読書記録 - 森博嗣 「すべてがFになる」
天才かよ。
理系ミステリと言えばこれ
第1回メフィスト賞受賞作。
改めて紹介するまでもない理系ミステリの王道ですが、恥ずかしながら初めて読ませていただきました。
感想としては、めちゃくちゃ良かったです。
めちゃくちゃ良いんだけど、今回は敢えて「ちょっと残念だったところ」からお話ししてみようかと思います。
それくらいしないと、ベタ褒めで終わっちゃうので。
難易度は低め
ジャンルとしては密室ものですが、ミステリ好きな人なら、ある程度読み進めれば結構すんなり正解にたどり着けるかもしれません。
ヒントもそこかしこで提示されていて、良く言えば優しさ溢れる、悪く言えばちょっと難易度的に物足りない小説。
ガッツリ推理を楽しみたいって人には微妙かも。
納得感には欠ける
犯人の動機や心情の描写を重視する人にはあんまりおすすめできないかな?
僕にはいまいち「納得感」ってものが感じられませんでした。
気になる点はこれくらいですね。
魅せ方がすごい!
逆に良いところはいくつもあります。まず挙げておきたいのは演出や雰囲気作りが秀逸なところ。
この作品、アニメもコミックもドラマも制作されてますが、最初から映像化を目論んで書かれたじゃないかってくらい、魅せ方が上手くて惚れ惚れします。
特に印象深いのが最初の事件。
紹介文では死体が「現れた」と表現されていますが、まさに現れるんですね。「発見された」んじゃなく。
このシーンはもう、恐ろしさとある種の美しさで、えげつないほどのインパクトを読者に与えてきます。
ここ読んだら、そりゃ最後まで読むしかないでしょ。
未来予想図がすごい!
1996年発表とは思えない世界観も魅力の一つ。
リモートオフィスからAI、メタバースを彷彿とさせる空間など、今だからこそ楽しめる要素が満載です。
登場人物に天才が多いことでも知られる本作ですが、森博嗣という作家こそが一番の天才だったというオチ。
20年後の未来が見えすぎてて怖い。
ワトソン役がすごい!
探偵ものの推理小説で欠かせないのが、ちょっと間抜けな「ワトソン役」。主人公の相棒ですね。
その役回りを演じるのが西野園萌絵という学生ですが、こいつが色々とヤバい。
探偵役の犀川助教授を完全に凌駕する存在感。
もしかして真相までたどり着いちゃうんじゃないの? と思わせる天才っぷり。全然間抜けじゃなかった。
父親は元大学総長。さらに叔父は愛知県警部長で、叔母は県知事夫人。
キャンプだっつってんのに日傘を持ち込むお嬢さま属性。
閉塞感漂う重苦しい空気を、いい感じに緩和してくれます。
長く楽しめる1/10冊
この小説は十作から成る通称「S&Mシリーズ」の第一作。
犀川 (S) と萌絵 (M) の活躍は、これからも続きます。
ハマったら長く楽しめるのも良いところですね。
天才同士の推理バトルや、ゾクッとするホラーチックな描写が気になる方はぜひ。
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