読書記録 - 森沢明夫 「エミリの小さな包丁」
この風景、あなたもきっと好きになる。
夏。 海の見える田舎町で
いきなりの偏見で申し訳ないですが、夏の田舎町を舞台にしたドラマってハズレ無いんですよ。
たとえば『ビーチボーイズ』とか『Swing Girls』とか。
映画なら『真夏の方程式』もあるし、アニメなら『サマーウォーズ』もいい。(どれも古くてスイマセン)
意識の底の方にある日本の原風景というか、ある種懐かしい匂いを感じます。
この小説はそんな偏見バリバリの僕にはどストライクの雰囲気で攻めてくる、夏の田舎町を舞台にしたドラマ。
都会の社会人、疲れたら夏に田舎行きがち。
こんなあるあるが成立しちゃうほど使い古されたシチュエーションではあるけれど、やっぱり好きなんですよねこういうのが。
何気ない日常と手料理の数々
町での生活は規則正しく、ある意味退屈に映るかもしれません。
早朝、犬と散歩に出かけて、近所のおばあさんに挨拶をする。
神社にお参りをして、帰り道で魚をお裾分けしてもらう。
散歩から帰ったら、朝食を作って食べる。
おじいちゃんは工房に籠り、風鈴を作る。
エミリは家事をして、お昼時になったら2人で昼食を作る。
夕方になったら釣りをして食材を確保し、家に帰って魚を捌く。
おじいちゃんにとっては何気ない、普通の生活。だけど、
エミリの心を癒したのは、おじいちゃんが作る魚料理の数々。
夏の風景描写もすごく素敵だけど、料理の仕込みや食事シーンの描写もかなり細かくて、作ってみたいと思えるものばかり。
こういう生活、いいなぁ……。
夏の終わりに
もちろん料理以外にも、町の人々との交流や淡い恋バナもあったりして、次第にエミリは癒やされていきます。
しかしある事件をきっかけに、再び深く傷ついてしまう心。
夏の終わりに、エミリが選んだ場所とは。
あなたも心が疲れたときは、この本でちょっと一休み、してみませんか?
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