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ちょっとした奇跡

12年の時と500kmの距離を超え、元・阿呆学生に答案が返却された。
ただそれだけの話。

ある日の昼下がり、会社デスクの内線が鳴った。
「2008年当時に1回生で、一般教養科目を受講していたぞんびさんを探している教授から連絡がきています」
たしかに、身に覚えはある。しかし今更何だろう。「あのとき教室の最前列で船をこいでいたな、単位剥奪だ」などと言われても困る。

さような非道な仕打ちをなさるわけもなく、先生は退官前に保管していた答案を本人に返そうとして人探しをしてらしたのだ。
ある日わたしの名前で検索したら会社のHPがヒットし、もしや本人ではないかと会社に連絡をくださったそうな。Go○gle先生さまさまである。

会社の住所をお知らせしたところ、答案および先生の退官記念冊子が送られてきた。まだ神童と持て囃された時代の貯金があった18歳の私は、それはもう怖いもの知らずというほかない答案を書いており赤面した。その傲慢ながらまっすぐな書きぶりに、先生は可能性を感じ満点の評価をくださったのだろう。しかしそれは「可能性」でしかなく、今となってはこの体たらく。誠に遺憾である。

しかし記念冊子を拝読していて、こうも思った。我々はみな、人生という大きな山を登る途中にある。その大きな山を登る速度も、方法も人それぞれだ。最初に猛スピードで登ったら息切れするのもむべなるかな、少し景色を楽しみながら歩いてみてもいいのではないか、と。

ちょっとした奇跡のありがたみを噛み締めながら、これからも一歩ずつ人生という名の山を登り続けよう。大丈夫、登り続けていれば山頂には必ずたどり着く。

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