殊能 将之「ハサミ男」を読ませたい
ミステリーには2種類ある。
読者が探偵と同じように推理に挑む「推理メイン」のミステリーと、読者が「騙されること」を前提とするエンターテイメント色の強いミステリーだ。
"読者への挑戦" で知られるエラリー・クイーンの『国名シリーズ』は前者に分類されるだろうし、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』や『アクロイド殺し』は後者の代表であろう。
ではこの『ハサミ男』はどちらに属するか。答えは、完全に後者である。
ハサミ男は既に2人殺している。紛れもないシリアルキラーだ。(これはネタバレでもなんでもない)
そのハサミ男をあざ笑うかのように、そっくりそのままの手口で殺される3人目のターゲット。
全くの偶然によって "第一発見者" となってしまったハサミ男を警察は次第に追い詰め、ハサミ男もまた真犯人に迫る。
ラストに潜むどんでん返しは、まさに手品のよう。
さすがにネタバレはできないので、どんでん返された瞬間の僕の感想をお伝えするに留めておこう。
「え?」
それ以上でもそれ以下でもない。「え?」だ。
次に続く「マジで?」までの数秒間、思考は完全に停止している。
そして思い知るのだ。
この本の読者は、殊能将之という作家に「騙されるため」に読んでいたのだと。
もしあなたがこの小説を読むと決めたなら、途中で読み返したりせず、素直に一気読みすることをおすすめする。
そしてぜひ、「騙される快感」を味わってみてほしい。
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