸成)

「自分ゴト化」させ、感情に訴えるストーリーテリングの視点。
「しみじみ(=「感情」+「当事者性」)」しないと人は動かない。
「感情に訴え、当事者意識を持たせられるか」がキーポイント。
「ストーリーテリング(=情報を物語化して伝える)」「自己投影(=「没入感」を上げる)」「インサイト(=生活者の潜在的な本音)」が重要な論点となる。

「かけてとく」の要素(機知性の発揮)

クリエイティブな「とんち」の視点。
「これはやられた!」「これは一本取られた!」という「機知性」を発揮できるかがキーポイント。
日常生活にフッと入ってきて、なるほど気が利いているね、センスがあるな、と人に思わせる「とんち」をきかせたクリエイティブなPRができるかが重要な論点となる。

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以上、戦略PRについて、その考え方や背景、実践のフレームについてご紹介しました。

なお、筆者は戦略PRプランナーで『戦略PR』など数多くのPRに関する書籍を出版している本田哲也氏の言葉や思考から実に多くのことを学び、自身の思考の支えとしてきた。したがって、この研究室においても、本田哲也氏に最大の敬意を払い、感謝の意を込めて援用させていただいている。今後も本田氏からたくさん学ばせていただきながらPRパーソンとして花開けるように精進していきたい。

本田哲也氏のおすすめ書籍の情報について以下に記しておくので、気になる方はぜひ一度手にとって読んでみてはいかがでしょうか?

<参照>
本田哲也(2017)『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』ディスカバー・トゥエンティワン

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