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《ふたりごと》2019.10.30(thu)待宵草

ドラマはすべて食べてしまうことにしている。

今夜読んだ話は、黄色いドレスを着た遊び女が主演だった。処女のような顔をしてブドウ酒を香らせ、夜ごと獣たちをおびき寄せる。本当は誰かを待っているらしい。探している、のかもしれないけれど、どの道同じだろう。
忍び寄る獣たちは待ち望んだ誰かではなかった。皆急かすばかりで、共に冬を越す人は現れない。
孤独のまま朝を迎えると、ドレスを脱いだ裸が赤いレースを纏って、遊び女然として眠ってしまった。
ほおに垂れるしずくがきらりと光る。

美しく野蛮な女が傷を隠して生きている。そんなお伽話にはもう飽き飽きしているので、私は黄色いドレスを天ぷらにすることにした。もったいないのでおひたしも作る。下味もつけていないのに、若い女の脚はコショウのような風味があってなかなか美味であった。しなやかな腕は生のままで食べられる。とウィキペディアに載っているのでサラダにしてしまった。
あまりにヘルシーなので、大したエネルギーにはならないかもしれない。けれどすべて食べ終えた頃には、この空腹を満たしてくれるだろうと期待している。
もし腹痛を起こしたって全身を煎じて飲んでしまえばいい。それも、ウィキペディアの受け売りでしかないけれど。

姿形すべて丸ごと飲み込んだら、このお話はもうお仕舞い。

ーー待宵草

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