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プレシャスプラスチック鎌倉、始まりとこれから

はじめまして。プレシャスプラスチック鎌倉で、特にクリエイティブ面を担当するルートカルチャーの瀬藤です。このプロジェクトのきっかけとなったのは、私がプロデューサーを務めるイベント「鎌倉 海のアカデミア」でした。海から5分の場所に住んでいてサーフィンなどで海との接点も多い私が、どんな思いと経緯で立ち上げていったのかをご紹介したいと思います。

日本が一年で一番寒くなる2月。海に行きサーフィンをする。今年の水は温かい。南極では18度という過去最高気温を記録した、と今朝のニュース。春の訪れを感じるうららかな光を浴びながら、波の上にたゆたっていると、流れてきたビニール袋が身体に絡まる。砂浜はカラフルに砕けたプラスチックで輝いている。お腹いっぱいにプラスチックを飲み込んだクジラが漂着したのは、一昨年の夏だった。
宮崎駿の映画『天空の城ラピュタ』の主人公は、人は土から離れては生きられない、と言う。一方で、先日亡くなったホーキング博士は、地球に住めなくなるときが近いから、地球外への移住を進めるべきだ、と語っていた。人間と地球の間には、お別れのときが近づいているのだろうか。人と地球が共に生きていく未来は、もう叶わない夢なのだろうか?

これは、コロナで幻になってしまった2020年のイベント『鎌倉 海のアカデミア』のために書いた企画書の冒頭部分。この2年前の2018年『鎌倉 海のアカデミア』(以下、「海のアカデミア」)が、プレシャスプラスチック鎌倉の始まりのきっかけだった。

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鹿児島在住のヒッピー、テンダーが、プレシャス・プラスティック・マシンを教えてくれた。2018年2月にテンダーが、我が家から歩いて3分のところにあるゲストハウスにやってきて、電気・水道・ガス契約ナシの年間家賃1万円の家での暮らしを紹介したり、さらに原子力発電に関わる仕事をしている父親の家庭で育った彼が今はDIYでやる太陽光発電を広めようとしていている話を聞いて、そのバイタリティと説得力に心惹かれた。そして、この時にプレシャス・プラスチックの話を初めて聞いた。

2016年から開催してきた「海のアカデミア」のメインテーマの一つとして、海洋プラスチックの問題を取り上げたいと思い、テンダーにゲスト出演してもらおうと連絡をとった。「プレシャス・プラスチック・プロジェクトについて話してほしい」と依頼したら、「話をするよりもマシンを作ったほうが良いんじゃない?」と提案され、根拠は無いけれど「うん、じゃぁ鎌倉で作ります」と即答。いままでテンダーが「作ってみたら?」と提案しても誰も実際にはやらなかったけど、「やる」と即答したのは僕だけだったらしい。溶接なんてやったこともないのに、勢いとやる気だけの即答。

とは言え、イベント全体のプロデューサーという立場なので、気持ちではやりたいと思っていても、その時間がなかなか取れない。そんな時に、テンダーと知り合うきっかけを作ってくれた、ビーガン料理&カレーのお店「香菜軒」の三浦さんと話す機会があった。香菜軒はセルフビルドで建てられたお店で、三浦さんはDIYで何でも作るし、思想的にもプレシャス・プラスチック・プロジェクトに興味があるんじゃないかと「一緒に作りませんか?」と相談したところ、三浦さんが「溶接をやってみたいと思っていたし、興味があるからやってみましょう」と引き受けてくれた。

案の定というか、僕はイベント全体の準備で忙しくて手を動かすことができず、ほとんどを三浦さんに任せることになってしまったのだけど、溶接初挑戦の三浦さんが果敢に火花と白煙を上げながら溶接にチャレンジして、「鎌倉1号機」となるインジェクションマシンを完成させてくれた。厳密に言うと、駆動させるには一つだけパーツが足りなくて、SNSで情報提供を呼びかけて教えてもらった店が閉まる30分前に滑り込んで、何とか動かせるようになったのが「海のアカデミア」当日だった。こうやって当時まだ日本でも数台しかできてなかった、プレシャスプラスチックマシン鎌倉1号機(インジェクションマシン)が完成した。

さて、作ったからには活用しなきゃと思っていたら、このマシンが人の輪を広げてくれる。「鎌倉 海のアカデミア」を一緒にやってきたカンバセーションズ・狩野さんや、ファブラボ鎌倉・ゆうかさんと山本さんが、まだ足りないマシンをつくったり、運営方法を一緒に考えましょうと輪に加わった(このメンバーが、現在のプレシャスプラスチック鎌倉のコアメンバーになっている)。

2019年の春には、フィンランド発のアップサイクル・カルチャー・イベントを日本でも展開しているクリーニングデイジャパンの森下さんと小林さんから連絡がきて、ぜひプレシャスプラスチックマシンをつかってイベントをやってみたいとのこと。直前になってマシンがうまく動作せず、Twitter経由でSwell Plasticの狩野さんに連絡をして、教えを請うたりもした。

インジェクションマシンだけでは、やれることに限りがあるし、そもそもプラスチックごみを集めても、マシンが使える状態になっていないので粉砕できるようにもしたい。ということで、さらにシュレッダーと、エクストルージョンマシンを作ることになった。

しかし、コアメンバーだけではやりきれない部分があったので、鉄職人のまっちゃんと、普段バイクの修理をやっていてモーターや駆動系に強いマホくんにも手伝ってもらって、2つのマシンが完成した。ニーズがあれば、それに応えられる人材が街の中から現れる。こうして、一人じゃできないけど、街の才能が集結して更に2台のマシンが完成した。

自分から興味をもって集まってきた人もいるし、こちらからお願いして巻き込んだ人たちもいる。とにかく、プレシャスプラスチックがあることで、街の中のいろんな才能や関心を持った人たちが集まってきていることが、うれしい。

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2020年から本格稼働予定だったけど、コロナで一旦足止め。でも足止めされたおかげで、考えが深まったところもあるし、人のつながりもさらに広がりそうな気配をヒシヒシと感じます。

2020年の後半から、実際に触ってもらえる機会を月2回つくったら、感度の高いヘンタイ(褒め言葉)たちが、僕たちも思いつかなかったような作品を続々と作りはじめている。というわけで本年2021年は、このプレシャスプラスチックマシンの周りにある輪がもっと大きくなるように、ゆっくりと着実に歩みを進めていきたいと思っています。ぜひ、皆様もご一緒しましょう!

2021年以降の活動ビジョンの紹介などについては、ファブラボ鎌倉の渡辺ゆうかさんに、バトンを託したいと思います。


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