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日記 一〇二号室

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夜ごはんときもちを記録した日記。 踊る阿呆に、見る阿呆。 踊ってころんでしょげて蹴っ飛ばしてうたって仰いで。 よきもあしきももらったものを消化して、ここに淡々と暮らしを綴る。 ち…
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2016年12月の記事一覧

ひみつ基地

二〇一六年十二月三十日金曜日 晴れ 道に屋根に積もった雪がひかりを反射してまぶしい。よりいっそうの晴れをかんじる。夜中に雪が降ったのだ。ここではさらっとそこに雪がいるんだな。雨が降るみたいなのと同じように。 長野。 いちねんまえはのんさんが生まれたばかりで東京の家で過ごしたけれど、四年目のねんまつねんし。 すこしずつ、それはのんさんがいるからでもあるけれど、どもらずお喋りできるようになってきたなとお帽さんの実家は、わたしからしたらとても丁寧に年を越し年を迎える。お正月が

暮れのちゃきちゃき

二〇一六年十二月二十九日木曜日 晴れ ねんまつの築地、銀座、東京駅、どこもひとがぎゅうっといた。この時期に実は来たことがない場所ばかり (築地の市場ははじめて訪れた)。ああ、いまはねんまつなんだ、師走だな、そういう空気に包まれていて、ねんまつなきもちにようやくなれた。混んでいるだろうとか 賑わっているだろうとか 忙しないだろうとか いろんな予測はできる。そのちからは時々厄介で、妨げる諦めるを応援したりしてしまう。せっかくだからと飛びこむたのしさよ。それをふやしてゆきたいな

コンビーフランドリー

二〇一六年十二月二十八日水曜日 晴れと曇り 幼いころいっしょに実を摘んでたべたりヒミツの場所をつくってあそんだり、いくこさんといるときのことを思い出そうとするとそんなふうな空気、イメージがふわっと浮かぶ。 きょうはそんないくこさんの話。 個展の前、個展、個展の後、どのいくこさんもすべて異なってそれでいてどれもとってもいくこさんだな、と思う。 個展の後のいくこさんは、ぼんわりとすこし輪郭がぼやけたような、ゆるまっているそんなふうだった。洗いたてのわんこというような。

ふくふくぬか漬け

二〇一六年十二月二十七日火曜日 雨と曇り 昼ごはんは、葱とごぼうの炒めもの、くるみ和え(小松菜、人参)、南瓜の塩蒸し、ほっけ(大根おろしたっぷり)、とろろごはん。 おやつにあんぱん。ふっくら発酵して、バターの風味もしっかり。ああ、おいしかったなあ。 夜ごはんは、昼の残りものたち。 帽さんは、取材兼のみ会があるので夜はおでかけ。 日をまたいだころ、興奮して帰って来た。 帽「おもしろいひとに会えたなあきょうは。」 やって来たことたちがくっきりした点になってきていて、な

ロート製薬

二〇一六年十二月二十六日月曜日 曇り 夕方、一時間くらい泣きうなりつづけたのんさん。うんちくんをするときはいつもうなるけれど、いつもよりうんと長かった。いやあ、がんばった。彼女のふんばっているときの状態は、出産とかさなる。野生スイッチがはいりっぱなしで、ここにいるけれどここにいなくなる。たえずうごきつづけて、なにかをひっぱったり、寄りかかろうとしてするりとうずくまったり。叫んで泣いて、まるで声は耳のあなからあなへぬけていってしまっているよう。終わりはすうっとやって来た。え

メリークリクリクリクリー

二〇一六年十二月二十五日日曜日 晴れ 畳の部屋の入り口、襖に赤い包み紙につつまれたこれは本かしらというものが立てかかっていた。わお!のんさんにサンタ!知らなかった、わお! のんさんが目を覚まし、包みをがさごそしている。じっと見ていると、帽さんがやって来て(あら、見つけたの。でもこれはぽさんにサンタ来たみたいなのよ。)と。わお!(さっき、換気扇からずごごごごって入ってきて置いていったのよ、サンタクロース。)わが家はサンタさん、換気扇から入ってくるのだって。草間彌生さんの個

トナカイはとぶのか

二〇一六年十二月二十四日土曜日 晴れ 録画したクリスマスの約束。初年度(十五年前なのだって!ワオ!)とつづけて三年目くらいまではみていたような気がする。「Automatic」を宇多田ヒカルさんが歌い出した瞬間に(ああ、これだ)と思う。「Automatic」で聞くこのひとのこの声、この抑揚、このうたう癖が、どのうたよりもぴったりとしっくりとじんわりときた。いくつも録画していたけれど、ああこれが聞きたかったのだなあと思う。これがクリスマスらしさのピーク。 夜ごはんは、水口食

つぶらなお目目のきいろいアイツ

二〇一六年十二月二十三日金曜日 晴れ ぽっかぽか お風呂でよめるときにそろりそろりと読みすすめている『ココアどこ わたしはゴマだれ』。高山さんとスイセイさんの会話は、食卓をずっと囲んでいるひとの会話というか、一線を越えているひとたちの会話だなと読んでいて思う。わたしがぼんやりそれってどういうことだろうとひっかかる文章の次の行をみると、するりと別の言葉に当てはめて言い換え、「そうそう」と話はすすんでいったりする。お風呂のなかではあたまがぽやぽやでもあるからさささっと読んでい

aho-dance

二〇一六年十二月二十二日木曜日 雨と曇りと お裾分けをしに行こうと外に出ると熱風。南から風が吹く。春と夏のあいだのようななまぬるさのなかに、さくっとしたふゆのきもちよさが見え隠れ。チラ見せされた夏、恋しく思う。 夜、ねむる前ひとりパソコンをひらきキーボードをたたく。文字を打つ。電気の消された向こう側は、おもちゃかごからおもちゃ、本棚から本がはみ出て散・散・散。 おもちゃかごへおもちゃを、本棚に本をもどす。 さあ、お好きなようにしやしゃんせ。 整えているようでそれはショー

あかり from here

二〇一六年十二月二十一日水曜日 晴れ あたたか 柚子湯、いとこ煮。積極的に参加する行事ベスト3のひとつ、冬至。(七草、節分があと2つ)陰のはじっこ。ひるがえって陽。 冬至は晴れやかなきもちになる。あしたからは日がのびてゆく。あけてゆく。どんづまりの先へ。あけましておめでとうは、きょうにもお似合い。 帽さんは、南瓜煮に、小豆煮をかけてたべるいとこ煮というものを冬至にたべてきたと言う。長野の風習なのかしら。わたしが知らないだけだったのかしら。 ある冬至の日、帽さんは

給食のカレー

二〇一六年十二月二十日火曜日 晴れ いっしょにお昼寝をしたら、十三時。寝すぎました、きょうが終わってしまうじゃない。 のんさんと公園。 芝生のうえに、落ち葉がひろがり木々もぽつりぽつり。のんさんがむりなくはいはいで移動する距離のなかにほどよくあそびのあるところに来た。元ゴルフ場というここはゆるやかな坂があったり、空はひろかったり、さんぽに最高だと思っていたけれど、はいはいにも最高そうだなんて。 数えたら果てしないだろう数の落ち葉。おろすとザザっと音がする。のんさん

うちゅうの芽

二〇一六年十二月十九日月曜日 晴れ 夜ごはんは、白菜の浅漬け、野沢菜と昆布の漬け物、冷ややっこ、しょうが焼き (キャベツのっけ)、鶏肉のトマト煮、豚汁、ごはん。 のんさんは、帽さんが帰って来てから起きてきた。夕ごはん、ちゃぶ台を三人で囲む。お風呂前に夕ごはんをすませたのんさんはおなかはへっていないようで、バンボのテーブルにトイレのえほんを置きひらいたページを眺めながら (コロッ カラッ タラッ コリュッ カロッ カラッ カロッ)というような舌をつかった音を出しながら喋る

おはぎとおおきな茶碗蒸し

二〇一六年十二月十八日日曜日 晴れ あたまのなかで再生されたうたをつかまえて、携帯電話で三角じるしを押す。 自転車でおいで/矢野顕子 思いきって両耳イヤホンをつけると、 ふぁあぁぁっと膜が張る。 ちいさなうちゅうに包まれる。 たしか矢野さんはツイッターでかな、歩きながらイヤホンやヘッドホンをしたらどこにいるのか感じられなくなる・わからなくなるから外で聞くことはないというようなことを書いていた。 そのことがあたまをよぎって、 (ほんとう どこにいるのかわからなくなる

しろい森のあっちとこっち

二〇一六年十二月十七日土曜日 晴れ いくこさんの展示へ。 そこはしろい森だった。 夜になると、鳴き声なのか話し声がきこえてきそうなしろい森。 まっすぐ目をみて彼女が言ってくれた言葉と表情を思い返す。がくがくふるえながら言ってくれていたんじゃないかなと思う。それは、こどもが冒険に出かけて、帰り道があやふやになり暗くなりかける空のころ、ころんだひとりに (だいじょうぶだよ)ともうひとりが言うみたいに。 つくるひと特有のまっすぐなやさしさ。 展示に出かけてわかったのは、