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長崎へ、深く眠りに行った

先日、焼き物で有名な長崎の波佐見へ旅をすることになった。

とにかく腰が重く、高円寺にしがみついている私がキャリーケースを引く理由は仲良しの田所敦嗣さん(以下、田所さん)と長崎民である栗田真希(以下、くりこさん)と一緒に旅をしたかったからだ。

ほぼ毎日、DMでやりとりをする仲の良さなのだが、まさかこの仲良しが遠く離れた長崎でも実現するとは思わなかった。

まずこの旅は、羽田空港に行くところから始まるわけだがさっそく遅刻しそうになった。

今から言い訳をするわけだが、

持っていく一軍の服を洗うのを忘れていることに前日気付いた。本当は1か月前から気づいていたが、服に愛されている私は40着の未洗いを洗濯機に溜め込んでいたのだ。とにかくそういう場合は、大型コインランドリーへ走れ。

皆さんは大型乾燥機へ満タンに服を入れた場合、何分で乾くかご存知でしょうか?

正解は、30分です。

しかし当日、集合2時間前に起きてしまった私には20分しか余裕がなくしっとりと濡れた洗濯物をキャリーケースに入れて向かうことになった。

もうね、やけくそです。誰も悪くない。わたしが悪い。

羽田空港には斜めに立った田所さんがいて、こちらへ手を振っていました。キャリーケースに入った一軍の半乾き服のことで頭いっぱいで、集合してからの20分、田所さんが話している話が全く頭に入らなかった。多分、旅の心得とか長年彼が培った素晴らしいものを教えてくれたような気がするけど、本当にそこはすいません。濡れたパンツパンツパンツパンツパンツパンツパンツパンツ、とかしか考える余裕がなかった。

飛行機に乗り込むと、眠りのオンナと化した私は気絶するように意識が遠のき、首がガクンとなった。

そのうち、長崎着。

先月、痔の手術をしたばかりであるので飛行機の着陸の衝撃で、やや再発しそうになり完璧に目が覚めた。痛みは、いまに集中するときに有効であると思った。

長崎民のくりこさんがさっそく色んなところに連れて行ってくれた。彼女の顔を久しぶりに見れて、もうここに来た意味というのは出来上がった。

「オナンさん、訛ってないですね」

福岡県民である私の言葉は、完全に東京になっていたようで少し照れて方言を出そうと思ったがそれも照れるのでやめる。



こちらは千綿駅といって、海がずらっと見える。田所さんはカメラを持ってきていて、時折立ち止まって撮っている。


3人で写ると、よりいいね。



こちらは登り窯といって、山の傾斜を活かし昔使われていた窯へも行った。手のひらを太陽に向け、山風を感じてみるとたしかな元気が湧いてくる気がする。

最近、私は東京でひどく疲れていた。理由はたくさんあるのだが、とにかく寝れなくてずっと興奮状態でかなりやばい目をしていた。毎日が日曜興奮更新じゃねーかよとも思っていた。なのにこの山に登り、大きな自然を見て、なんの根拠もないけど「生きたいなー」という考えが出てきた。生きたい、とか簡単な考えは今この場で誤魔化しながら強く思えそうだけれど、自然発生的に改めて気持ちが出てくる機会はそうない気がする。

そういう状態になった時に一番大事なことは、近くに誰がいるかだと思う。近くには田所さんと、くりこさんがいて、薄い砂糖の膜を張られたような安心感がやってきた。

そこからは、あんなに眠れなかった日々を送っていたのに眠たくて眠たくてしょうがなくなった。二人が話しているのを聞くと、車の後部座席でしゅんと意識がなくなる。聞きたいのに、会話に混ざりたいのにとにかく睡魔に勝てなかった。


くりこさんのお知り合いのお茶の名人にも会いに行った。淹れてくださるお茶は、甘くて、これまた安心感が体内に溜まっていくのだった。

生の茶葉も頂く。苦味の奥に、たしかなお茶の味がした。

偶然、通りかかった道に養蜂シーン。みつばちをこんな近くで見たのは初めてで、みつばち達は田所さんの髪の毛に入っていき挨拶をされていた。

途中で、くりこさんが佐賀の武雄市にも寄ってくれた。ここの小学校に私は小一まで通っていた。かなりのマンモス校で、入学式の時に恋愛し放題と興奮した覚えがある。なぜか女の子の友達はなかなか出来なくて、10人の男の子と常に行動していた。恋愛ごっこをやろう、と毎日シナリオをプリントの裏に書いてみんなで演じていた。周りが男だらけで人生のピークであったし、かなり楽しかった記憶がある。小二からはヤンキー校に転校することになったので、こんな最高な夢はすぐに終わった。

学校の目の前に聳える猫耳みたいな山、「にゃーにゃー山」もあった。

自分のルーツを20年ぶりに見にこれたので、もうまた安心してしまった。


旅って、こんなにすぐに終わってしまうのか。3泊4日なのに、本当に一瞬だった。

旅の途中で会ってくださった、眞藤さん、泉さん、地域の方々、ありがとうございます。


今回の旅で、半分以上は寝てしまった。起きてすぐ寝ての繰り返しで、起きないといけないのに安心で寝てしまうという、睡眠ツアーとなった。そんな私に何も言わずに寝かせてくれた田所さんとくりこさんは神様だと思う。普段、神様と交信する仕事をしている占い師の私だが、生きながらに活かしてくれる人間に出会えたことは驚きだ。

この旅はあらゆる場面が大吉で、みんなで高く高くボールをトスし続けているような感じだった。万が一、ボールを落としても大丈夫というルール付きのゲームのようだった。

いま、この文章を東京で書いている。東京に帰ってきて、上の部屋に住んでいるギャル男が爆笑していて、もう長崎に私はいないんだと悲しくなった。魂と身体はセット、というのが常であるが、なんだかまだ魂は向こうにある気がする。今日も夜が来る。わたしは寝ることが楽しみになっている。あの安心した感覚は、まだ保たれている。ありがとう〜

思いっきり次の執筆をたのしみます