ジャンルを問わない個人的な2021年『このマンガがすごい! 』10選
今年も『このマンガがすごい! 2022』が発表された。
今年は『呪術廻戦』の藤本タツキ先生による衝撃の話題作『ルックバック』がオトコ編の1位。まあ、わかる。読んだ時の感情の揺さぶられ方はエグかった。モノ作りしている人間には刺さり過ぎて辛くなるくらい。
そういえばここ数年、『このマンガがすごい! 』におけるオトコ編とオンナ編というカテゴリ分けに関して、いろいろ議論が起きている。「いまどき性別で分ける意味とは?」という論争だけど、どこかで「分けることで、より多くの作品を紹介できる」というのを見て、少しだけ「なるほど」と思った。
でも、であれば「総合順位」を大々的に決めて、さらにカテゴリ分けして細分化したほうがもっと多くのジャンル作品を紹介できる気もする。「アクション」「恋愛」「エッセイ」「ホラー」「ギャグ」みたいに。
まあ、細分化しすぎると色々まとめるのも大変か。
ただね、オトコ編とオンナ編の境界がちょっとよく分からないんだよなぁと思ってる。連載している媒体で分けているんだとは思うけど、媒体もそれこそ細分化してるからねぇ。
ということで、個人的な2021年の『このマンガがすごい! 』ベスト10を紹介するにあたっては完全に境界を取っ払ってみようと思います。
10位 ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット
終末モノ、ゾンビモノは数あれど「すべてが猫になる」という発想は天才のそれ。この世がそうなったとしても何も怖くない。むしろ早く大量の猫がやってきて僕をもふもふに包んでくれないかと玄関のドアを開けて確かめたくなってしまう。
出オチのネタ作品なんだけど、夢があって読んでいると幸せ空間が広がっていく。マンガのなかの人たちは悲壮感でいっぱいなんだが。
9位 葬送のフリーレン
所謂RPG的な世界観のマンガ、ラノベは数あれど(10位と同じ書き出しだな)こんなに淡々とした作品はない。それも主人公がレベルカンストしている伝説の魔法使いで成長も何もないから当然かもしれない。人間とは別格の長寿を誇るエルフだから達観してしまっていて感情を揺さぶられることすらほとんどない。
でも面白い。
そこがすごい。最新6巻までは「一級魔法使い試験編」をやっている。こういう試験編も少年誌特有のルートで、それこそ手垢も付きまくっているし退屈になりがち。
だが、面白いのだ。
8位 ある設計士の忌録 疫神
今年はYouTubeとかでも怪談やオカルト動画をずっと観ていた。なかでも都市ボーイズの動画が好きなのだが、はやせやすひろさんが『マツコの知らない世界』に出演した時に衝撃的な話をしていた。
「テレビでは本当に怖い怪談が話せない」
なんでもコンプライアンスを変に意識しすぎて「人が死んだり、不幸になる」話はNGだと言われるらしい。なんだそりゃ。
だが、そんななかでもフジテレビの『ほんとにあった怖い話』だけは、しぶとくストロングスタイルを貫いてくれている。本作『ある設計士の忌録』は去年の『ほん怖』でも原作としてドラマ化された実話怪談マンガだ。
とにかくリアルで、でもどこかファンタジックでもあり、毎回ワクワクしながら連載も追っている。
感想ツイートが鯛夢先生にも届いて嬉しかった。マジでNetflixとかでドラマ化して欲しい。
7位 ウマ娘 シンデレラグレイ
今年の個人的な流行語大賞は『ウマ娘』になる。もう、ほんとアプリゲームが配信されて以来、久しぶりに競馬にハマってしまっている。なんならウマ娘きっかけで一口馬主にまでなってしまった。
ヤングジャンプで連載しているマンガ版『ウマ娘』は一時代を築いた超人気ウマ娘オグリキャップを主人公に展開する王道スポ根マンガだ。ゲームやアニメともちょっと違う泥臭い雰囲気がオグリキャプとライバルたちのバトルにピッタリで面白くてたまらない。
アニメ3期を待望されているが、別軸で『シンデレラグレイ』も是非アニメ化して欲しい。
6位 ミステリと言う勿れ
とうとうドラマ化ですね。しかしキャスティングに一抹の不安があります。この絶妙な会話劇をキチンと映像化できるか心配でならないです。
最新10巻は青砥編として青砥刑事と行動を共にして過去の冤罪を発端とした誘拐事件の完結が描かれる。青砥編、素晴らしかった。胸糞悪い誘拐事件のラストを犯人とのディベートで謎解きしていくという『ミステリと言う勿れ』らしい展開が圧巻だった。最後、すこし泣いちゃったくらい。
こういう良質な作品は本当に丁寧に映像化して欲しいと願っているのだが、さてドラマ版はどんな感じになるのやら。意外と会話劇のマンガとかを映像化する時って、原作を尊重しすぎるとセリフだらけで増長になってしまう危険もあるから、塩梅も難しいと思うのだ。
来年の楽しみ&不安の種。
5位 血の轍
森羅万象のホラー作品のなかで一番恐ろしいマンガなんじゃなかろうか。読んでいて精神が崩壊させられそうになる。実の母親による最狂にして最悪なネグレクト。こんなの生き地獄だ。自分が静一君だったら、どうなっただろう?と考えるのも厭。
そんな地獄も最低な結末を迎えて、ようやく終わった。
かと思ったら巻末に「2022年春頃、残酷に新章突入!!」と書かれていて、リアルに吐きそうになった。まだ続くの?地獄、終わってないの?
もう止めてくれよ、と思いながらも、読んじゃうんだろうなぁ。
4位 うちの息子はたぶんゲイ
世間ではBLもジャンルとして認知されだしており、僕もちょいちょいオススメを読むようになっているのだけど、おくら先生の描くリアルな思春期の男の子の悩みと、それを優しく見守るお母さんの関係が素敵なので全国民にオススメしたい。そしてどんなジャンルであれ「好き」を堂々と言える世の中であって欲しいと願ってやまなくなる。
最近の更新では58話がとても心に残ってる。偏見とか抜きにして読んでほしい作品の筆頭かもしれない。
3位 作りたい女と食べたい女
『このマンガがすごい! 2022』オンナ編2位にもなっている作品。『うちの息子はたぶんゲイ』と同じで世間の「こうあるべき」という固定概念に悩んでいたり、疑問に思っていたりする人にはビンビンに刺さる。
最初は単純に「料理が作りたい」野本さんと「たくさん食べたい」春日さんによるハートフルな食マンガかと思ったんだけど、話数が進むごとに闇が垣間見えてくる。
特別セクシャリティに関する話もなかったのだけど、ある時ピコン!と野本さんが春日さんに対する気持ちに気付いてしまう。そんな2巻に収録されている16話『私は、』がすごい。
という注釈から始まる16話。ここからストーリーに更なる深みが増していった。とはいえ、それとは別にこのマンガを読んでいると誰かのために作る料理を自分もしたい欲が湧いてくる。自分のための料理ってめんどくさいけど、誰かのために作るってとても好きだ。
2位 海が走るエンドロール
『このマンガがすごい! 2022』オンナ編1位でしたね。今年のナンバーワンだったのも頷ける素敵な作品。「始めるのに年齢なんて関係ない」とはよく言うが、世の中そんなに簡単な話ではない。だけど、きっかけさえあれば誰でも一歩を踏み出せる気にさせてくれる1話の素晴らしさにやられた人が多かったんだと思う。そんな1話のラストシーン「うみ子さんさぁ、映画作りたい側なんじゃないの?」からの足元に波がザアッっと押し寄せてくる描写は鳥肌ものだった。
『このマンガがすごい! 2022』でも1話の激烈エモーショナルな展開に票が集まったんじゃないかなぁと思う。これも固定概念をぶち壊していくマンガだね。そういうのが好きなんだろうね、僕は。
そして僕もそうしたいと常に思って生きてるんだろうね。
1位 進撃の巨人
世間のマンガ好きの間では『進撃の巨人』が今年のベストとか言ってるとダサい感じなのかな?
そんなはずない。
連載が始まって10年以上が経ち、とんでもない大風呂敷を広げまくっていった『進撃の巨人』が見事なフィナーレを迎えたというだけで、僕は称賛に価すると思うのだ。クライマックスの幾重にも張り巡らされた伏線の回収と「こうであって欲しい」と願う気持ちを裏切ったり叶えたりを繰り返すジェットコースターのような感情の揺さぶりは天才の所業以外の何物でもない。
連載時の最終回で「終わったんだ……」と興奮と安堵、そして少しの寂しさを味わった僕らに最終巻で描き足されたラスト数ページ。
諌山創という人は最後まで僕らに「世界は残酷だ…そして…とても美しい」と言わせたくて仕方ない悪魔のような神だった。
来年1月からアニメでも最終回に向かうファイナルシーズンが再開する。マンガでは語り切れなかった細かい部分の整合性も確実にアニメでは潰してくると思う。世界中の原作を追っていないアニメオタクは阿鼻叫喚の地獄をこれから味わうんだね。そんな反響を見るのも今から楽しみだ。
誰が何と言おうと『進撃の巨人』は大傑作である。
次点 ときめきのいけにえ
個人的には大好きなテーマとストーリーなんだが、1巻が売れなかったために3巻で打ち切りとなってしまった(最終巻のあとがきに書いてある)不遇の作品。
ホラー漫画『死人の声をきくがよい』で話題になった、うぐいす祥子先生による「ノストラダムスの大予言を信じ、災いを止めるために日夜生け贄を捧げて祈るカルト集団の家に生まれた少女のドタバタ恋愛ホラーコメディ」というよく分からないマンガ。そら万人受け排除しまくってて打ち切られちゃうわな、と思わずにはいられないが、僕は好きよ。
グッチャグチャなゴアシーンも満載で、めっちゃくちゃなストーリー展開なんだけど、その疾走感とテンションが最高だった。打ち切りだけど一応ちゃんと完結もしてるから、それだけは良かったと思う。
おバカなスプラッタが好きな人には超オススメ。それ以外の普通の人には絶対にオススメしない。
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