詩『これは詩ではない』
Ce n'est pas de la poésie.
紙に落ちたeはsを待たず、アポストロフの仲介でnとの関係を清算する。
tが遅れて合流した時、eは不在、sも間もなく紙に溶け込んだ染みとなっていた。
一人きりとなり、tはpとの距離感、すなわち半角なのか全角なのかで悩んでいた。
pとsの間に挟まれたaは母音であることに優越を抱く。
しかし、所詮は否定の一部であり蔑まれる存在である。
後ろのsとは肉体関係にあり、カマを掘られているのは公然の事実であった。
オスとメスで言えばdはオスで、eはメスということになろうか。
実際のところ、二人は親子でありながら、母であるeはsをオスとして愛していた。
世間では同性愛に対して寛容になりつつあるが、近親相姦は未だタブーである。
dの考える理想と現実は、子音と母音ほど遠く離れていた。
最後にla poésieが遅れてやってくる。
la poésieとは一体何者であろうか。
作者であるtsも未だその正体を知らず困惑する。
定冠詞laから女とは推測された。
tsは誘惑に抗いきれずla poésieの腰に手を回そうとする。
la poésieはtsの耳元に口を寄せるとこう呟いた。
署名すれば所有権はあなたのものです。
でも共犯者ですよ。
共犯者にされるのはまっぴらごめんだった。
tsは衝動的に書き殴った紙を屑籠に放り入れる。
手遊びはこれぐらいにしておこう。
なお、『これは詩ではない』。
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