見出し画像

我々は、「タダ」で何が出来るのか

唐突だが、書店員には予算はおりない。ポップを書くにも、フェアをやるにも、どこからかお金が出ることはない。例えばちょっとおしゃれな布を敷いて、その上に本を陳列したいとか、目立つポップを作りたいのでA3の画用紙が欲しい、などと言った場合、家にあるものを持って来るか、地腹を切って買うか、出版社から過去に送られてきた、もう不要のポップなどの資材を活用するしか道はない。

例えばちょっと広いギャラリースペースがうちの書店にはあるのだが、そこで半・展示みたいな陳列をやりたい時も、出来ることは限られてしまう。
過去にそのギャラリースペースで妖怪フェアをやったことがあるのだが、漆喰の壁には何を貼ることも打つことも出来ず(上からワイヤーで吊るすのは可能)、バカでかいプラダンをホームセンターで買って、それにラミネートした妖怪たちを量産し、百鬼夜行図を再現したことがある(上の写真。閉店後に撮ったので暗い…)。そのお金は1500円くらいで、私はそのギャラリースペースを任されるのが初めてで、気合が入っていたのでやむを得ない、との投資だったが、見かねた店長がポケットマネーを出してくれたことがある。勝手な判断で申し訳ないことをしてしまった。
そんなこともあって、「最悪、地腹を切れば済むこと」という考えはやめようと思った。

では、我々には、「タダ」で一体何が出来るのか?
「タダ」で使えるものとは何か。今日はこれを考えてみようと思う。

① 備品を使う

予算がゼロ、と言っても、納品書やコピー用紙やセロテープやなんやかやを、定期的に発注してはいる。そのための予算は別途あるわけで、必要経費で買えるものから工夫する、というのがまず一点。
例えばラミネート。パウチっていうやつだ。これは、備品としてある。A4までは対応できるので、画用紙を購入しなくても、コピー用紙にポップを書いて、ラミネートすれば強度が得られる。
他にも、例えば夏のフェアだったら、スイカやひまわりの商用フリーの無料素材を印刷して、それを切ってラミネートすることで、賑やかな雰囲気を作り出すことは出来る。


② ゴミの可能性(ダンボール、牛乳パック)

私たちが生活していく中で出るゴミ。これを利用して資材を獲得する。例えばダンボール。おしゃれな額に商品説明を入れて飾りたいなあなんて思ったときに、すぐに100均に走らずお手元の段ボールで額を作ったりも出来るらしい。


あるいは牛乳パック。足りなくなりがちなブックスタンドを作ることも出来る。


ちなみにこのブックスタンドは自宅で作ってスマホ立てに使っているが、結構強度があり重宝している。
可能性は無限大。ただし、それを作る時間は多分勤務時間外である。100均で買った方が安くつく…

③ 自然界から持って来る

買えないなら拾えばいい、という発想。例えば、海へ行って貝殻を拾う流木を拾う砂をビンに入れる。
山へ行って木の枝を拾う木の実を拾う石を拾う、などである。こうなって来るとちょっと不憫な感じが漂うのだが、使えるものは使うべし、なのである。工夫次第でオシャレになりそう。

④ 番外編 予算を生み出す

とはいえ、ペン類や画用紙は絶対に必要だし、布だって使いたい。少しでもいいから予算があれば可能性の幅は全然違う、ということで、なんとか予算を生み出す方法はないだろうか、と考えてみた。
まずシンプルなのは、自分たちで製品を作る、ということである。例えばポストカード。プリントパックなどのオンデマンドの印刷サービスを使えば、100部1000円くらいでも制作することが出来る。デザインを自分たちで出来る能力があれば、1枚50円で販売したとしても利益を生み出すことが出来る。これは単純計算で、色々検討事項もあるがまずは可能性の一つとして。
次に考えられるのは、流行りのサブスク的なサービスを考えることである(こういうのはもうあると思うが)。書店員のスキルの中の一つとして、「選本能力」というものがある。日々膨大な本に触れ、どんな本がどれだけ売れているかを把握し、売れなかったものも把握している。新刊の情報も、一般の方々よりは入って来やすい。というところで、「オススメ本パック」を作るとか。いくつかのコースを作って、定期購読みたいにして販売する。基本的には用意したコースの中から選んでもらう。「美術書のオススメパック」、「絵本詰め合わせ」、「ベストランキング文庫小説パック」、「新聞の書評パック」とか。コースの設定の仕方がかなり肝になって来るだろう。本当はお客様一人一人とカウンセリングをしてオリジナルコースを作れれば一番だが、対応しきれないと思うのでまずはコースから選ぶ方法で、特に明確な希望がある人には対応しても良いかもしれない(「◯◯という雑誌に掲載された本パック」とか)。

1ヶ月に1000円でも、自由に使えるお金があれば、もっとパキッとした売り場が作れるのになあ。
それに、スタッフの「やりたい!」の意欲をもっと後押ししてやれると思うのだけど。「どうしても必要なものは買って構わないから、好きなようにやりたまえ!」なんて、言ってみたいし言われたい笑

とりあえず実現の可能/不可能、売れる/売れないは度外視して、思いつくままに書いてみた。

応援いただいたら、テンション上がります。嬉しくて、ひとしきり小躍りした後に気合い入れて書きます!