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ドローインとブレーシング

こんにちは、Leeです。

これまで、腰痛マガジンで骨盤帯の基礎や股関節が腰椎へ与える影響についてお伝えしてきました。

それは「腰痛の要因が腰以外にもある」という視点をみなさんに持ってもらいたいという思いからです。

腰痛の病態を把握するためには、
広い視野と細やかな観察力の両方が必要です。

さて、腰痛マガジンももうすぐ1年を迎えるということで、基礎の基礎に戻ってみたいと思います。

今回のテーマはインナーユニットのトレーニングとしてよく使用される
ドローイン(draw-in)」と「ブレーシング(bracing」の違いです。

ヨガやピラティスでも呼吸法は重要であり、
運動療法を行う際にもクライアントさんに呼吸を意識してもらう事は多いと思います。

では、早速いってみましょう!

この記事はこんな方にオススメです。

◆ドローインとブレーシングについて実はよくわかっていない
◆インナーマッスルのトレーニングができているか不安

1.なぜドローインとブレーシングが有効なのか


 腰椎椎間板や椎間関節への過剰な負担が腰痛の原因となっている場合、体幹部の安定性が低下していたり、体幹表層筋の働きが強く腰椎の動きが非生理的になっています。

脊柱の安定性を高めたり、腰椎の動きを生理的な動きに戻すためには、インナーユニットの働きが重要になります。

いわゆるneutral zoneでの脊椎の動きを確保するために必要な働きです。

neutral zoneで運動が行われる場合には、椎間板や椎間関節への負担はありませんが、elastic zoneでの運動が多くなると、組織に力学的ストレスが蓄積し、炎症症状を引き起こします。

それが、機能的腰部障害から経年変化を経て、器質的腰部障害へと繋がっていきます。

こちらの記事に詳しく説明していますので、まだの方はご一読ください。



2. ドローインとブレーシングの定義

ドローインとブレーシングはどちらも脊柱を安定化させる方法として知られています。

ドローイン(draw-in)は英文献などではhollowing(ホローイン)と表記されていることがあります。直訳すると「引き込む」です。

お臍を脊柱に近づけるようにして腹壁を引き込むように腹横筋を中心に筋を収縮させます。
そのため、腹腔の体積は減少します(図の左)。

ブレーシング(bracing)は、直訳すると「締める」です。

ブレーシングでは外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋の3つの筋を同時収縮させ、腹壁全体を硬くします。このとき、腹腔の体積が一定に保たれるように3つの筋を均等に収縮させることがポイントです(図の右)。

ドローインとブレーシング


(参考文献:臨床スポーツ医Vol.35,NO4.2018)


3.インナーユニットの筋活動の評価

ドローインとブレーシングを比較した報告はたくさんありますが、まずはインナーユニット(腹横筋・多裂筋・大腰筋・腰方形筋)の活動を評価する方法について簡単に説明します。

【ワイヤ筋電】
ワイヤ電極を体幹深層筋に刺入し筋活動測定を行う。ワイヤの刺入はワイヤ電極をカテラン針に通し、超音波ガイド下にて、被検筋とカテラン針を確認しながら行う。
電極を刺入後、カテラン針を抜去してワイヤ電極を留置し、電気刺激によって電極が正しく留置し、電気刺激によって電極が被検筋に正しく留置しているか確認することができる。

<メリット>筋発火のタイミング(オンセット)、筋活動量が測定できる
<デメリット>侵襲的方法であるため、臨床現場では不適切(研究としては可能)


【表面筋電】
腹横筋・内腹斜筋の測定は上前腸骨棘の2㎝内下方に表面電極を貼りつけて測定する。外腹斜筋がかぶっていない部位で、妥当性が検証されているが、腹横筋の筋活動量の測定は困難との報告もある。
多裂筋はL5棘突起の2㎝外側に表面電極を設置することが多い。

<メリット>多裂筋の筋活動量を測定するための妥当性については検証されている
<デメリット>腰方形筋・大腰筋については妥当性の検証をされていない


【超音波画像】
超音波画像装置を用いて筋厚や筋断面積などの筋形態の変化から筋活動をとらえる方法。
低い活動レベル(腹横筋:12%MVC、内腹斜筋:22%MVC)では、超音波画像装置での筋厚変化と、ワイヤ筋電での筋活動量との相関関係がみとめられている。

<メリット>侵襲がなく、トレーニング中のフィードバックとしても使える
<デメリット>大きな筋活動を示す運動では評価できない可能性がある


【MRI】…MR拡散共調画像により、組織内の水分子の拡散を描出し、指定範囲のADC値(apparent diffusion coefficient)を用いて筋肉の水分量を定量的に評価し、筋肉の活動量の指標として用いる。
エクササイズ時の大腰筋の筋活動をMR拡散強調画像から計測したADC値とワイヤ筋電図により計測した筋活動量の相関が報告されており、筋活動の総量を評価する手法とされている。

<メリット>エクササイズ前後の比較ができる
<デメリット>オンセットの評価はできない


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