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ベトナム人留学生との関わり⑥〜なぜ養護者を支援するのか?〜

前回の記事で、ベトナム人の留学生(介護福祉士養成校)に高齢者虐待について伝えた様子を書きました。

その講義の中で、もう1つ大事なことを学生に伝えました。

それは、高齢者虐待の対応として、

①高齢者虐待の防止

②虐待を受けた高齢者の迅速で適切な保護

③養護者に対する適切な支援

の3つが挙げられるのですが、僕が重点を置いたのが、

③の「養護者に対する適切な支援」でした。


その理由は、残念ながらケアマネさんの中にも高齢者虐待対応について、正しく理解されていない方がおられたからです。

あらためて高齢者虐待対応の根拠となる法律を見ると、

高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」

なんですよね。

後半が省略されて、「高齢者虐待防止法」って呼ばれることが多いですけどね😑

僕が地域包括支援センターで勤務していた頃、高齢者虐待対応は行政や担当ケアマネさんと支援策を協議していました。

よく言えば熱心な、悪く言えば法律の中身をあまりご存知ないケアマネさんはこう言われました。

「なぜ何も悪いことをしていない○○さん(虐待された高齢者)が施設に入って、虐待した△△(家族)はそのまま自宅にいられるんですか?」

「△△を処罰して、自宅から追い出してください!」

と😔


そんなことを言われた経験があるために、講義の中で学生さんたちに聞いてみました。

僕「なぜ高齢者を叩いたり、お金を盗った養護者を支援しなければならないでしょうか?」

学生「…わかりません」


ここで僕は、地域包括支援センター勤務時代に実際に関わった事例を伝えました。

①仕事のため日中は家を留守にする娘さんと暮らす高齢者。「自分がいない時に自宅の中を歩いて転んではいけないから」と、ベッドの柵を高いものにされていました。それにより、一人でベッドから降りることはできませんでした。

もちろん娘さんに悪気はまったくありません。

②奥さんが認知症だということを理解できなかった高齢のご主人。夕方になると、「家に帰ります」と言い、外に出ようとされる奥さん。ほぼ毎日なので、そのたびに「お前の家はここじゃろうが!」と怒鳴り、叩く。

「奥さんは認知症なんですよ」と症状や行動の理由を説明しても理解できないご主人。

このご主人も、奥さんが暗くなって外に出たら危ないから…という心配な気持ちがあったんです。

この①と②の事例に共通してること。

それは、「虐待してる自覚がない」ことです。


学生さんへの質問を変えました。

僕「①の娘さん、②のご主人、もし警察に捕まって『こんなことしたらダメでしょ!』って怒られたら…していることが変わるかな?」

学生「変わらないと思います」

僕「だとしたら、虐待をした養護者をただ責めたり怒ったりするのではなく、『どうやったら虐待することがなくなるのか?』を一緒に考えなくてはいけませんよね」

僕「それが、『養護者に対する適切な支援』が必要な理由です」


学生さんの反応は、わかってくれたような、わかっていないような…😅


この学生さんたちが介護施設で働いて、虐待されて入所された方だと知ったとき。

もしご家族の方と接することがあれば、「虐待する家族=悪い人」という認識を持たないでほしい。

悪気があって虐待した訳じゃないかもしれない。

その養護者もどうしてよいのか、わからなかったのかもしれない。

そんなことを考えられる介護福祉士になってほしい…。




そんな僕の気持ちはなかなか届かず…

残念ながら1回では理解できていないことが多いので…

次回の講義、最初の20分間くらい使って復習をしようかな🤔

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。




#私の仕事