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Coffee story エピソード2 【ローズヒップ】

【ストロベリーフィールズフォーエバー】②

ストロベリーフィールズが孤児院だったと知った時私は、複雑な気持ちだった。彼は、孤児院で育っていた。ジョンは、叔母さんに育てられて、彼は他人に育てられていて、二人とも母親の愛を知らずに育っていったからだ。ジョンはネグレクトでそうなったらしいが彼は、止むを得ずだった。

彼は、ハーフで母子家庭。父親は、イギリス人らしいが、どうも未婚で彼が生まれた時にはすでに日本にいなかったらしい。彼をひとりで産んだ母親は、必死で彼を育てていたが限界がきたのだろう、彼を施設にあずけることを選んだ。いつか彼を迎えに来ると約束していたが、だんだんと面会も少なくなりとうとう連絡も途絶えてしまったらしいのだ。

自分の生い立ちをさらっと教えてくれた彼は、日本人色が強く、ぱっと見は、ハーフと感じない人だった。色が透けるように白いことと瞳の色がグレーということで、ハーフかなと思わせる人だった。

大人になるまではあまり語らなかったが、かなり苦労して大人になったようだ。
いつもふざけていたり、優しかったが、ふと見せる冷めたい表情や近づくなオーラを出しまくって一人でいる時がよくありその度に私は、不安になった。

ひとりでバリアに包まれて何かを深く考えているのか、見つめているのかわからないがそんな時がよくあった。声をかけるとすぐに優しい笑顔で返してくれたが、いつも私は、不安でしょうがなかった。本当に好かれているのかということではなく彼が、遠くに行きそうな感じがずっとしていたからだ。

今思えば私の勘は当たっていたのだ。いや、出会った時から決まっていたのかもしれない。

このカフェに連れてこられてビートルズナンバーのイントロ当てクイズなんかしていた頃が懐かしい。

あの日もまた、あの曲がここで流れていた。『ストロベリーフィールズフォーエバー』
光が溢れた昼下がりに突然彼から言われたのだ。

「俺、イギリスに行ってくる。父親に会いに行ってくる。自分の中で納得したら帰ってくるから。そして、また、ここで会おうな。」

そう言って笑顔で別れ、しばらく連絡のやり取りをしていたが、私がうっかり携帯をなくしてしまってから連絡が途絶えてしまったのだ。

当時は、ガラ系で携帯アルアルの番号なんか控えておくはずもなく、軽い気持ちで携帯会社を変えたから番号もメアドも変わり彼との接点が全てなくなってしまった。

番号さえ控えていればと何度も悔やまれた。
もう諦めてはいたが、どこかで、ここに来ればいつか彼が現れ約束を守ってくれると信じているのだった。

彼は、会ったこともない父親にどんな気持ちで会いに行ったんだろうか。そして会えたんだろうか?

忙しい毎日に忘れてしまいそうになるが、ここに来るたびにあの頃の記憶を引っ張り出して、あの頃の思い出を呼び戻して、彼への思いを強く蘇らせていた。

いつかきっと帰って来ますようにと、いつかきっと会えますようにと祈りに近い気持ちだ。
『ストロベリーフィールズフォーエバー』は、私にとって、そう祈る時の賛美歌なのだ。

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