僕が将棋を好きになった日
初めて将棋の駒を触り、動かし方を教えてくれたのは父親でした。
たしか小学1〜2年の頃だったと思います。
ただ、父親はルールを覚えたての僕に対して、一度も勝たせることはなく…。
その後、だんだんと僕の興味は野球に移り、
将棋をする機会もなくなりました。
そんな「駒の動かし方だけ知っている」僕が再び将棋を指したのは、30才を過ぎてから。
当時、地域包括支援センターに勤務していた僕は、サロンに来ていた一人の男性高齢者(Jさん)と出会います。
そのサロンは男性高齢者限定😅
「女性ばかりいるところには行きたくない」と言われる男性のための場所でした。
Jさんの趣味は将棋。
たまたまその日は、将棋をされる参加者が奇数だったため、
「駒を動かす程度は知っていますが…」
というレベルの僕がJさんと対局しました。
ふだんは口数の少ないJさんでしたが、
盤を挟むとあれこれ話してくれます。
「おっ、えぇ手じゃないか!」
「あんたは大卒じゃろう? 覚えるのが早いけぇ、すぐ強くなるわいや」
「ワシは尋卒で。尋って知っとるか? 尋常小学校で」
対局を楽しみたい人なら、ルールを知っているだけの僕との対局はつまらないはずです。
ところが、Jさんはそんな素振りはまったく見せません。
「あんた、パソコンは使えるんか? この頃はコンピューターが将棋の相手をしてくれるみたいで」
「あそこにおるおっさんも、パソコンで勉強して強くなったって言うとったわ」
「あんたが勉強して強くなったら、ワシに教えてくれぇや」
僕を楽しませてくれながら、最後はしっかり自分が勝ったJさん😆
その日以来、将棋の入門書を買い、戦法を覚え、教えてもらったようにパソコンの無料ソフトでコンピューターと対局し…
どんどんハマっていきました😳
Jさんと対局して勝ちたい。
しかし、その目標が達成することはありませんでした。
残念ながらJさんが亡くなられたのです。
あの日、もしJさんが情け容赦なく僕をコテンパンに負かしていたら、
僕は将棋を好きになることも、ハマることもなかったでしょう。
これまで対面で指したり、将棋アプリを使って千局以上の対局をしましたが、
あの日のJさんとの対局は、
僕にとって忘れられない対局です。