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雨の日はカラフル

私は、雨の日が好きだ。カラフルだから。

マンションの3階のうちの窓から見る景色はとても綺麗だ。透明な雫がざあざあと音を立てている中で、あか、あお、ピンク、きいろ、みどり、むらさき、オレンジが過ぎ去っていく。それらは傘の色だ。

風邪で小学校をお休みする平日は、窓辺から外をずっと眺められるから、特に面白い。

朝早くは、オレンジの傘をさして出かける人が多い。段々とピンクが増えてきて次第に他の色も混じる。9時ごろはかなりカラフルだ。昼頃になると、やっと、むらさきやあかを見かけるようになる。でもこの二色は結構レアだ。

夕方になると、あおやみどり、きいろの傘が増えてくる。オレンジやピンクは滅多に見かけない。多分、夜遅くに帰ってくるんだろう。

ちなみに私の傘はむらさき色だ。むらさきで本当に良かった。ピンクやオレンジなんて絶対嫌だ。


この前、おばあちゃんが話してくれた。おばあちゃんが子供の頃、傘の色は、こんな風にカラフルじゃなかったらしい。傘の色はみんな自由に選ぶことができて、透明のビニール傘や、黒い傘が多かったと。だから色がなくて、雨の日はそれはそれは憂鬱だった。確かに、空の色も灰色なのに、灰色のビル街を、黒や色のない傘だけが通り過ぎる世界は、とても暗いだろう。

でも、不思議に思った。

ーーじゃあ、どうやって身分を見分けて居たの?傘の色や持ち物の色がみんな自由だったら、見分けられないよ。

おばあちゃんは、にっこり笑った。
ーーあのね、昔の日本は、みんな平等な身分だったこと、知っているでしょう?酷い話だわ、本当に。今の身分社会に生まれて、あなたは幸せ者ね。持ち物の色は自由だったのよ。

確かに、「むらさき」に生まれたことはとても幸せだ。国指定の「むらさき」の持ち物しか持てないけど、労働の義務や税金を支払う義務は、私には生涯ない。

何より、昔と違って身分によって持ち物の色の指定があるから、雨の日がカラフルになることが嬉しい。


#大学生 #小説 #雨 #傘



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