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読書記録 - 西澤保彦 「七回死んだ男」

六畳ほどの広さの屋根裏部屋に祖父は倒れていた。
殺人事件? まさか。
今日この日。一月二日。
この日にこの渕上ふちがみ家で殺人事件など起こってはいけない。起こる筈がないということを僕は既成事実として知っているのだ。

この設定、ズルい。

「七回死んだ男」のルール

  1. 同じ1日が繰り返されることがある (意図的に繰り返せるわけではない)

  2. 繰り返される範囲はきっかり24時間

  3. 繰り返される回数は9回と決まっている

  4. 最後の9回目の結果のみが「本当に起こった出来事」として成立し、それ以外の結果は全て闇に葬られる

  5. 主人公が全く同じ行動をとれば、全く同じ1日が繰り返される

そして事件は「あり得ないタイミング」で起こる。

新感覚タイムリープミステリ

いわゆるタイムリープもの。
ある1日が9回繰り返される間に、被害者である祖父が死なずに済む道をなんとかして見つけ出すというのが大まかなストーリーです。

つまり全てが上手くいけば、犯人も被害者もトリックも存在しない。
では「本当の謎」はどこにあるのか。それがこの本のユニークなミステリ要素となっています。

この本の注意点

表紙に騙されるな!

表紙だけ見ると若干ホラーテイストを感じますが、怖い話ではありません。
なんなら文体もちょっとポップです。
なにせ主人公、「9回目の結果しか未来に残らない」ことがわかってるので、割とやりたい放題やっちゃいます。
たまに投げやりになるところも微笑ましい。

むしろ相続絡みの修羅場が怖い!

舞台はとある企業グループで会長を務める祖父のお屋敷。
「わしの跡継ぎを誰にするか決める!」
そのタイミングで新年会に集まる親戚一同。

どんな修羅場が待っているか、もうわかりますよね?
むしろこっちの方が怖いです。

ヒントを見逃すな!

謎に関しては言えないことが多すぎてつらい!
でも一つだけ言っておくとするなら、途中すごく大きなヒントが提示されます。
ミステリに慣れている人なら、このヒントさえ見逃さなければ謎が解けるかも。

まぁ、読み終わったから言えるんですけどね。

普通のミステリに飽きた人におすすめ

僕はこの本の設定や大体のあらすじを知った上で読みましたが、それでも十分振り回されてしまいました。
物語がどこに着地するのか、何がメインの謎なのかがなかなか見えてこない。
そういった意味でも、すごく新鮮な読書体験をさせていただいた気がします。

ちょっと変化球な刺激が欲しい人はぜひ。

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