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#読書メモ 殴り合う貴族たち

『殴り合う貴族たち 』(繁田 信一)

章立てがすごくて、あまり知識がなくともその都度中心人物をもとに血縁関係何度も解説してくれる。脱帽。

内容はタイトル通り。貴族たちは殺人を嫌う一方で子飼いの従者を使役し暴力をナチュラルに活用していた。拉致、監禁、殴る蹴る、投石、強姦、略奪、たまに殴り殺されたり斬り殺されたり、首をはねられたりされた。

時々貴族同士も直で殴り合う場面もあり、大抵は帽子を奪い髪をめちゃくちゃにしてボコボコに殴る蹴る。最高位の貴族でも幼少からハードな暴力の素養を培っていた。

しかし、主だって実行するのは基本従者だった。彼らはならず者で、見た目
にも暴をみなぎらせていた。

花山法皇は、「えもいわぬ勇幹幹了の法師ばら(言葉では表現できないほどに勇敢で獰猛な僧侶たち)」を中心に、あわせて七十人とも八十人ともいう多数の従者たちを花山院の四囲に配置していた。

『殴り合う貴族たち』繁田 信一 


彼らはノリノリで自動的に反撃したりする。おそらく、そうした役割も期待されてもいたのだろう。当時は「自分より格下が乗り物に乗って自宅の前を通行することことが許せない」と考える高位の貴族がけっこういたらしい。だからそういうチャンスが来ると大喜びで石を投げたり襲撃した。

今だと愚連隊や私兵を連想する。たぶん彼らは普段から威張ってイキっていた。暴力を愉しむことも貴族の嗜みだった時代。まだ法がない時代。本格的な武力勢力が登場する前の特権階級の暴力との付き合い方が知れる。ちょっとロシアっぽい。


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