とあるLGBT当事者のひとり言
向坂くじらさんの記事※1 に触発されたので、LGBT当事者として就活していた時の心境や、当事者であることをたまに忘れながら働いている今について、書き連ねてみました。
思った以上に長くなってしまったので、強調したいことを先に3つ述べておきます。
① セクシュアリティは、あくまで自分を構成する要素の1つ
② カミングアウトしてどうなりたいのか
③ 何をするか以上に、誰と働くか
【お化粧なんてしたくない】
私の場合、戸籍と身体上はいわゆる「女性」に分類されます。
ただ、戸籍と身体上の区別以外で「女性」であることを持ち出されると違和感を覚えます。
例えば、「女の子って甘いもの好きだよねー」とか、「女の子なんだからスカート履いたら?」とか、「女の子は営業に出さないよ!」とか、「女の子ってコスメ好きだよね」とかそういう世間話にもモヤッとイラッとしてしまいます。
そういう性質なので、反骨精神なのか私の本来の価値観なのかは今も不明ですが、就活が始まる前に一番憂鬱だったのが「お化粧」です。
就活が始まるまでは基本的に「すっぴんのあなたで勝負できる?※2」状態だったし、スカートスーツ持ってないし。
憂鬱な気持ちをなんとか押し込めて、それっぽいアイシャドウを付けて、とりあえず口紅塗って、CCクリームを嫌々顔に塗って就活してました。
でも、スカートは一度も履かなかったし、就活早々私服で履いたブーツで足の親指の爪が壊れたので、ペタンコ靴で就活してました。
そんな身なりでも内定はいただけたので、「就活マナー教本」みたいなのは参考程度で良いんだと思う。
身なりでも大切なのは「清潔感と表情」なのかなーなんて、社会人になってから思いました。
ちなみに、社会人3年目は会社に化粧して行ったのたぶん0回です。セクハラって言われるのが怖いからなのか、誰も面と向かって「化粧しなさい」と言ってこない。
心の底では思っているのかもしれないけど、口に出すほど私に興味が無いのか、口を出す時間が惜しいのか。。。
職場によるとは思いますが、案外すっぴんで仕事できるみたいです。
【セクシュアリティは私を構成する要素の1つ】
私はLGBT当事者です。でも、それだけではありません。
私は片田舎で生まれ育ち、
三人兄弟の末っ子で、
高校まで公立で、
部活に入ったり、
部長やったり、
先輩を好きになったり、
友達とニコニコ動画にハマったり、
漫画が好きで、
ハロプロが好きで、
猫を飼っていて、
納得いかないことはひたすら調べたり、
細かいところまで気になるし、
不正は許したく無いし、
他人にも自分にも厳しいし、
でも頑張ってる自覚がなくて、
意外と泣き虫で……
などなど、私を説明する言葉はたくさんあります。
これまで生きてきた環境や経験、好きな人、もの、色んな要素が互いに影響しあって「今の私」がいます。
もちろん、LGBT当事者であることが及ぼした影響は計り知れないくらい大きいと自覚してるのですが、でも、やっぱりそれ「だけ」ではありません。
LGBT当事者であることを「踏まえて」、「自分は」何をしてお金を稼ぎたいんだろう?生きていきたいんだろう?と、自問し始めたのは、就活解禁から1ヶ月ほど経った頃でした。
【あなたの弱点は?】
就活中はもちろんのこと、人生は選択の連続です。
「踏まえて」、と言いつつ、就活の受け答えやエントリー企業を選択する上で、LGBT当事者であることは常に頭の片隅にありました。
今働いている企業では、面接中にこんなことを聞かれました。
「あなたの弱点と、克服しようと行なっていることがあれば教えてください」
(時間にルーズ、とは言えないし、忘れ物が多いもリカバリーしにくい。え、どうしよう…)
と悩んだ末に、
「お、女の子らしく無いところです…。
化粧もスカートも好きではないです。克服…は…しようとは思いませんが、いわゆる女性らしい気遣いとか、思いやりは他の女性を見習って取り入れていこうと思います」のような話をしました。
面接官は失笑してて、「あ、落ちたな」と思ったことを覚えてます。
が、何の因果か選考が通り、内定をもらいました。
「女の子らしく無い」っていって内定くれたんだから、働き始めて女の子らしくなくても大丈夫だろうと解釈し、このやりとりは就職先を選ぶ上で大きな判断根拠となりました。
【就活とカミングアウト】
志望動機や自己PR、面接官からの質問に対して、論理的に説得力が増すなら誤魔化さずにカミングアウトして説明した方が良いと思ってます。
LGBT当事者であることと、志望動機や能力の結びつきが少ないなら、カミングアウトするメリットは無いかなあと思います。
「この子はLGBT」とだけメモ書かれて終わりです。
例えば、
「この子はLGBT→教育への関心→熱意→企業理念と一致」
「この子はLGBT→弊社の同性パートナーへの対応に関心」など、面接官が理解できる結びつきがあれば伝える価値があるのかなと思います。
【働き始めてからのカミングアウト】
今の会社で、専門用語を使ってカミングアウトした相手はいません。
ただ、
「化粧すると作業効率が下がるんですよ、メンタル的にー」
「スカート持ってないんですけど買わなくて良いですか?」
「女性の視点でーとか言われても困ります。あくまで私の視点なので。」
「子育て支援なら私より2人のパパの課長に聞いてください」
などなど、生意気にも言動の節々で主張はしてます。
今後も、お互いに傷つかない、不愉快に思わない、良好な関係性を得るために、カミングアウトした方が得策だと判断すれば必要に応じてカミングアウトしようかなと考えてます。
学生の友人関係と違って、あくまで一緒に仕事をして価値を生み出していく間柄です。
どちらかが辞めたり遠くに異動しない限り、顔を合わせますし、何年か経った後再び共に働くこともあります。
カミングアウトして良い方向に転ぶか悪い方向に転ぶかは、相手とのそれまでの信頼関係や仕事の繋がりによります。
カミングアウトして、関係性を深めたい人なのか、そうで無いのかは、一緒に働いてみないと分かりません。
【終わりに】
とりとめのない文章になってしまいました。
自分について振り返ることができて楽しかったけど。
私の場合は、今の環境が良いのか、あまりセクシュアリティを気にせず働いています。
たまーにおじさん世代からジェネレーションギャップとセクハラ発言を受けることもありますが、あと5年もすれば社会の価値観は相当変わるし、マイノリティに対する差別発言もだいぶ減るんじゃないかな、なんて甘い期待を持ちながら働いています。
LGBT当事者という言葉をたくさん使いましたが、就活や人生の選択の場面において直面する課題はそれぞれ異なります。
そして、働き始めて改めて思ったことは、「LGBT当事者」であろうが無かろうが、人はそれぞれその人なりの悩みや課題と共に生きている、ということです。
お互いが抱える課題を理解しあって、手を差し伸べあって、安心した生活を送れる世の中にしていきたいなあ、なんて淡い夢を見ています。
おわり。
※1 向坂くじらさん こえ:「カミングアウトの直前に」20卒Nさんのばあい
https://note.mu/kujiraworks/n/n8e09f329b8af
※2「すっぴんのあなたで勝負できる?」モーニング娘。16の「ムキダシで向き合って」 3分23秒の羽賀朱音さんのセリフです。好き。
https://youtu.be/fdtgnmV7HU0
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