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あなたの思い出買いますから(仮) 第1話 イギリスアンティーク②

何が見えるのかというと、もし曰く付きならそのモノにまつわる人や思いが、スライドみたいにパッ、パッと変わりながら見えてくるのだ。
  前から霊感的なものは強かったが、この仕事を始めてすぐにそんな能力(能力と言えるかどうかわからないが)に、少しずつ気づいてきて、あることをきっかけに、一気に開花してしまったのだ。  

それは、ある老夫婦にまつわるものだった。  

いつものように社長の携帯が鳴って仕事の依頼がきた。その依頼は、現地で見積もりをし合えばすぐに作業にかかるという段取りですぐに現地に飛んだ。  

3トン車いっぱいになるくらい家具、衣類、生活用品、日用雑貨、テレビ、電化製品、その他諸々のいわゆる不用品、ゴミがあるらしい。
まあよくある遺品整理。親が亡くなって家を売却するから全てを撤去して欲しいという依頼だった。
おそらく全部終えるのにトラック何台分にもなる依頼だった。  

こういう現場は、とてもありがたく、僕たちは、密かにワクワクしてしまうのだ。  

丸ごと片付けるということは、すべて処分で何をどうしても良いということだから、依頼者が知らないお宝もある場合もある。
とは言っても現金や、明らかに大切なものはちゃんと渡したり、確認したりするが、大抵は要らないと言われ処分することになる。  
 依頼者は息子さんで、父親が亡くなり年老いた母ひとりになるから引き取って一緒に暮らすらしく、実家を売却するにあたり全撤去をしないといけないと不動産屋から言われたらしい。すでに買い手が付いているので1日も早く撤去しないといけないとのことでうちに依頼してきたのだった。  

期日は3週間。とにかく急ぎなので見積もり後すぐに取り掛かることになっていた。
  作業は、早速翌日からで、助っ人を呼んで結構な量をやっつけることになった。予定では3日間になっていた。  

作業当日は、抜けるような青空とちょうど良いくらいの風が吹いていて絶好の片づけ日和だったので僕は、いつもより気合いが入っていて、足取りも軽く作業の段取りをやり始めていた。社長が依頼主の息子と話して契約が終了すると助っ人の二人と話しながら家に入って行った。  

だいたいこんな現場では、僕が「生かし」を段ボールに入れて持ち帰る物とそうでないものに振り分けながら部屋の中を片付けていくのだ。生活している家にはかなりの量のモノがある。  

いや、ウチは何も置いてないからと思う人もいるだろうが、何年も生活していると、ほんとこんなものまでというモノが、ありとあらゆるところに詰まっているのだ。ましてや、老夫婦が何十年も暮らしていた家には、子どものものはもちろん、一昔前の時代のものまであるからその量たるや一般の人では片付けるのに何日も何日もかかり、ウンザリしてくるのが普通なのだ。
  だからこそ僕たちみたいな業種があり、昨今では、テレビなどでも取り上げられているからますます増えているのだ。
 さっきも言ったけど悪徳業者と思われないようにウチは営業や街を回るなど一切やってないし明瞭会計、親切丁寧を心がけているので紹介が多く、仕事がちょうど良いくらいのスパンで舞い込んで来て、なかなかゆっくりとできないのが今の悩みどころなのだ。  

まあ、愚痴はこれくらいにしておいてその老夫婦の家の話に戻るとしよう。  

助っ人たちが大きな箪笥や冷蔵庫、テレビ、ソファーなどを段取りよく運び出しトラックに、まるでテトリスのようにうまい具合にはめ込みながら積み込んでいく。  

僕は、段ボールとゴミ袋を何枚も持ち込んで、一部屋ごとの片付けに取り掛かることしにた。
   いつもの手はずで奥の部屋からやろうとしていたら、やたら気になる場所がでてきたからそっちから始めることにした。  

そこは、いつもなら最後の方にやるキッチン周りだった。南向のキッチンは、カーテン越しに太陽の光がゆらゆら射し込んでいてとても居心地の良い雰囲気の場所だった。
僕は窓を開けて光と風をその部屋に誘い込んで作業を始めることにした。  

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