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橋本慎×星部ショウ×児玉雨子×ぱいぱいでか美×北野篤 「聞きたい! 新世代のハロプロ作家の作詞作曲術!」のはなし

「極端に輝度の高いサイリウムの使用はご遠慮ください。また、お客様自身による派手なパフォーマンスはお控えください。撮影、録画禁止。あとジャンプも禁止です」

ぱいぱいでか美さんによる開演前の諸注意から始まった今回のイベント。

「Berryz工房の『ジンギスカン』新規、ぱいぱいでか美です」まずは登壇者が各々自己紹介。

「ハシプロと揶揄されているんですが、全然そんなつもりないです」アップフロントの中の人こと橋本さんは今日も饒舌。

「星部ショウです。『眼鏡の女の子』をオーディションで出したら橋本さんから電話が掛かってきて、ハロプロにも関わるようになりました」

星部さんがしゃべると、でか美さん雨子さんが「ほしべー↑」とコールを都度入れる。あらためて、星部ショウ本当に存在するんだと目の前にいる真っ赤な「星部」Tシャツ越しに眺めた。

「タワーレコードの8階で橋本さんに『えー!作詞すんの!一緒にやんない!』と声を掛けられてコンペに参加するようになって、全然通らなかったけど急にアンジュの『乙女の逆襲』でハロプロに関わるようになりました」

児玉雨子さんが「橋本さんヤベー」的な感じで話すが、横から「星部、雨子両先生が居なかったら今のハロプロは成り立たない!」とヨイショする橋本さん。始まったよ、と笑ってイヤがる二人の攻防。橋本さんは楽しそうだ。

そして個人的に一番、話が聞きたいと思っていた人の登場。「博報堂ケトルに勤めています。北野篤です。2017年のモーニングみそ汁キャンペーンからハロプロに関わるようになりました」

博報堂の北野さんである。物腰の柔らかそうな雰囲気に、やはりどことなく面影のある顔立ち。紛れもなく世界の北野の息子だ。D.N.A! だ。

元々博報堂の仕事として7年くらいやっていた「セ・パ交流戦」のプロモーションにモーニング娘。を起用するようになったのも、完全に北野さんの猛プッシュによるものだったようで、そういった縁でアップフロントとも繋がってMVやアートワークにも徐々に関わるようになったらしい。

「北野くん無しにBEYOOOOONDSは語れませんよ!」橋本さんがまた茶々を入れる。

■登壇者の仕事一覧を見ながら褒め合う

スクリーンに星部ショウ作詞リスト、作詞作曲リストが映し出される。目視出来ないくらいの凄い数。だが意外とモーニング娘。が少ないという話になり、橋本さんが「モーニングは、まずはつんく♂が書くという流れがある」と説明。

その上で「たまに違う色を出す時に他の作家に回す」という方針らしい。なるほど最近は新メンバー加入のタイミングで別作家の楽曲がある印象。今回の『LOVELYペディア』『人間関係 No way way』もそうだわ。

「『妄想リハーサル』ありがとうございます。素敵な曲」カントリー・ガールズの曲にいちいち反応するでか美さん。

「雨子先生の言語感覚も強みだけど、詞曲同時に作れる強みが星部くんにはあって、それを巧みに使い分ける私がいる」何故か自画自賛する橋本さん「結局、自分アゲ」と突っ込まれる。

ここで、でか美さんが年末の三十六房出演時に一岡伶奈ちゃんから言われた「六本木駅、高輪ゲートウェイと私に寄り過ぎてて他の子に悪い」という話を星部さんに伝える。

「恐竜の曲とか作ってあげてください」でか美さんがお願いするも「恐竜とかは昔と違うから難しいなぁ」と橋本さん。そこに雨子さんが「実は毛が生えてたとか面白いかも」みたいに話を広げる。こんな感じで普段も楽曲会議しているんだろうなと想像できて面白い。

続いて児玉雨子リスト。

「え?こんなもんだっけ?」意外と少ないという橋本さんからの感想に「たぶん、ボツが多いからですよ」と若干、恨み節混じりに言う雨子さん。

「でも、道重とかアプガとかにも書いているからか」と誤魔化す橋本さんだけど「ボツ出すからですよ」と突っ込む雨子さん。

「『リズムが呼んでいるぞ!』ありがとうございます」斜めからブッ込むでか美さん。

『リズムが呼んでいるぞ!』『VIVA!!薔薇色の人生』が実はカントリーの2nd、3rdシングル候補だった事が橋本さんから明かされる。最終的に「台詞からスタートさせたい」という事で2ndは「わかごめ」になったという経緯らしいが、色々と事情があるらしく急に饒舌だった橋本さんがゴニョゴニョしだす。「わかりやす!」と突っ込む雨子さん。

話題変えようとする橋本さんだが「『25歳永遠説』はよく裏返して書いたよね!」と豪快に墓穴掘る。

一同「何を裏返したんだ」と大爆笑。

ただ、雨子さんが「これは丁度、作曲のKOUGA君も私も、宮崎さんもほぼ25歳の年だったから、偶然。それで出来た曲」と助け舟。

続いて、でか美さんから「『あばれてっか?! ハヴアグッタイ』は、どういう精神状態で書かれたんですか?」と聞かれた雨子さん。

「この曲はディレクターがたいせいさんで、橋本さんは結構ロジカルな指示出しなんだけど、たいせいさんは禅問答」「46億年の時も『ちゃうねん!愛やねん!』という感じで、これも何言われているか意味分からず洗脳されたように書いたから記憶ない」

そう笑って話す雨子さん。たいせいさんの「ちゃうねん!」言ってる姿が目に浮かぶようだわ。

そして星部・児玉コンビの共作リストが映される。14曲ほどを多いと取るか意外と少ないと取るか。一番最初の共作はアンジュルム『マリオネット37℃』だった。もう懐かしい。あいあい。

「『Good Boy Bad Girl』ありがとうございます」でか美さん、何度目の天丼だろう。

共作で好きな曲は?という質問に星部さんは『銀色のテレパシー』、雨子さんは『いとし いとしと Say My Heart』とそれぞれ。雨子さん、僕も大好きだよSay My Heart。

詞のイメージを伝える手段として、仮歌を録る前に雨子さんから「雨子仮仮歌」という素材が届くらしい。譜割りのイメージを伝えたりする為だというが、超聴きたい。

『アッチャアッチャ』の時は雨子仮仮歌を聴いて、星部仮歌が作成されるという豪華な2段構えだったみたい。今後はBEYOOOOONDSのイベントで星部仮歌が流れ出して大騒ぎみたいなの見たいぞと満場一致した。見たい。

後ほど何個か仮歌が聴けるという事で盛り上がる。

そしてそして、最後に北野ワークス。

BEYOOOOONDSのイメージが強いけど、最初はモーニング娘。の『LOVEオーディション』から。そこから永谷園とのコラボ商品『モーニングみそ汁』を手掛けるようになった。

誰がどの具か、あらかた決まった時に13期加入が重なり、例のサプライズ加入発表の直後に「あのー、みそ汁の具はどれが良いですか?」と北野さんが加賀、横山に聞きにいって物凄く怪しまれたと。まあ、そらそうだ。

「みそ汁?具?なんで?」そう思うわな。

それがセカパカプロモーションに繋がっていき、モーニング娘。'20の『LOVEペディア』のMVやアートワークを手掛けるまでになったと。

北野さんは道重さゆみ、鈴木愛理のMVにも関わっていて、そこには「ハロプロOGになってからの可能性、卒業後に夢を持てる手助けがしたいから」という気持ちもあると言っていた。MVで海外に行けたり、色んな衣装を着れたり。

こぶしファクトリーのラストシングルも北野チームによるMVが現在鋭意制作中との事。楽しみ。

■橋本的ハロプロトピック ベスト3

登壇者のハロプロ関連トピックを発表するコーナー。ぱいぱいでか美さんは、年末のアイドル三十六房と同じだから、トピックだけ出して割愛。

気になる人はYouTubeへ。

橋本さんの3位は『宮本佳林ソロ活動開始』という少し意外なトコ。橋本さんがしきりと「宮本はエモい!」と力説していたのが印象的。「この前ソロライブした金澤は本当に歌が上手いと思ったが、宮本はそれにエモさ(様々な表現力)も持っている」そう語る橋本さん。

今までは卒業してからのソロ活動スタートが基本になっていたが、グループに所属しながら資質や本人のやる気次第で可能性を広げてあげたいというアップフロントとしての体制作りの第一歩としての宮本佳林ソロだったようだ。

考えたらJuice=Juice結成も研修生の可能性を広げる第一歩だった。宮本佳林という子は何時の時代もそういう役割を背負わされる運命なのかもしれない。そして、それだけのポテンシャルが彼女にある事はハロヲタ全てが一番よく知っている。

でか美さんが「ソロ活動を始めるとヲタは別の不安が……」と恐る恐る橋本さんに問うと「それを言ったら後藤真希とかもグループに居る状態でソロ活動を始めていた。結果として卒業したが、あくまで結果。これからも他の子にも経験させたい。見守って欲しい」そう話してくれた。

まあ、本当のところは色々あるとは思うけど、橋本さんの言い方からは純粋にハロプロの子たちに様々な可能性を提示してあげられる環境作りをしているように感じられたし、その事をヲタに伝えたいからトピックとして選んだんだろう。

2位は『カントリー活休・こぶし解散』

「カントリーは活休といっても予定があるわけじゃない」そう言う橋本さんに「ヲタは敏感ですからね。カントリー大全集に①がついているだけでブチキレますから!」とブッ込むカントリーヲタでか美さん。苦笑いの橋本さん。

「こぶしは歌えるし、アカペラしたりとハロプロの中でも他にない存在だから残念だけど、本人達の気持ちを応援する」橋本さんは、そう言っていた。全部の事情は当然言えないだろうけど、それでも全てを「本人達の決めたこと」でまとめるのは少し都合良いなぁとも思うのだが。

この先、同じような状況が起きた時に選択肢が多くなっていて欲しい。その為の宮本佳林プロジェクトであり、今回の活休・解散・卒業ラッシュは過渡期の中で必要な痛みだったと思える未来であって欲しい。聞きながら思いました。

1位はBEYOOOOONDSデビュー。だけど、ビヨは後程まとめてやるとの事で、橋本さんは以上。

■星部的ハロプロトピック ベスト3

「星部Tの方が誰よりも高い位置で拍手している」でか美さんが客席の一際目立つ星部ヲタの人をイジる。「ほしべー↑」とコールする雨子さん。

そして3位『公式アッチャアッチャ隊の衝撃』がスクリーンに映されると場内大爆笑。

2018年の年末に「インド、踊れる曲」と謎の指令がきた。

星部さんの告白から始まり、その告白のたび場内爆笑。「なんでインドなんだろう?」分からないままデモを作って提出した。時間を置いて雨子さんにも不思議な指令とデモテープが届く。

「踊れる。インド。よろしく」

深く考えないようにしよう……雨子さんは無心で詞を書いたようだ。一方、ひと安心した星部さんのもとへ謎のトラックと共にwikiが送られてくる。

「このオジサンが歌うから」

誰だ、このオジサンは……おそるおそるトラックを開くと、なんとも癖になるオジサンの声。後半なんかメンバーと同じキーで歌ってて、ずっと爆笑しながらアレンジ作業をした。木魚の音や演歌みたいな雰囲気にしたり、遊びを入れて作って1ヶ月後。

「謎のMVが届いた」

場内大爆笑。

「僕のところにも『踊れる。インド。オジサン』というオーダーがきた」

北野さんが追撃する。BEYOOOOONDSの打ち合わせの時に「ちょっと残ってくれ」と言われ、その場で告げられた。ただ、その時は「アンジュルム総出演で」と言われたから、℃-uteがやったような各メンバーが出るMV的なのかなと思ったらwikiがスッと出てきて「このオジサンが出ます」と言われ「誰、このオジサン?」となった。

なに、この三段オチ。場内大爆笑。

完成したMV見て「たいせいさんが一番楽しんでいた。やっぱ、シャ乱Qって凄いんだな」と感動した北野さん。雨子さんは僕らと同じタイミングでMVを初めて見て「ディレクターのたいせいさん、じゃなくシャ乱Qのたいせいだった。ホンモノだった」と同じく感動したという。

「北野さんの狂ったMVとそれをOKするアップフロント」「発注からヤバいと思った」「どういう思考なんだろう」一同が爆笑しながら振り返ると

「企画書を見返したら、やっぱ頭おかしいと思った」

最後に北野さんが落としてくれた。超面白い。本当にあのMVは久しぶりにアップフロントが本気で悪ノリしたのを見れたと思う。ああいう事が出来るうちは、大丈夫だと思ったものだ。

そして、ここで当時の企画書の一部を北野さんがスクリーンに。

「日本人の中にはカレーがある」そう記されたパワポ。そこからの1ページ1ページが完全にどうかしているイカレ具合。ページをめくる度に場内が波打つように爆笑。「こんな企画書は狂ってる」そういうフリップ芸のようだった。

だが、狂いすぎてて問題がありすぎてレポNGになっちゃったのが残念だ。

「山木さんがMV撮影の時、最初は僕をいかがわしそうに見ていたけど、休憩時間に『Loneliness Tokyo』のMV撮ったんだよ」と北野さんが言った瞬間に「カントリーのMVでも沢山の衣装の撮って欲しいです!」とコロッと態度が変わったのが面白かったと小話も。

「かわいいなぁ」でか美さんは満足げだった。

2位は『BEYOOOOONDS楽曲制作』だけど、これはまとめて後ほど。

そして1位が『こぶしの卒業楽曲制作』だった。こぶしのラストシングルは2曲ともチーム北野によるMVということで、期待して欲しいと冒頭で橋本さんが太鼓判。

「こぶしの最後の曲だから、最初から曲を書いていた星部、看取ってくれ」と橋本さんから依頼が来て、集大成になるようなものになるようにと作った。こぶしは勝手に同期だと思っているので、解散は残念だけど『青春の花』は学校の卒業式で歌われるような曲にした。

『スタートライン』は、こぶしという【下宿、寮】から旅立つような、キャンディーズの『微笑がえし』みたいなイメージで作った。という星部さんの説明に「あー」と納得している反応が多数出る本日の現場の平均年齢。まあ、自分も「なるほどぉ」と思ったけど。

「大阪で初披露した時にお客さんがすぐにコール入れて、相変わらずの対応力の凄さにメンバー、スタッフが感動してた」と橋本さん。

■児玉的ハロプロトピック ベスト3

3位は『BEYOOOOONDSの存在全て』ということで後ほど。

2位は大変だったと噂の『モーニング娘。’20「LOVEペディア」「人間関係NoWayWay」作詞』の顛末。もともとは2019年の1月くらいから構想はあった。『LOVEタイフーン』という曲名だったのが、台風被害があって自粛。

その後『LOVE旋風』としたけど、「せ!」っていう語感が勢いないね、でも締め切りの近付いてきて「どうする?どうする?」となっていたらグループLINE上で大喜利になってきて橋本さん、たいせいさんがおかしくなってきた。『LOVE大吉』とか言い出して「何言ってるんだ、この人達」と思った雨子先生だった。

そこで『LOVEペディア』どうですか?と送ったら「ええやん!(たいせい)」となったけど、もしそれで会社の上層部が「いやー」となった時に、もう本当に時間がない。じゃあ、コンビニでエロ本買う時にジャンプとか上に乗せて隠すみたいに別の歌詞も出して、そしたらどっちか採用されるだろうと思ったら両方採用された。それが『人間関係No Way Way』だった。

「コンビニでエロ本買う時」という例えが出てくる雨子さんもどうかと思うが、雨子さん的には「おそるおそる2曲出して『ジャンプ面白え!』と両方採用するアップフロントは頭おかしい」と笑っていた。

ここで橋本さんが音楽制作の統括している人らしい発言。

「LOVEペディアは最後に転調するんだけど、人間関係は最初から半音高くしてみた。そうして今のハロコンとかで2曲続けて披露したら流れがバッチリ繋がる。狙ってた訳じゃなく結果的に、ですが」と謙遜しつつドヤる橋本さん。

「やるメンバーは凄いですよね」でか美さん、雨子さんがメンバーも称賛。

そして1位は『こぶしファクトリー「好きかもしれない」作詞』

「こぶしに女性らしい、大人っぽい恋愛の曲を歌って欲しい」という願いがずっとあって、解散とかの話も全然知らない時に書いて、その後に解散が発表されて「ああ、書けてよかった!」と感慨深かったと雨子さん。

■北野的ハロプロトピック ベスト3

北野さんの3位は『あなたの駅名は浅草駅』という、タイトルだけ見たらなんじゃそりゃ。

北野さんは関わったCDは自分でも買っているようでBEYOOOOONDSの初回版CDを3枚買って、せっかくなんで個別握手にも参加した。そして、ふたりのリーダーに仁義きる感じで高瀬と一岡レーンへ。

一岡さんのトコでやってた『駅名占い』で「よく使ってる路線はどこですか?」と聞かれて「銀座線」と答えたら「わかりました。じゃあ浅草駅」と告げられた。

「なにその奇跡!」と登壇者含めて大笑い。「どこまで分かって言ってるんだろね」と橋本さん。偶然にしては凄いシンクロニシティ体験だが、北野さんから浅草の匂いを敏感にキャッチしたんだろう。いや、もう超面白かった。

そこからBEYOOOOONDSのジャケ写の話で桃々姫の座ってる座布団の話題になったんだけど……この先もNGワード満載でレポ禁止。ああ残念。

2位は『LOVEオーディションからLOVEペディア』

ひょんな事からモーニング娘。のオーディションに関わるようになって、ならばと前からやりたかったアドトラック広告とかで大々的に展開した。そんな最初に関わったオーディションで合格した子達のデビューに立ち会えるというのは『LOVE』の繋がりを感じたと言っていたが、北野さんから凄くハロプロに対する愛を感じさせられるエピソードだと思う。

その年の研修生発表会では山﨑愛生ちゃんに投票したらしい。これも縁だ。しみじみと「LOVEっていいなぁ」と北野さん。すると「結局はLOVEでしょ」とみんなで言い出して、最後には「いや、愛やねん!(たいせい)」と雨子さんがモノマネ。

そしてそして1位は『BEYOOOOONDS合宿』ということで、ここから全体でビヨ総括。

「シングルからアルバムまで期間がタイトで、ほぼ合宿状態だった」そう語る北野さん。終わった後、星部さん演出の野沢さんと3人でご飯に行っては「よく頑張ったよねぇ」とお互いを褒め合っていたと話すと「なんで私、呼んでくれないの!」と雨子さんが怒り出す。

「私、頑張ってる!意味分かんない発注来て!『Go West』が突然送られて来て!橋本さんが『これでさ、西と腰でかけたらどう?』とか言い出して!」

喚き散らす雨子さん。

曲自体イイ話な方向にするかどうか考えていた時に「ビヨンド……超えていく……超える……肥える」「肥えたくない!」これだ!ダイエットソングにしよう!

なんてノリで作られていき、そこに野沢さんから「これ入れましょう!」と動画が送られてきてサヤーズブートキャンプができた。そして「ほのピアノはどうする?」「ピアノはやっぱりNHKの体操だよね」という感じで広がっていったと橋本さん。

こういう大人の悪ノリが真剣に出来る環境というのは強い。僕自身も経験しているが、真剣にふざけることって難しくて、プロジェクト全体のテンションが高くないと振り切れない。

「BEYOOOOONDSは誰かが『これ面白いね』と言ったことが、どんどん乗っかって掛け算掛け算して。だって16の子にメイクで腹筋描くんですよ!」

橋本さんが饒舌に語る。

「あれ最初は江口さんがパンプアップしていって、後半はマッチョなオバサンと入れ替わっちゃうようにしようとしてたけど、ギャラが高くて断念したんですよ」そう北野さんも追随する。

「知らないオバサンのリップシンクも撮るつもりでした」

なにもう、面白すぎるんですけど。

「でも、夜中にムキムキのオバサンの画像を広げて、なにやってるんだろう」ふと我に返ることがあったと北野さんは遠い目をしていた。

ここで眼鏡の原型『眼鏡の女の子』のデモ音源を流すことになって、興奮した雨子さんでか美さんが「ショウちゃん!ショウちゃん!ショウちゃん!」と叫びだす。

2013年当時の音源が流れる。今よりちょっと和テイストが強いニューミュージック的な雰囲気がいかにもアップフロント好きそう。これに目を付けた橋本さんだが、少し寝かそうということで時が経つ。

2018年に出来た次の音源ではすでに台詞が冒頭に追加されている。口上の「名前も知らぬ、眼鏡の男の子!」も存在していた。ここである程度の完成度にはなった上で、演出の野沢さんが加わって、3人だった登場人物が9人に増えた。

最終的に北野さんのMVでの脚色、メンバーのパフォーマンスが化学反応を起こして良い物になったなぁと星部さん。長い年月を反芻しているよう。

続いて「ニッポンノD・N・A」のデモ音源。

これは野沢さんに「詞も書いてみる?」と橋本さんが依頼して、詞先で作られた。そこに星部さんが、ものすごーく緩いラップ調の曲にしてみた。流れたデモは脱力感満載で、それはそれで面白いんだけど「まあ、無いよね」とボツに。

そこに橋本さんから「やっぱUSAを絡めよーぜ!共演までしたんだし。勝手にもう公認でしょ。DA PUMP先輩に敬意はらってさ!」なんてところから「ならユーロビートでしょ!ユーロビートはTKでしょ!」と出来たデモが流れる。

全部ギリギリだ。

音源はかなり完成版に近付いている感じだが、まだだいぶ軽い音。ファミコン的なピコピコ感が強い。しかしそこに入ってくるラップで会場大爆笑。

日本の誇れるものを繋いでいくイメージだったらしいが「カラオケ!胃カメラ!ウォシュレット!」というパワーワードに騒然となる。

「ここは残してほしかったぁ」と心底残念がる雨子さん。

そして更に「サビのコード進行が違う。TKはこうじゃない」と言い出してメジャーコードからマイナーコードに変更。いわゆる「TK進行」と呼ばれる王道なコードで構成した現在のサビが出来た。

まあ、誰もが「そうだろうなぁ」と思っていたことだが、本当にまんまその通りに作られてた。

「そのおかげで見事にDJ KOOさんが乗っかってくれた」と、したり顔の橋本さん。

周りを巻き込んでムーブメントを起こすというのは戦略としても正しいし、特にデビューしていく無名のアイドルにとっては最重要課題だ。普段、いろいろと事務所に対して文句を簡単に言ってしまうが、こういう制作裏話を聞くと少し見え方が変わるんじゃないかと思う。思うので、今後も機会を増やして欲しい。なにより単純に面白い。

BEYOOOOONDSの提案のなかで『アツイ!』も『眼鏡の男の子』と同時期だった。ということで、北野さんが『アツイ!』のMV考案で作ったVコンテがスクリーンに流れる。

1フレーム目の映像から会場大爆笑。でか美さん「もう面白いもん!」

深夜のノリで作ったものだけど、こういう事がやりたいというのは一発で分かると思います。と再生された映像は、完全にTwitterなどでヲタが解析していった例のヤツ。

「あくまでイメージ」「イメージね」と言いながら「これはアツイじゃなくてヤバイ」

続いてパワポ資料が表示される。BEYOOOOONDSのイメージ展開の定義グラフみたいな感じで、左右に「アイドル感とエンタメ感」が振られていて、その幅のなかで3曲を使ってBEYOOOOONDSをどう表現していくかを考えたと北野さんが説明。

そのまま『ニッポンノD・N・A!』の字コンテが映される。字コンテとは、映像の構成イメージを伝える為に文字ベースで流れを伝達する資料のことだ。文章とともにイメージ画像とかが添付されている。普通はここから絵コンテが作成されてカメラ割り等が決まっていく。

説明してくれた『D.N.A!』の字コンテだと最終的なイメージまで、当初の構想とあまり変わらないまま進められたようだった。「5分尺のMVを全て監督に委ねるのは難しいから、細かい繋ぎの部分や監督だと気づかない箇所をチーム北野で補っている」と北野さん。

『眼鏡の男の子』では普通の監督さんだと「ただ座っているだけでいい」としてしまうところを「江口さんは真面目な子だから単語帳を読んでいる」みたいにチーム北野で隙間を補完するようにしていたので、濃密なものになったんじゃないかと話してくれた。こういうところが良い仕事。

続いて『眼鏡の男の子』のデザインワークの話で、ジャケットのイメージ変遷が映される。なんでもデザイナーの人がもともと法廷画家をしていたらしく、瞬間の切り取りが絶妙にうまい。

この辺りで予定の時間をオーバーしだしていた。それくらい濃い裏話が沢山聞けて有意義なイベントだった。登壇者も口々に言っていたが、ぜひ第二回も開催して欲しい。

■結局はLOVEでしょ!

2019年の星部さん会心の作品はアンジュルム『赤いイヤホン』

ワイヤレスイヤホンのCMで和田さんが流し目している、みたいなイメージで作った。これは詞曲ともに星部さんだったので、当時の制作メモが映される。左に作詞用のストーリーメモ、右に手書きの譜面。『赤いイヤホン』は詞曲が同時進行に出来て、そういう曲は手応えのあるモノになると話された。

「すごいロジカル」と雨子さんが食い入るように見ていた。

雨子さん会心の作品はJuice=Juiceの『プラトニックプラネット』で、雨子さん的には「全然ロジカルじゃない作り方で膨らんでいった曲。とても気に入っているのに音源化されない……」と橋本さんを見る。

「まあ、楽しみにしてください」橋本さんが言うと「これSNSにみんな書いて!」と雨子さん。『BorderLine』含めて配信の予定はあるらしいので、Juiceヲタは期待して待っててくださいな。

「サブスクも、お願いしますよ!」

でか美さんが最近の一番の核心を突く。客席も大拍手で援護。それを受けて橋本さん「もちろん社内では議論しています。ただ、決めないといけないことも沢山あるので……わかってます!わかってます!」という感じで明言は避けられた。

最後に児玉雨子さんから『46億年LOVE』の変遷。

一番最初は作曲の林田さんから届いた時点で『浪速魂(字があってるか分からない)』という歌詞が付いていた。けど、もう少し形にならず「星部書いてみる?」と依頼したのが2017年くらい。

バスコ・ダ・ガマだサグラダ・ファミリアだという歌詞を作ったけど、ダメだなぁとボツになる。

そこからバブリー世代に擦り寄って「昭和のパリピすごいなぁ」みたいな曲にしてみた。そんな『バブリー☆ソウルミュージック』というタイトルの内容は「終電超えたら今夜は朝までだ!」なんて感じで少しダサいところとか

「ちょっとBerryz工房に歌ってほしいかも」

という内容だったけどこれも残念ながらボツ。そこから雨子さんにバトンタッチ。

最初は『マジヤバティックLOVE』だった。たいせいさんは「ええやん!ええやん!」とテンション高かったけど、結局「あかん!」となってボツに。なにが「あかん!」なんだろう。

その翌日くらいには『ニューラブウェーブ』という、ほぼ完成形の歌詞が出来るが、まだAメロとか細かいところが違う状態。更に翌日になってようやく『46億年LOVE』となる。

バトンタッチしてわずか3日で形にしてしまうというのも凄いが、拘って拘って歌詞を作り込むアップフロントの変態的な執念も凄い。

「46億年っていうのが、出てこなかったなぁ」と少し悔しそうな星部さんが可愛い。

しかし「結局はLOVEでしょ」というワードセンス含めて、本当に児玉“天才”雨子さんだわ。

さて、橋本さんがトイレに行っている間に「ぶっちゃけ橋本さんどうよ?」トークに。

星部さん「アレンジャーより知識あるディレクター。アレンジャーが困るくらいの細かいダメ出しをする人」そう言ってると橋本さんが帰ってくる。

「なんの話?」
「いやいや橋本さん凄いって話」

そこから橋本さんと星部さんの関係の話になり『高輪ゲートウェイ』の秘話になるけど、これは星部さんのライナーノーツにも書かれているので割愛。

北野さんから橋本さんに「いける、いけないの線引きをどうしてます?」と結構ここに来て深い質問。

ビヨなら『トンチキ』さ。当たり前じゃ満足できないでしょ?みんな。アンジュは『強さの中にある弱さ』だったり、つばきは『儚さ、切なさ』、Juiceは『大人の女性』的なイメージ。

そういうのを基軸にして、そこは前提で忘れないようにした上で広げていこうというのは持っていると橋本さん。やっぱり軸はブラさないようにしてんだなぁと当たり前だが思うと共に、モーニングは『つんく♂』という軸なんだろうなと改めて納得した。

楽しい時間も気付けば予定より30分オーバー。最後の最後に橋本さんに「2020年のハロプロはどうなるの?」とぶつける。

激動だったり、心配もかけていますが、ハロプロはこれからも留まらず進んでいきます。これからも愛してもらえるように、メンバーともども考えているので「どうなってんだ!」と言いたくなることもあるかもしれないけど、それが人間。

予想もつかないことが起こるけど、それも人生なので宜しくお願いします。

いかにも橋本さんらしい含みのある言い方でまとめられた。まあ、これからも色々あるんだろう。それでも今回のイベントみたいに現場の声が聞けることで、ヲタも少しは安心するんじゃないだろうか。

「なんでだよ!」ということもあるだろうが、音楽に対する姿勢だけはブレないアップフロント、ハロプロである限りは大丈夫なんじゃないか?

そう思えた素敵なイベントでした。

メモれなかったトコとか、こちらのブログや当日のTwitterでの呟きを参考にさせて貰いました。詳細にレポしてくれる人が多いのは有り難いです。

サンキューハロヲタ。サンキューな。


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