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詩のようなもの

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小説の合間に。
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#現代詩

詩『類語練習帳』

努力を重ねる。 ピアスの穴を数える。 勉強をする。 タイルの表面に血だまりを作る。 仕事を…

詩『罪状』

待ち焦がれてもその時は訪れず。 要らぬ気遣いか。 さもなければ勿体ぶった采配か。 呪詛を求…

詩『それ』

「それ」は夜明けに生まれる。 生まれて早々に絶叫する。 地面を這い回り、私の後を追ってく…

詩『返報性』

少女の指先から狂いが滴り落ち、 背中が犬のようにせがむ。 助けて、と言われて、 僕は黙るし…

詩『予定調和』

あの人が死んだ。 昨日近所の人から聞いた。 あの人が誰だか詳しくは知らない。 でも、きっと…

詩『ジッパー』

着ぐるみになった夢を見た。着ぐるみに入った夢ではない。着ぐるみそのものになった夢だった。…

詩『音楽機械』

音階をステップして駆け上がると毛穴から流れ出す汗ではない《何か》。脳髄で発火する神経細胞はチッチッと鮮やかにビートを刻み、世界は白から灰色へとグラデーションする。口から漏れるあーあーと喃語、柔らかい唇をなぞる俯きがちな二頭身の少女がそっとつぶやく。消えたい、消したい、消えない。セッションをさかしまに再生すれば聴こえてくるはずの革命とどす黒い太陽が照り返し、もはや折れた針とともに無音の永劫回帰となる。狂ったような静寂。私は、私は、私は、の自己言及の大合唱が幕を引き、後腐れなく吹

詩『必然』

あなたが別の誰かであった時、振り返ると、ありがとうと言って立っていたのはあなただった。あ…

詩『サクリファイス』

あなたが冷蔵庫に入ってる。 見開いた眼差し。 腫れぼったい唇。 憎ったらしい鼻。 毎日見ると…

詩『7つの鉢』

3月27日。映し出された足の薬指と小指は奇妙に短い。幼い頃に歳の離れた兄に潰された痕跡だと…

詩『原理主義』

白色のビニール袋がふわりと浮かんで線路に落ちる。そう、大人は穢れや堕落、欺瞞の象徴である…

詩『日常』

日常からの逃走。少女はそう言って飛んだ。もっともらしいことを言った大人は全員有罪だった。…

詩『回路』

指先を上にスワイプする。 機械人形の眼球は上を向く。 指先を左にスワイプする。 機械人形の…

詩『無関心』

文学にも映画にも関心は無くなった。 三島も谷崎も芥川も今では便所の落書き と変わらない。 医者は鬱病寸前の解離だと言う。 統合失調症の陰性症状ではなかった。 分類はどうでもいい。 精神科医と占い師の違いは俺を患者と 呼ぶか客と呼ぶかでしかない。 欲望の三角形が反時計回りにぐるぐる と回る。 お盛んなことだ。 時間と精液と弾薬を献上したところで、 ねぎらいも、おこぼれもないだろうに。 統計学に疎い俺には人が何人死んだとか 聞いたところで何も分かりやしない。 周囲の風景が張り