52.クジラが紡ぐ生態系 part.2

 前回は鯨骨生物群集について、そして深海への思いをつらつら書きました。今回はタイトル回収を果たしていきたいと思います。(part.1がまるまる前説だったという可能性が?)

 鯨骨生物群集には大きくわけて4段階あります。

  1. 腐肉食期:サメやヌタウナギ、カニなどの比較的大型の生物が集まってきて筋肉や内臓などの軟組織を食べます。1日に40kg~50kgは消費されるそうですが、それでも年単位で時間がかかることもしばしばあるようです。確かにマッコウクジラなどの大型の鯨は体重50トンにもなります。おおよそ15%が骨(引用できそうな文献がなかったので、人間と同じ割合と仮定します。まあ大事なのはここではありません。)と想定すると軟組織は35トン。50kg/日で計算しても700日かかります。そんなこんなで骨が露出しだすと次の段階に入ります。

  2. 骨浸食期:骨に含まれる有機物(骨髄など)を食べるホネクイハナムシなどの生き物がどこからともなく現れます。ホネクイハナムシは化学合成細菌と共生関係にあり細菌からエネルギーをもらって生活しています。この細菌(硫黄還元/硫黄酸化)が活発になることで硫化水素が発生し次の段階に入ります。

  3. 化学合成期:上記で発生した硫化水素を利用して有機物を作ることができる化学合成最近と共生している生物、イガイ類やシロウリガイ類などが集まってきます。この期間を経ると骨に含まれる有機物がすべて使われ、残すは骨だけになるのです。

  4. 懸濁物食期:まだ自然界では確認されていません。というのも自然の鯨骨は世界でも8例しか確認されておらずサンプルが少ないのです。骨は構造物として他生物の住処になっていたりするのでしょうか。

 さて、クジラは死後何年にもわたって生き物たちの拠り所になるわけですが、我々人間は深海に降りたところでもって数週間でしょう。
 意図しない限り”人”がいた痕跡は残りずらいと思います。

 皆さんは何を残しますか。

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